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第2話

Auteur: 桐の木漏れ日
美穂は景佑に背を向け、手の中のお守りをじっと見つめたまま、一言も発しない。

景佑は息を詰めた。

彼はためらいがちに手を伸ばして美穂を抱き寄せた。美穂が抵抗しないのを見てようやく安堵のため息をつくと、痛ましげにその顔の涙を拭った。

「美穂ちゃん、君は……」

「あなた、私、また愛ちゃんの夢を見たの」

景佑が言い終わるのを待たず、美穂は言葉を遮り、向き直って彼を見つめた。

美穂は結局のところ、十年も景佑を深く愛してきたのだ。

だからこそ、彼女は彼に一度だけ、正直に話す機会を与えようと思った。

しかし、景佑はわずかに動きを止めただけで、すぐに彼女の髪にキスをし、嘘が自然と口をついて出た。

「心配いらない。愛ちゃんのために常夜灯を灯してあげただろう?

今頃は可愛い天使になって、またママのお腹に宿る日を待っているさ」

だが、その常夜灯は、美穂の不憫な娘のために灯されたものではなかった。

彼女の愛ちゃんは、もしかしたら今もどこかの斎場の冷凍室に放置され、安らかに眠ることさえできずにいるのかもしれないのだ。

美穂は黙って涙を流し、手の中のお守りをさらに強く握りしめた。

もし愛ちゃんが夢に出てきてくれなかったら、彼女は永遠に気づかなかったかもしれない。

深く愛したはずの枕元の夫が、この片足の自分のことを顧みもせず、あろうことか娘を殺した犯人の骨壷の前で、三年間も敬虔に祈るよう自分を騙していたとは。

そして、彼が自分たちの娘を、こともあろうに殺人犯と一緒に埋葬しようとしていたことなど、知る由もなかっただろう。

もし気づかなければ、その後何年もの間、美穂は言われるままに祈り、線香を供え続けていただろう。

それが、娘への母の愛情ではなく、娘を殺した犯人に向けられたものだとは露知らずに。

世間では、理想化された「初恋の人」の存在は、時に現在の幸せをも脅かすほどの力を持つと言う。特に亡くなった場合は、なおさらだと。

美穂は以前は全くそう思わなかった。

今日までは。

「泣かないでくれ、美穂ちゃん。君が体を壊したら、天国の愛ちゃんも心を痛めるだろう。

雨がすっかり止んだら、常夜灯に油を足しに行こう、な?

愛ちゃんはきっと、パパとママがどれだけ愛してくれているか、分かってくれるはずだ」

景佑の声が再び響き、美穂の心臓は激しく締め付けられ、涙が止まらなかった。

雷鳴が再び轟き、稲妻が走った。

涙でぼやける視界の中、長年深く愛してきたはずのその顔が、ふと、まるで鬼のような形相に歪み、牙をむき爪を立てて自分と娘の命を奪おうとしているように見えた。

美穂は全身を震わせ、景佑を突き飛ばすと、布団に潜り込み、耳を塞いで泣き崩れた。

景佑は、胸が張り裂けるような思いの一方で、自分がタイミングよく戻ってきたことを幸運だと感じていた。

もし、美穂が彼らの会話を耳にしていたら……彼女はどれほど取り乱しただろうか。

そこまで考えると、景佑は唇を引き結び、まだもがいている美穂を抱き寄せ、優しく声をかけてなだめた。

かつて美穂が養護施設に送られたこと、そして遥のために用意したあの常夜灯のことも、全て彼が美穂に対して負い目を感じていることだった。

しかし、彼は決して彼女を失うわけにはいかなかった。

遥の埋葬が済めば、必ず美穂に償いをすると、残りの人生をかけてそう誓った。

景佑は心に誓い、腕の中の人が次第に落ち着くまで待ってから、彼女の額にキスをし、身を起こして部屋を出た。

しかし彼は気づかなかった。彼が去った後、ベッドに横たわる女が静かに目を開けたことを。

……

屋敷には常夜灯を安置した一室があり、そこには導師の指示通り、その導師が用意した様々な呪符が掛けられていた。

景佑はもともと運命など信じない人間だった。

だが、あのお彼岸の日、彼は遥の無残な死に様と、主役が入れ替わることになったあの結婚式を思い返すうち、やはり罪悪感に苛まれ、彼女のために常夜灯を一つ用意したのだった。

導師は言った。被害者の最も近しい肉親が、三年間敬虔に跪いて祈りを捧げてこそ、遥の浮かばれぬ魂を鎮めることができる、と。

彼に他に方法はなく、美穂に対する嘘は、その時から始まった。

暗闇の中、常夜灯の灯影がかすかに揺らめいた。

彼は油を注ぎ足し、常夜灯の後ろにある骨壷を見つめ、深く息を吸い込むと、常夜灯の前に跪き、低い声で呟いた。

「すまない」

それは、彼の娘への、そして美穂への謝罪のつもりだった。

彼は生まれつき足が悪く、幼い頃は両親に好かれず、大人になってからは、結婚式の当日に初恋の人に捨てられた。

そんな彼に、美穂が進み出て、真剣な眼差しで「あなたが好きです。私と、結婚していただけませんか」と言ったのだ。

その瞬間、彼は過去の全てを自分勝手に清算し、一生美穂に尽くそうと心に誓った。

しかしその後……

彼は目を閉じ、深く息を吸い込み、心の中で静かに誓うしかなかった。

これが最後だ。

遥と自分は、結局のところ互いの人生における、最も美しい初恋の相手だった。だから最後に、遥のためにこれだけはしてやりたい。

この後、彼は決して美穂を裏切らない。

そうしなければ、愛する人を永遠に失い、孤独な生涯を送ることになるに違いない。

雷雨はずっと止まなかった。

その頃、寝室では。

スマホの監視カメラの映像を見ながら、美穂は声もなく涙を流した。

景佑はなんと骨壷に向かって謝罪している。

まさか、娘を殺した犯人のために三年間も跪かせただけでは、景佑の「初恋の人」への罪悪感を償うには、まだ足りないというの?

どうやら、彼はやはり遥を忘れられないようだ。

そして、彼女の長年の想いも、無惨に殺された娘も、あの人の目には、遥の万分の一の価値もないというわけね。

それならば……

彼の思い通りにはさせない!

スマホの画面が光り、聡也から例の斎場の住所が送られてきた。

美穂は涙を浮かべながら、声もなく笑った。

彼女は肌身離さず着けているお守りにキスをし、心の中で呟いた。

「怖がらないで、愛ちゃん。

今度こそ、ママが必ずあなたを助け出してあげる。そして、必ずあなたの仇を討つからね……」

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