Masuk中学生になった名探偵シュウ。新校舎に響く泣き声と連続失踪事件の裏に、過去の秘密と父の影が…。前作の星見キッズは再び集結するのか、友情の危機を乗り越える長編ミステリー!
Lihat lebih banyak深夜の新校舎は、息を潜めているように静かだった。シュウは懐中電灯を最小限に絞り、非常階段のドアの前に立っていた。タクミが隣で息を殺し、スマホのライトを床に向けている。二人は鍵をこじ開けるための細い工具を手にしていたが、ドアは意外に簡単に開いた。錆びた蝶番が、かすかな悲鳴のような音を立てる。シュウ「……開いてる」タクミ「誰かが、俺たちを待ってるってことか」階段は下へ下へと続いていた。埃の層が厚く、一段ごとに小さな足跡が点々と残っている。子供の靴底の形。だが、足跡は不規則で、時折途切れ、時折重なっている。まるで同じ場所を何度も往復したかのように。二人は階段を降り始めた。段数は二十段を超えたあたりで、壁のコンクリートが古びたものに変わった。旧軍施設の痕跡。父の手帳に描かれていた地下通路の入り口だ。タクミが小声で言った。タクミ「ここから先、父さんの手帳に地図なかったっけ?」シュウはポケットから手帳を取り出し、ページをめくった。赤い線で描かれた通路図。だが、最後の部分は空白のまま。途中で途切れている。シュウ「ここまでしか書いてない。……先は、知らない」階段の底に着いた。そこは狭い踊り場。壁に古い鉄の扉が一つ。錆びついて開きそうにないが、隙間から冷たい空気が漏れている。シュウが扉に耳を当てた。……かすかな音。ドス……ドス……。足音。ゆっくりとした、規則正しい歩み。だが、響き方がおかしい。反響が二重に聞こえる。一つは遠く、もう一つはすぐ近く。タクミも耳を寄せた。顔が青ざめる。タクミ「二つ……聞こえる」シュウは懐中電灯を扉の隙間に差し込んだ。向こう側は暗く、何も見えない。だが、光が届いた瞬間、足音がぴたりと止まった。静寂が、耳を刺す。シュウ「……気づかれた」タクミが扉の取っ手に手をかけ、力を込めた。軋む音が響く。扉が数センチ開いた。中は広い空間だった。旧
朝のホームルームが終わった直後、1年2組の教室に小さなざわめきが広がった。シュウは窓際の席で、事件ノートを閉じようとした指を止めた。隣のタクミが、スマホの画面を睨んでいる。タクミ「…おい、シュウ。これ見てみろ」画面には、学校の非公式掲示板のスレッドが開かれていた。タイトルはシンプルで、ぞっとするほど直接的。『新校舎3階、夜中に足音が聞こえるんだけど』書き込みは昨夜の深夜から始まっていた。1: 名無しさん 3日前 23:47 歩いてる音がする。ドスドスって。でも誰もいない。廊下の端から端まで、ずっと。2: 名無しさん 3日前 23:51 俺も聞いた。3階の端の空き教室の前で止まって、また戻っていく。まるで誰かが巡回してるみたい5: 名無しさん 今日 00:12 チャイム鳴った後、泣き声が混じってた。女の子の声。助けてって言ってる気がしたシュウの指が、画面をスクロールするたびに少しずつ冷たくなった。タクミ「高槻は病院だろ。装置は壊したはずなのに……」シュウは静かにスマホをタクミに返した。シュウ「装置は壊した。でも、記憶の断片は消えていない。誰かが、それを拾い上げてるのかもしれない」タクミの眉が寄った。タクミ「誰かって……高槻の仲間か?」シュウは窓の外を見た。校庭ではサッカー部の朝練が続いている。ケンタの背番号が、遠くでボールを追いかけているのが見えた。シュウ「わからない。でも、足音が『巡回』してるという書き込みが気になる。まるで……管理人が、校舎を監視してるみたいだ」放課後。二人は新校舎の3階へ向かった。夕陽がガラス壁を赤く染め、廊下に長い影を落としている。空き教室の前で立ち止まった。ドアは半開き。鍵はかかっていない。シュウはそっとドアを押し開けた。中は埃っぽく、使われていない机が乱雑に並んでいる。黒板には、誰かがチョークで書
