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女神様!? オルラフィオ王太子殿下視点。

last update 最終更新日: 2025-07-20 17:00:00

「はぁ…」

「大丈夫か?オルフィ」

「お前だけだな。この姿になっても普通に接してくれるのは…ジーノ」

自分がこの1年で見るに堪えない姿になってしまっていたのはよく分かっていた。

父上や義母上だけでなく、侍女や従者、貴族達からも「白豚」と罵られ、煙たがられているの知っている。このままでは結婚すらできない…とまで言われ、廃太子となるのも時間の問題だろう。

最近では父上も弟ピリットンに仕事を任せるようにしていた。

その中で唯一私の味方でいてくれたのが、

ジーノ・スポレトーレ。

スポレトーレ公爵家の嫡男で、私の従兄弟だ。

スポレトーレ公爵家は母上の実家でもあり、小さい頃から何かと世話になっている。

今回もそうだ。

急に太り、脂ぎった身体。体からは据えたような匂い。顔は吹き出物だらけでやけどのような爛れまである。

そんな私を快く迎え入れてくれた。

義母上やピリットンから「臭いから王城には居ないで頂戴。」とまで言われた私をだ。

今まで婚約者にと近づいてきていた女性達もこの姿になってからは誰1人として近づいても来ない。

やはり中身では無く見た目なのだろう。

体を洗ってケアをしてみたり、痩せるよう体を動かし食事を変えてみたりもしたが全然変わらない。

全てにおいて自信がなくなり、部屋からも出ず引きこもっていると、父上から一通の手紙が届いた。

父上から連絡が来るのは半年ぶりくらいだろうか。

少しは私のことを心配でもしているのかも読んでみると、そこには婚約者ができたこと、2週間後にドラウゴン国で行われる夜会に参加するように書かれていた。

ドラウゴン国。

軍事国家で近隣諸国の中で最も大きい国だ。

特に、今の国王になってから戦は負け無しだと聞いている。

普通であれば他国の王太子との婚約をホイホイ決めるようなことはしないだろう。

それに…

「会ったことも無いのに、よく私を婚約者にしようとしたな…」

今の私を見たものであれば誰でも逃げ出すだろうに…。

どうせ父上の事だ。何かしら策をとっとんだろう。

父上からの手紙を力強く握りしめていると、急に扉が開いて真っ黒な部屋の中に外の灯りが入り込んだ。

「ボニファティウス叔父上から手紙が届いたと聞いたんだが…その様子を見るとあまりいい話ではなかったようだな…。」

「ジーノか…あぁ、父上が2週間後にドラゴウン国で行われる夜会に参加するようにと…」

握りつぶした手紙と一緒に届いたパルサティラの絵姿を渡すと静かに手紙に目を通した。

「…ドラウゴン国の娘と婚約か。パルサティラ・ドレッドと書いてあるが…、見目もそれなりに美しい女性だな…見かけたら忘れなさそうだが、会ったことがあるのか?」

ドレッド公爵家のことは知っているが、パルサティラという女性には会ったことがない。確か昨年行われた建国祭にドラウゴン国からの王族が来ていたが、その時に挨拶したのは第4王子のロオーデリヒ殿のみだった。

ジーノにそのことを伝えると、「そうか…」と言って何か考えだした。

「お前の今の状態を知らずに婚約するとなると…何か裏があると思っていいだろうな。ピリットンと王妃が何か関わっていそうだ。取りあえず時間もないし、オルフィはドラウゴン国の夜会に参加してこい。国王の命令だし逆らうことはできないだろうからな…ついていってやれなくてすまないが…」

ジーノも公爵家の後継者としての仕事があることは重々承知している。私は首を横に振った。

「いや、その気持ちだけでありがたいさ。ドラウゴン国まで隣国と言っても1週間は見たほうがいいだろう。準備ができ次第行ってくる。」

それから私は準備を終えるとドラウゴン国へと旅立った。

意外にドラウゴン国までの旅は順調に進んだ。

恐らく、私の今の見た目だけでなく、元の姿を見たことのない人が多いからだろう。特に国民たちは王族に会う機会などなかなかない。

それに同一人物だと言ったところで嘘だと思われるだろう。

ジーンには悪いがジーノと来なかったのは正解だったかもしれない。

そして、夜会当日…

意を決して、会場へと向かう。

他国でも貴族というのはほとんど変わらないのか、私を見ると侮蔑の眼差しを向けるものばかりだった。

そして絵姿と同じ見目をした人を見かけた私はその人に近づき、挨拶をした。

「急に声をかけてしまい申し訳ない。見たところパルサティラ・ドレッド嬢とお見受けする。私はテッサリーニ国国王陛下の息子であるオルラフィオ・テッサリーニと申します。この度は婚約を受け入れてくださりありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。」

「え…え…。貴方が私の婚約者!?絶対嘘ですわ!ありえません。だって全然違うじゃない。私を騙したんですの?」

全然違うというのは一体どういうことだろうか。それに私も父上が勝手に決めただけで騙したつもりなんてこれっぽっちもないのだが。

「えっと話が見えないのですが…全然違うというのはどういうことでしょうか?」

「え、え、え絵姿よ!絵姿はもっとかっこよかったわ!」

絵姿…この容姿になってからは一度も絵姿なんて書いてもらっていない。あるとしたら…1年前の今とは違う姿だ。

パルサティラ嬢の慌てぶりを見るに、どうしてこの婚約がスムーズにいったのか何となく理由が分かった気がした。

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