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第274話

Author: 魚住 澄音
「わかりました、覚えておきます」ことはは何度も頷いた。

すると、隼人が話題を変えた。「でも、1000万円うちの半分は俺のものだから、昼食はお前がおごってくれ」

ことははおごるべきだと思った。「もちろんいいですよ。ゆきも誘って、前回食べた華蓮楼に行きましょうか?」

「分かった、よろしく」

-

お昼時、ことはたちはゆきを迎えに行き、一緒に華蓮楼へ向かった。

華蓮楼の現在のオーナーが慎吾だと知り、ゆきは前回のことを思い出して言った。「前回のことを思い出したけど、まだちゃんと芹沢社長にお礼を言ってなかったね。後で芹沢社長のところで会員カードを作ろうと思うんだけど、それが私のお礼の気持ちってことで」

「篠原さんは会員カード持ってるから、そんな無駄遣いはしなくていい」助手席に座っている隼人が言った。

ことはは目をパチパチさせ、確かに前に芹沢社長から会員カードを押し付けられたことを思い出した。

ゆきは首を振って、「ことははことは、私は私です」

隼人は聞いた。「ゆきはグルメなのか?」

ゆきは自信満々に答えた。「神谷社長、よくぞ聞いてくれました。他のことはともかく、食べることに関しては絶対の自信があります」

隼人はもちろん知っていた。何しろことはの胃袋はゆきが支えているから。「ゆきが慎吾のために料理を評価することは、慎吾のお店で会員カードにチャージするよりもよほど意味があるよ」

「本当ですか?」ゆきは少し疑わしく思い、隼人がお金を使わせまいとしてわざとそう言っているのではないかと考えた。

すると、運転している浩司がルームミラーを見上げながら言った。「森田さん、本当ですよ。芹沢社長は誰かに料理を評価してもらうのが何よりも好きなんです。評価がうまければ、ご褒美までくれます。確か一番良かったご褒美はメルセデス・ベンツだった気がします」

ことはとゆきは、心の中で「うわっ」と同時に叫んだ。お金持ちの気前の良さはやはり並じゃない。

ただ料理を評価するだけなのに……

ゆきは真剣な表情で言った。「私は超がつくほど料理の評価が上手いので、きっと芹沢社長が感動するほど見事にやってみせます」

そうこうしているうちに、華蓮楼に到着した。

隼人が慎吾に「料理の評価が上手なプロを連れてきたよ」とメッセージを送ると、慎吾はすぐに別の食事会から抜け出して華蓮楼にやってきた。さら
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