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18.女囚の生き方

Penulis: 神木セイユ
last update Tanggal publikasi: 2026-03-02 17:00:00

「この葉っぱは……野菜じゃないよね ? 何 ? 」

「これはね、『冥花』っていうの」

「めいか ? 」

「『城』では煙草や強依存性がある薬物は禁止なの。国の法律でNGだけど、他の国では合法の物ってあるでしょ ? だから最初から『城』では一律禁止。

 でも、そんな習慣で嗜好品が欲しい人の為に、『冥花』が存在するのよ」

「それ、意味無くない ? 刑罰になってないし、絶対依存するよね ? 」

「そうねぇ。健康の為と言うより、同じ物にしてしまえば規則を決めやすいからだと思うわ。

『冥花』の成分は、この世界にしか無い特殊なものらしいし。

 でも確かにね。皆んな依存はしてる。代用品に代わりはないわね」

「フェンランが管理してるのか ? 」

「ええ。この苗は彼女のもの。そして女囚だけで、栽培と加工してるの」

「つまり、女性はこれを売ってるのか……」

「そうよ。むさ苦しい塔を抜けて、昼はここでおしゃべりしながら作業。男たちの目を掻い潜って女だけで生きていくの。楽しいわ。

 フェンランがしっかりしてるから出来る事ね」

 その時、涼はサラが持っている物を見てピンと来る。

「そのジョウロ……水が入ってる……」

 翡翠が言っていた。

『水の永遠に尽きないジョウロを『核』に要望した者がいた』という話。

 サラがそうだったのだ。

「これね。フェンランは新人の女性がここに来ると、一応生活のプランを聞いてくれるのよ。わたしもフェンランといた方が安全だと思ったわ。

 それにね、田舎育ちだからさ、こういうの嫌いじゃ無かったから。見学した時、水源がなくて水運ぶ作業だけは面倒だなって考えて、水の湧くジョウロを『核』に所望したの」

「……フェンランはヤリ手だね。最初から他の人が『核』に求める物まで計算しているっえ事だ」

「そうね。彼女が怖いわ。賢くて綺麗だし、ダメなことはしっかり怒る、それでも繊細で優しいヒト。

 彼女のおかげで女囚たちは纏まってる。本当に凄いわ。彼女に憧れてる自分もいるのよね」

「そっか。こんな監獄で毎日することがあるって、いい事かもしれないね」

「そうなの。翡翠様の許可もあるし、さながらここは女の花園って感じ」

 サラは涼を見て微笑む。恰幅の良い体つきが全てを包み込むような柔らかさだ。

「涼くん……赤松高校の制服だね。偶然。わたしも松木市生まれなの。高校も赤松よ」

「え !? 」

 涼が複雑な面持ちで顔を上げサラを見つめる。はにかんだそれなりの……年相応の反応。それが初々しくもあり、ジョウロを抱いた彼女の姿はなんとも絵画の裸婦のように穏やかな笑顔だ。

「でも時代は違いそうだね。わたしは2005年にここに来たの」

「……あ。俺が産まれたのは、その一年後です」

「そうなの !? そう上手くはないかぁ ! 赤ちゃんと成人じゃ時代が違いすぎるね ! でもまだ制服のデザイン同じかぁ。見れて嬉しいわぁ」

「ですね。本当に偶然です」

「本当にね〜」

 国籍も年代も問わないこの『城』で、まさか同じ地域の人間に会えるとは思っていなかった。

「ほら、これを持ってみて」

「え……俺でも使えるの ? 」

「このジョウロは誰が使っても水が耐えることはないわ」

 サラは涼にジョウロを握らせると、その手を傾け冥花に水を注いで見せる。

「……これをファイトで狙われたりしませんか…… ? 」

「無いわ。全く無いわけじゃないけど。その時はフェンランが守ってくれるから」

「フェンランが ? 戦ったりするの ? 」

「ふふ〜 ! そうなの ! 」

 見目の綺麗なだけの同級生や、賢く立ち回り揚げ足をとって涼を搾取する大人を多く見てきた。

 だがサラの口ぶりでは、自分の全てをフェンランに預けているような信頼感を感じる。

 それはこの狭い世界では強烈に影響的な事だ。フェンランが涼に言った事にも通づる。「強い者と行動を共に」。

 女性たちはこの監獄で互いを助け合い、男性から身を守っている。

 しかし、涼はそれを聞き真っ先に思い浮かんだのが、翡翠と京の存在だった。

 翡翠に『付く』ということは出来ない。翡翠が管理人で自分が囚人という自由の利かない身では思い通りにそばに行くことはできない。しかし、ドールアイを手に入れなければ翡翠も自分もこのままだ。

 そして──行方不明の片目を持っているのは京だ。普通なら京に懐けばいいだけの話。だが涼には京の常人ならぬ、狂った感情が目に見えて解るのだ。自分の裏切りがいつか顔に出た時、その時の京が怖い。絶対に見逃しはしないだろう。勘が鋭すぎる。

「……サラさん、作業の邪魔してごめんね。案内ありがとう」

「いいのよ。植物っていいよね。みんな同じ。使い道があって、綺麗に加工されて売られていく。ここじゃ屑すら出ないから余計にね。わたしも生まれ変わるとしたら、植物がいいな……」

「植物だったら話は出来ないです。サラさんと話せて、俺は今日嬉しかった」

「やだ ! 涼くん、気遣い上手 ? わたしなんかにいいのに ! 

 ……これから新しい生活が始まるね。頑張って。これからもよろしくね、涼くん。

 さ。少し休まないと。今日来たばかりなんでしょ ? いくら人形って言えど疲労はあるからね ? 」

「あ……うん。ありがとう……」

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