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第7話

Auteur: 桐の木漏れ日
聡也の手引きで、美穂は音もなく屋敷を離れた。

火の勢いはますます強まり、沙耶も濃い煙に咳き込みながら目を覚ました。

半開きの主寝室のドアが目に入り、沙耶の瞳に昏い光が宿る。そして、外から主寝室のドアに鍵をかけた。

階下で荒い息をつきながら立つ彼女は、興奮のあまり、思わず声を上げて笑い出しそうになるのをこらえた。

やはり、天も自分に味方したのだ。

あの時、美穂を車で轢き殺せなかったこと、みすみす3年も長生きさせてしまったこと、そして、あの足のせいで景佑の同情を買い、彼のそばにいさせてしまったことは、沙耶にとって最大の屈辱であり失敗だった。

美穂は3年間も自分の居場所を奪い続けた。今こそ、その報いを受ける時が来たのだ!

燃え盛る炎の光が、沙耶の表情をますます興奮に歪ませていく。屋敷からさほど離れていない場所に、見慣れない車が一台停まっていることには全く気づかなかった。

景佑もちょうどその時、車で引き返してきた。

朝、はっと目を覚ましてから、どうにも心が落ち着かなかった。死亡診断書を受け取った後も、どこか上の空で家を出た。

斎場に着く寸前、遥の骨壷を持ってくるのを忘れたことに気づき、慌てて家に戻ってきたのだ。

しかし、車を停めた途端、屋敷からもうもうと黒煙が立ち上っているのが見えた。

「なぜ火事が?」

景佑は愕然とし、足早に庭へ駆け込んだ。だが、美穂の姿は見当たらない。

「美穂ちゃんは?」

あの妙に生々しい夢が再び脳裏をよぎり、景佑は胸騒ぎを覚えた。すぐに、その場に茫然と立ち尽くす沙耶に視線を向けた。

「妻はどこだ?」

「あ、義兄さん。奥様のことですか」

沙耶ははっと我に返り、内心で歓喜の声を上げた。

しかし表面上は、まだ動揺が収まらないといった表情で言った。

「奥様は朝早く病院へ向かわれましたわ。本当に幸いでした。

でなければ、こんなに火の勢いが強くて……」

この火事なら、美穂はあの不自由な足では、骨も残さず焼け死ぬに違いない。

そうなれば、本来自分のものだったすべてを取り戻せるのだ。

そう思うと、沙耶の表情は一層凄みを帯びた。

景佑はそれに全く気づかず、ただ少し意外に思っただけだった。

確かに今日は治療の日だ。

しかし……いつもなら、自分が昼に会社から戻ってから、一緒に病院へ行くはずだった。

今日は、どうして一人で行ったのだろう?

「義兄さん、姉さんがまだ火の中に……」

沙耶の声が、景佑を思考の淵から引き戻した。

炎が屋敷全体を飲み込もうとしているのを見て、彼は一瞬ためらったが、すぐに意を決し、火の中へ飛び込んだ。

遥はあの時、無残な死を遂げた。彼女の遺骨まで失うわけにはいかない。

これが最後だ。

……

その頃、屋敷からそう遠くない場所に停められた車の中。

美穂は助手席に座り、車の窓越しに遠くで起こっている一部始終を見ていた。

あまりに遠すぎて、二人の会話までは聞こえない。ただ、景佑がためらうことなく火の中に飛び込んでいく姿だけが見えた。

一瞬、彼女は言いようのない不安に襲われ、思わず服の裾を強く握りしめた。

景佑は二階に上がって自分を探すだろうか?

もし上がれば、自分がもういないことに気づくはずだ。

自分が去ったと知ったら、彼はどうするだろう?

世界中を探し回るのか、それとも……

自分が火事で死んだものとして、他の誰かと結婚するのだろうか?

美穂の思考は千々に乱れていた。

聡也はそのすべてを目にしながらも、何も言わなかった。ただ静かに、彼女が決断を下すのを待っていた。

聡也はすべての真相を知っており、美穂の人生における苦難が、ことごとく景佑に起因することも知っていた。

彼の立場からすれば、美穂を再び苦しみの中へ戻したくはなかった。

しかし、美穂は結局のところ景佑と十年も共に暮らしてきたのだ。

世間知らずの子供から、恋を知り始めた少女へ、そして大きな不幸を経験するその時まで、ずっと景佑が彼女のそばにいた。

たとえ彼女が今この場で心変わりしたとしても、自分も彼女を責めることはないだろう。

彼はこれまでと同じように、彼女のそばに居続けるつもりだった。

一方、景佑は炎の中に飛び込むと、まっすぐ例の小部屋へ走り、骨壷を抱き上げた。

しかし、立ち去ろうとした時、ふと部屋の隅に見慣れたものがあるのに気づいた――

美穂の義足だった。

「なぜここに?」

景佑の心に疑問が湧いた。しかし沙耶の言葉を思い出し、それ以上深く考えることなく、すぐに骨壷を抱えて火の中から飛び出した。

沙耶と手短に言葉を交わすと、彼は骨壷を抱えて車に乗り込み、急いで走り去った。

美穂は景佑が去っていく姿をただ見つめていた。自嘲の笑みが浮かんだが、涙が意思に反して頬を伝い落ちた。

炎の中に飛び込んでから出てくるまで、景佑は2分もかからなかった。

彼らの寝室は二階で、骨壷を納めた小部屋は一階。あの短い時間では、足の不自由な景佑が二階の寝室まで自分の様子を見に来る時間は到底なかったはずだ。

つまり……景佑は家に入ってから、まっすぐ骨壷のある小部屋へ向かい、寝室に自分を探しに来るようなことは全くしなかったのだ。

そこまで考えると、彼女はついに深く息を吸い込み、決意を固めた。

「叔父様、行きましょう」

彼への一途な想いは、ついにこの火事で灰燼に帰し、完全に消え去った。

これから先、二度と彼に会うことはないだろう。

聡也は頷き、車を発進させた。

交差点で赤信号を待っていると、彼の車は偶然にも景佑の車の隣に停車した。

不意に隣に並んだ車、その助手席に見慣れた横顔を認め、景佑は息をのんだ。

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