婚約したい相手を父様達に紹介することにしました。

「分かりました！ではフィオ様と呼ばせて頂きます。それと私の事もメローラと呼んでくださいませ。メロラインと呼ばれる時は大体怒りの鉄拳が母様から降りる時なので…吃驚してしまいまして…」

母様の話をすると大体の人は笑ってくれるのだが、少し困った顔をする程度。

ずっと下を向いているし、父様たちのところに連れて行っても、余りいい印象を持たれないだろう。

「フィオ様。よろしいでしょうか？これからフィオ様には私の家族と会っていただきます。そこで…1つお願いがあるのですが…」

「な、なんだろうか？」

フィオ様顔がこちらを向いた。確かに見た目は変わっているようだが…こちらを真っ直ぐと見つめる翡翠の目の色は何も変わっていないようだ。

「正直言って私の家族はとても変わっていると言いますか…まぁ、その変わっているのがこの国の王族なんですけれども…」

この国の王族は戦闘民族と言っても過言では無い。

特に父様は戦闘が好きで戦があれば誰よりも前に出て戦うようなお方だ。

それに似た1番目の兄、アニバル兄様と3番目の兄、スラッハミール兄様も同じである。

考えるよりも先に動くからか、周りからは脳筋などと呼ばれている。

逆に2番目の兄ボァルトルト兄様、4番目のロオーデリヒ兄様は母様に似ているのか外交などが得意だ。

だからと言って戦闘が弱い訳では無い。父様たちより劣るかも知れないが、その分頭の良さでカバーしているので、負け知らずだったりする。

言わずもがな、怒ると怖いのは単純な3人よりもボァルトルト兄様とロオーデリヒ兄様、そして母様なんだけど…

「まず、私達家族の前で下を向いて話すのは禁止だ。前を見て、話しかける相手の目を見ながら話すこと。見てくれを気にするような輩は居ないからな。寧ろそんなヤツがいたとしたら…なぁ、ウェイン？」

「そうだな…もしそんな事をしたら王族から嫌われるだろうな。見た目は怖いが、優しい物ばかりだから安心するといい…。」

ウェインが話し出すとフィル様はウェインの顔を見て話を聞いた。

「そ、そうか…わかった。これでも一国の王太子だ。できる限り前向いて話を聞こう。と、それで…ひとつ気になったのだが…君は一体…誰なんだい…？」

ウェインと私を交互に見てからウェインのことを指さすフィル様。騒動があってウェインのことを伝えるのをすっかり忘れていた。

ウェインを見ると、ウェインも同じことを思ったのか1度頷いてから自己紹介を始める。

「すまない。すっかり忘れていた。俺はウェインライト・ガーフィール。気軽にウェインと呼んで欲しい。メローラとは乳母兄妹と言えばいいのだろうか。メローラのことは手のかかる妹としか思っていないから安心してくれ。」

ウェインが手を差し出すと、フィル様はウェインの手を握り返した。

3人で話していると、父様たちがいるであろう控え室に辿り着いた。

「そういや、スロット邸にいることをすっかり忘れていたな。フィル様はここで暫し待っていてくれ。ウェイン。フィル様を頼んだぞ。」

「はいはい。行ってらっしゃーい。」

ウェインの言葉を聞くと私は意を決していて控え室の中に入った。

「父様、母様、兄様。婚約したい相手が出来ました！」

扉を開けて早々、父様たちに声を掛けると皆の顔がいっせいにこちらを向いた。

「メローラ。どういう事？その話詳しく教えなさい。」

母様が目をキラキラさせ、鼻息を荒くしながら顔を近づけてくる。

父様達は母様の少し後ろから話を聞いている。

「その前に…父様達が居ない間に、会場で一悶着ありまして…」

テッサリーニ国のオルラフィオ王太子殿下が来ていたこと。婚約者であるパルスティラ・ドレッドから婚約破棄をされた事。さらにガランハルド・スロットが出てきて、パルスティラと結婚すると宣言したり、オルラフィオ王太子殿下を足蹴にしていたことなどを伝えた。

「また、あの娘は…本当に懲りないわね…。」

「スラッハミール兄上が縁談を断ってから本当に見境無くなりましたよね。」

母様の言葉に続くようにロオーデリヒ兄様が話す。

2年前、スラッハミール兄様とパルスティラの縁談が持ち上がったことがあった。

パルスティラの父親、モルガンが無理矢理話を持ってきた事もあり、ミール兄様と父様がキレてしまった。あの時のパルスティラの顔は恐怖に震えていたのを今でも覚えている。

「ふん。あれは勝手にあっちが話を進めたのだろうが。俺は元から縁談をしたつもりなければあんな性格ブス女と結婚する気などなかった。」

話が逸れてしまっているが、兄様にしろ父様達にしろドレッド家に対して不満を抱いているようだ。

「話が逸れてしまっていますが…そこで皆さんに報告がございます。私メロライン・ドラウゴンは、テッサリーニ国王太子殿下と婚約を結ぶことにいたしました！！」

「「「「え…？ええええぇぇぇ！！」」」」

まさかの相手に吃驚する皆。母様とロオー兄様だけは何となくわかっていたのか、「そんなことだろうと思ったよ…」と言っていた。

「お待たせしているので呼んで参りますので少々お待ちください。」

私は皆が大きな声を上げていたが気にせず外にいる2人を呼びに行った。