朝の教室は、いつもより空気が重く感じられた。シュウは窓際の席で、事件ノートを広げていた。ページの最後に、昨日の五人の集合写真を挟み込んでいる。裏側に、赤いペンで書かれた文字が、まだ鮮やかだ。『五番目の記憶は、君たち自身の中にある』タクミが隣の席に座り、声を低く抑えた。タクミ「今日も、ケンタたち来ねえな」シュウはノートを閉じた。シュウ「来ないよ。もう、決めたんだ」タクミは窓の外を見た。校庭では、サッカー部の朝練が始まっている。ケンタの姿が、遠くに小さく見えた。ボールを蹴る動作はいつも通りだが、どこかぎこちない。タクミ「カナエは合宿でいないし、リナは美術室に籠もってるって聞いた。……完全に、戻っちゃったな」シュウはメガネをクイッと上げた。いつもの癖だが、今日は指が少し震えている。シュウ「それでいいんだ。俺たちが無理に引き止める権利はない」タクミは机に肘をつき、ため息を吐いた。タクミ「でもよ……昨夜の倉庫で、リナの記憶が戻った瞬間。あの涙。あれ見て、俺、思ったんだ。星見キッズは、まだ必要だって」シュウは静かに頷いた。シュウ「必要だ。でも、今は……違う形の必要さ」昼休み。二人は校舎の屋上へ上がった。新校舎の屋上は、鍵がかかっている。旧校舎の屋上へ向かう階段を上る。屋上は風が強く、制服の裾がはためく。シュウはフェンスに寄りかかり、空を見上げた。シュウ「高槻の次の手は、まだ来ない」タクミは床に座り込み、膝を抱えた。タクミ「来ねえ方がいいだろ。もう、十分だ」シュウはポケットから、昨夜のリナから受け取った人形を取り出した。赤い目は、もう塗りつぶされていない。ただの黒いガラス玉に戻っている。シュウ「これ……リナの記憶の鍵だった。でも、今はただの人形だ」タクミが人形を手に取り、じっと見た。タクミ「リ
朝の教室は、いつもより少し静かだった。シュウは窓際の席で、昨夜の倉庫での出来事をノートに書き留めていた。ページの端に、リナの幼い姿のスケッチを小さく描き加える。赤い目の人形は、すでに引き出しの奥にしまってある。タクミが隣に座り、声を低くした。タクミ「リナ、大丈夫か? 昨夜から連絡来てねえぞ」シュウはペンを止めた。シュウ「朝、LINEが来た。『今日は美術部のコンクール準備で遅くなる』って。……普通の文面だった」タクミはため息をついた。タクミ「普通すぎるのが、逆に怖えよ」ホームルームのチャイムが鳴り、担任が入ってきた。いつもの挨拶、連絡事項。だが、シュウの耳には、すべて遠く聞こえた。昼休み。校舎の裏のベンチに、五人が再び集まった。ケンタはサッカーボールを膝に置き、地面をじっと見つめている。カナエはテニスラケットを膝に抱え、リナはスケッチブックを閉じたままだった。シュウが口を開いた。シュウ「昨夜のことは……ありがとう。リナの記憶が、少し戻った」リナは小さく頷いた。リナ「うん……ありがとう。でも、私……」言葉が途切れる。リナはスケッチブックを強く握った。リナ「今日、美術部の顧問に呼ばれてさ。『お前、最近集中できてないだろ。コンクール近いんだぞ』って。……確かに、そうだと思う」カナエが膝のラケットを撫でながら、続けた。カナエ「私も……合宿のバス、明日朝発なんだ。監督に『体調管理は自己責任』って言われてて。もう、抜けられない」ケンタはボールを地面に落とし、軽く蹴った。ボールが転がって、フェンスに当たる。ケンタ「俺も……レギュラー争いが本格化してさ。監督が『お前、最近浮ついてるぞ』って。練習サボったら、即ベンチだ」タクミが苛立たしげに髪をかき上げた。タクミ「みんな……また、離れるのかよ」沈黙が落ちた。