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25話

Author: さいだー
last update Huling Na-update: 2025-07-05 05:33:27

 色々と勘ぐられないように滝沢が教室に入るのを見届け、少し時間が経ってから教室に入ると、何やら教室内はざわついていた。

 滝沢が登校してきた事についてかと思い内心少しヒヤリとしたのだけれど、クラスメイトの話に耳を傾けてみるとどうも様子が違った。

 ストリーがどうのとか。あれヤバいでしょとか。ストリーの話一色だったのだ。

 そんなにこのクラスでストリーが流行っているとは思っていなかったが、吉岡にとっては朗報なのではないだろうか。こんなに推しが広がっていたのだから。

 俺が作ったグループの存在意義は薄れてしまうかもしれないが。

 喜び勤しんでいるだろうと、自らの席へ向かって前の席を見ると、仏頂面の吉岡がいた。

「良かったな。ストリーが有名になって」

「ああ?全然よくねえよ」

 かなり機嫌が悪いようで、こちらを見ようともしない。

 俺の方が先にストーリーを知っていたのに、みたいな感情からくる不機嫌だろうか?そういう感情を持つ人も一定数はいるとあの恋愛心理学書にも書いてあった。

 たしか、先取権バイアスだっけか?

 知らない人達がSNS上でそんなやり取りをしているのも目にした事があった、あれは不毛な戦いだ。きっと吉岡の中でもそれが起こっていると仮定して、言葉を続けた。

「でもお前、古参って奴だろ?だから気にすんなよ。どんなに新参者が入ってきたって、昔から知っているお前の方が偉いんだ。だから気にすんなよ」

 精一杯気づかった言葉をかけたつもりだったのに、吉岡はこちらに向き直ると、俺の胸ぐらを掴んだ。

 そういう奴だと思っていなかったから、とても驚いて、反応がコンマ数秒遅れた。

「どうしたんだよ。そんなに熱くなって」

「お前、本気でそんな事言っているのか?お前だって『ストリーのファンだ』そう言っていたよな?それなのに、この状況を看過できるのか?」

 グループを作った便宜上、ストリーのファンと言う事になっていたな。そういや。

 今となっては、頑張りやである、彼女のライトなファンである事は間違いないが。

 それにしても、吉岡の怒りが、俺の感じた先取権バイアスでは説明がつかないように感じて、一つ質問をした。

「こんな状況ってどういう意味だよ?」

「……お前、グループトーク見てないのか?」

 昨夜眠りに着く直前から登校してくる間にかけては、滝沢の為に色々考えていたからグループトークは
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