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17.金木犀の咲く庭

last update Data de publicação: 2026-03-01 17:00:00

 涼にとって激動の半日。

 まだ一日も過ごしていない間にこんな事に関わることになるとは思っていなかった。

 だが、永遠かもしれないこの死後の世界で、時計盤がどうしたら動くのかも分からないまま脱獄の話に興味を持たないのも不自然だとも考える。

「失敗したら……酷い目に合うのかな…… ? 」

 デメリットをリストアップするのは大事な事だ。

 不安そうにする涼に、京は頷く。

「罰則はあるかもな。けど、ここで悪いことをしても人間の監獄とは違う事が一つだけある」

「それって……何  ? 」

「体罰だよ。人形の体は『城』から与えられている。で、もし体罰を与える役割のやつがいるとすれば翡翠の仕事だろ ? でも翡翠が『城』の所有物である俺たちを壊す道理がない」

「それじゃあ、翡翠より『城』の方が上ってこと ? 」

「そうなるな」

「それって……この『城』が神のよう……」

 言いかけた涼に京が目を釣り上げる。

「はっ ! 神なんかいる訳ねぇだろ。そんなもんいたら、そもそも全員ここに来てねぇよ」

 極端な思想だが、涼も同じ事を思った。自分が死に至った経緯を考えると、神に縋ったところで何も状況は好転しなかった人生だった。

「そろそろ立てるか ? 」

「うん。大丈夫。

 花はどれを摘んで行くの ? 」

「オリーブの裏に金木犀があるから。寝る頃になると、下水が臭って仕方ねぇんだ」

「意外。主婦の知恵みたいな事するね」

「うるせぇ」

 二人は小池の飛び石を越える。オリーブの木まで来ると涼は手に届く先に実ったオリーブを手に乗せた。

「お腹が満たされないのに、どうして食事が出来るようにしてあるの ? 」

「……。飯が要らねぇって事は、消化器が要らねぇって事だろ ? 」

「うん。人形なら必要ないよね ? 」

「お前ここに来てまだ一日目だから言えんだよ。食事するってのは味覚の快楽だ。いくら監獄とはいえ、なんの感覚も快楽もなかったら、苦痛も感じない」

「苦痛を与えるための快楽 ? 」

「真意は不明。けど俺はそう思うね。食の楽しみのためって説を言う奴もいるけど。

 お前、便所行った ? 」

「…… ? そういえば、まだ……」

「食べてねぇからな。見てみろよ」

 そう言い、京が下腹部を指差す。一体何を言い出すのかと涼は呆れるような素振りをしかけるも、突如浮かんだ疑問に慌てて制服のスラックスの上から何度もぺたぺたと確認する。

「え !? ある !! 人形なのに !? 」

 男女で体の造りが違う。

 ふと思い出す。フェンランや他の女達は確かに胸の膨らみがあった。

「これ……つまり……機能するのか ? 」

「そう。言っておくけど部屋ん中でエロ本読むなよ。気色悪ぃから」

「しないよ ! 」

「どうしてもってんなら、食堂の下のシャワー室が個室だから……」

「何もしないってば ! 

 いや、違う。そうじゃなくて。ってことは、排泄もあるって事だよね ? 」

「臭うって言ったろ ? 」

「内臓どうなってんの ? 」

「さぁ ? けど前にファイトで胴体がパックリ割れた奴がいてさぁ。ちゃんとあったよ。モツ」

 涼の顔から血の気が引く。

 ほぼ人間と変わらないのではないかと。

「なんの意味があるんだろう。食事の為だけなら分かるけど……。

 そう言えば、体の造りが違うのに、女性と同じ監獄って言うのも変じゃない ? 」

「それな。だからフェンランは過剰に女達を防衛してる節はあるよな」

「当然だよ。性別の違いが機能してる体なら、何があってもおかしくないもん」

「……。お前さ。過去の事、誰かに話したか ? 」

「え ? 」

「フェンランが女達を守っている以上、女ってのはここじゃ高嶺の花の高級人形。だから俺らみたいな子供の姿してるやつは格好の獲物になる訳。今日、ペコラがお前を欲しがったのもそれが理由だ。

