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第15話

Author: ジュウイチ
尚季は諦めなかった。しずくが振り向いてくれるその瞬間を待ち、彼女の周囲を離れずに彷徨うようになった。

しずくがパン屋へ行けば、彼は通りの角に立ち、画材店へ向かえば、向かいのベンチに腰を下ろしていた。

近づきもせず、声をかけることもない。ただ、充血した目で、黙したまま見つめ続ける。

しずくはその視線を無視しようと努めたが、影のようにつきまとう気配に、背筋を冷たいものが走った。

「あのハンサムで憂鬱そうな東洋の男性、元旦那さんでしょう?」

パン屋の女主人メアリーは、顎で店の外を示した。

しずくが視線を追うと、尚季がプラタナスの木の下に立っていた。

メアリーは声を潜める。

「あの人、毎日あなたの好きなクロワッサンを買いに来るの。でも一度も食べないのよ。

あら、なんてこと。あなたを見る目といったら、まるで全世界に見捨てられた大きな犬みたいだわ」

しずくの胸が、何か細い針で軽く、しかし確かに突かれたように痛んだ。

しずくはパンを受け取り、薄く微笑む。

「メアリーさん、もう終わったことですから」

「そう?」

メアリーは瞬きをし、それ以上は踏み込まなかった。

しずくは温かな紙袋を握りしめた。胸にこみ上げた一抹の切なさは、すぐに奥へ押し戻される。

ワニも涙を流す。でもそれは、決して無実の証にはならない。彼女はそう自分に言い聞かせた。

……

週末のアーティストの集まりは、ルカの家の裏庭、葡萄棚の下で開かれた。

ルカはグラスを掲げ、皆の前で笑いながらしずくを誘う。

「ステラ、次の作品シリーズで人物写真を撮りたいんだ。俺のモデルになってくれないか」

しずくが頷こうとした、その瞬間だった。

何の前触れもなく、冷え切った声が入り口から差し込んだ。

「駄目だ」

賑わっていた空気が、一瞬で凍りつく。

全員が振り返ると、尚季が立っていた。髪はやや乱れ、その視線はしずくに縫い止められている。

ルカは眉をひそめ、英語で問い返した。

「失礼ですが、どちら様ですか?なぜステラのことを勝手に決めるんですか?」

尚季は一歩、また一歩と歩み寄り、言葉を区切るように、低く告げた。

「俺は……彼女の夫だ」

しずくは思わず、乾いた笑いをこぼした。

グラスを置いて立ち上がり、大きくはないが、そこにいる全員に届く声で言う。

「元夫よ。尚季、私たちはもう離婚手
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