 絶対に経験があるなんて言うなよ ? 年上のババアとか……なんか微妙なラインの物好きって周囲には言っておけ」

「うぐぐ……屈辱……」

「身を守れって事」

 京は花瓶を受け取ると、涼に金木犀を切るように促す。

「ナイフで花がある枝だけ切ってくれね ? 」

「このくらい ? 」

「そうそう。二、三本欲しい」

 見上げると、涼が手にした一本目は一輪挿しから出るかどうか程の小さな新芽の部分だった。

「これじゃ足りねぇな。皆んなここから持ってくから無くなっちまうんだよな。同居人なんて久々だから油断したぜ。早いもん勝ちなんだ」

「木の成長スピードって人間界と同じ ? 」

「んにゃ。それより少し早いかな。花はどれも枯れないし、あの紅葉も赤いまま。松ぼっくりもずっとついてら」

「あの世感があるね。本当に不思議な場所……。

 あ、あっちにもあるじゃん ! 金木犀の木 ! 」

 涼が無邪気に先を行く。

 まさかの行動に京の反応が遅れた。

「おい ! 涼、戻れ !! そっちは…… !! 」

「え ? なんで ? 」

 慌てふためく京を振り向くと、京は険しい面持ちで、涼の──その先を見つめていた。

 京の焦りと、涼自身の地面の影がおかしい事に気付く。

 そしてこの煙の香り。

「あ……あの……」

 目の前に、怒りの形相をしたフェンランが涼を見下ろしていた。その感情色は赤を通り越して、まさに紅蓮の焰の様に辺り一面に拡がっていた。

「アンタ、ここで何してるんだい ? 」

「ご、ごめんなさい……き、金木犀の……」

 ここで慌てて京が割り込んできた。

「すまねぇフェンラン。中庭に連れ出してやりたくて金木犀を採りに来たんだ。枝が全部やられちまってて深追いしちまった。

 俺の責任で、こいつはまだ何も知らねぇんだ」

 必死に言い繕う京を見て、フェンランの怒りがスっと消える。

 やはり──涼はこのフェンランの気分の波に驚きを隠せない。怒りの気持ちがは今まで見たことが無いほど強い。ヒステリーや我を忘れて……などというレベルの怒りではないのだ。それを、一瞬で感情を抑え込む。これがそもそも常人には無理なのだ。

 元々は激昂しやすいのだろう。感情は嘘をつけない。怒りが抑え込めるのは、自分のコントロールができている証拠だ。並み大抵、出来る技ではない。

「ごめんなさい、フェンラン。本当に何も知らなくて。

 ここはフェンランの庭なの ? 」

「馬鹿、聞くなって ! 

 すまん、すぐ連れて帰るわ」

「いや、いい」

 慌てる京をフェンランが制する。

「悪意が無いのは理解した。好奇心は猫を殺すと言うからな。その目で見ていくといい」

「え ? いや、俺……べ、別に何か詮索したいわけじゃ……」

 状況についていけない涼は完全に震えてしまっている。その様子を見て、フェンランは一人の女囚を手招きした。

「サラ、涼に見学させてやれ」

 中年で小太りの女だ。小綺麗ではあるが、美人と言うよりは優しそうな母親という印象だ。

 漂う『喜』の感情。案外、すんなり受け入れられたと胸を撫で下ろす。

「はーい。

 あ、涼君だっけ ? 来なよ。大丈夫よ。ただの畑だから」

「は、畑 !? 」

 サラが涼の手を引き木製の柵の中へ入って行く。

 フェンランは煙管に新しい葉を詰めながら、京を見下ろし真っ赤な唇を歪ませる。

「前回の同居人の事は何も言わないけれど。どういう風の吹き回しだい、京。

 外の空気を吸わせてやりたいなんて、そんなココロがあんたにあるとはね」

「喧嘩売らないでよね。俺もすげぇ調子狂ってんだよ。

 それにどうも翡翠さんが気に入っちゃったらしくてさ」

「翡翠の旦那がかい ? 冗談はよしてくれ。囚人に興味なんか持たないようなお坊ちゃんだろうに」

「それがさ、涼って特異な能力を持ってんだ」

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  • 強制狂葬 狂眼ドール   2.棲み分け

     食事は朝晩二回。 体感時間で皆、なんとなく食堂へ向かうだけだ。 涼と京は二人向かい合って座る。 食べるものは選べない。 食堂にいるシェフ姿の人形が勝手に囚人のトレイに皿を置く。乱雑で、無言。目も合わない。 実に作業的な流れだ。 しかし、その皿に乗った食事に涼は言葉を失っていた。「食べねぇの ? 」 京が固まったままの涼を不思議そうに見た。「いや……監獄的なイメージがあったから……もっと自由度の少ない飯が出てく

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