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1.さぁ、始めましょう

Auteur: 望月 或
last update Date de publication: 2026-07-27 16:32:52

 ユグドール王国にあるバセロルト公爵領の、公爵家の屋敷内にて。

 窓にかかるカーテンがきっちりと閉められ、一筋の光も入ってこない、闇に覆われた部屋があった。

 そんな一寸先も見えない真っ黒な空間に、突如指先ほどの小さな灯火が現れた。

 微かにユラユラと揺らめく橙色のそれは、ロウソクの火だ。

 その光に灯され、ボゥッと妙齢の女性の顔が浮かび上がる。

「……ついにやってきたわねぇ、この日が」

 間延びした柔らかい口調で、その女性が言葉を発した。

 続いて、彼女の右隣の空間にもポッとロウソクの火が現れ、ボワッと壮年の男性の顔が浮き彫りになる。

 鼻の下に形の良い髭を生やしているその男性は、ゆっくりと口を開いた。

「はい、とうとうやってきてしまいましたね……」

 次に、男性の右隣の暗闇にも橙色の光がボッと灯され、スゥッと糸目な青年の顔が現れ出た。

「きちゃったねぇ。とっても悲しいよ、ボクは」

 言葉とは裏腹に、口元に微笑を湛えている青年はそう口にする。

 三人とも顎の下からロウソクを照らしているので、暗闇の中ロウソクの仄暗い明かりに映る彼らの顔は……非常に怖い。

 もしも今、誰かが部屋に入ってきたら、盛大な叫び声を上げ腰を抜かしつつ一目散に逃げ出すこと間違いなしだ。

「――ふふっ」

 すると、どこからか鈴を転がすような女性の吹き出す声が聞こえてきた。

 と同時に、シャッと音を立てカーテンが開けられる。

 日光が一斉に窓から差し込み、部屋の中がパッと見違えるように明るくなった。

「おふざけの時間はもう終わりだ」

 溜め息と同時に言葉を出したのは、陽の光を浴びてキラキラと輝く銀色の髪を持ち、目が隠れるくらいの丸眼鏡をかけている青年だった。

 彼は部屋の窓のカーテンをすべて開けると、ロウソクを持つ三人を冷めた表情で見る。

「だってぇ、ただ集まって真面目にお話するだけじゃつまんないんだもの。真剣なお話ほど、面白みを加えてリラックスしないとよぉ?」

 ロウソクの火をフゥッと消しながらニコリと笑うのは、カロリナ・バセロルト。

 腰まで届く薄緑色の髪と宝石のような美しい翠色の瞳を持つ、笑顔が可愛い彼女は、バセロルト公爵夫人だ。

「……真剣な話ほど真剣にしなきゃ駄目だろう」

「母さんの面白おかしい提案は今に始まったことじゃないしねぇ。いい加減慣れなきゃダメだよ、イグニス?」

 母と同じ間延びした口調で肩を竦めるのは、背中まである薄緑色の髪をひとつに結び、首元から前に下げている青年――ラハン・バセロルト。

 バセロルト公爵家の長男だ。

 彼はどんな状況でも軽口と微笑を絶やさない。

 糸目の彼がその茶色の瞳を見せ、微笑みが消える時――そうさせた元凶はこの世から跡形もなく消え失せるだろうと、家族の間でまことしやかに囁かれている。

「そうですよ、イグニス。カロリナのイタズラは家族限定でどれも可愛い被害で済んでいるのですから、こちらも楽しまないと損ですよ」

 カロリナとラハンからロウソクを回収して片付けているのは、茶色の髪と瞳を持った、紳士さが前面に出ている渋い男――ヒューガ・バセロルト。

 バセロルト公爵家当主だ。

 彼の家族への愛は筋金入りだと、領民の間では周知の事実で広がっている。

「『損』の意味が分からないのだが」

 ヒューガの言葉に眉間に皺を寄せている銀色の髪の青年は、イグニス・バセロルト。

 バセロルト公爵家の次男だ。

 幼い頃から読書家で、家や図書館の書物を読み耽っていた彼は視力が落ちてしまい、つねに度が高くレンズが厚い眼鏡をかけている。

 その丸眼鏡のせいで瞳が見えないが、髪と同じく美しい銀色の瞳を持っていた。

「ふふっ。わたくしは十分楽しませていただきましたわ。ロウソクが三本しかなかったのが悔やまれます。わたくしも参加したかったですわ」

 そこへ、先ほど聞こえた鈴を振るような声がイグニスの耳に入ってくる。

 彼が振り返ると、ウェーブ掛かった腰まで届く茶色の髪と、カロリナと同じ翠色の瞳を持った女性の姿がそこにあった。

 彼女はソファに座り、美しい笑みを浮かべながらこちらを見ている。

「……姉上」

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  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   44.輝かしい未来【完】

    「改めまして、これからどうぞよろしくお願いいたします、皆様」 アーベリアは、残った貴族達に再び深々と頭を下げる。「顔をお上げください、アーベリア様。実はバセロルト公爵閣下に、【戦勝記念日パーティー】でお会いした時に頼まれたのですよ。『私の娘が近い将来、この国を変えるでしょう。そのときは〝バセロルト公爵家の娘〟ではなく、〝娘自身〟を見て評価していただきたい。私への忖度(そんたく)は一切無しでお願いしたい』と」「……お義父様が、そんなことを……」 思わず翠の目を潤ませたアーベリアに、メセイア侯爵は優しく笑う。「ともに、この国を住みよく豊かな国へと変えていきましょう。――それでは、気持ちも新たに、国の名前も変えましょうか」「国の名前を……?」「はい。領民から昨日のことを聞きましたよ。皆、期待に胸を膨らませた興奮状態で、落ち着かせるのに一苦労でした。『セインウッド王のような立派な明君になりたい』と、貴女は仰ったそうですね。セインウッド王の意思を受け継ぐ、ユグドールの新たな女王――【セインドール王国】なんていかがでしょう?」 メセイア侯爵の提案に、周りの貴族からワッと歓声が上がる。「いいじゃないか、その名前!」「あぁ、俺は賛成だ!」「セインドール王国万歳! セインドール女王万歳!!」 皆から湧き上がる喝采に、堪らずアーベリアの頬に涙が伝う。 イグニスはそんな彼女に静かに近付くと、ハンカチをそっと差し出した。「では、生まれ変わるセインドール王国の新しい女王の誕生を祝福して、ささやかですがパーティーを開催しましょう。正式な戴冠式は後日に」「え? パーティー?」「はい。実は昨日の夜、自分達貴族宛に公爵閣下から書簡が届いたのです。『明日はきっと良き日になると思いますから、パーティーの準備はそのまま進めるよう城の者達に伝えてあります。せっかく用意した食材が勿体ないですからね。明日は存分に楽しんでください』と。――まったく、あの方はどれくらい先まで見越しているのでしょう。あの方が――バセロルト公爵家が我らの味方で良かったと、心の底から思いましたよ」 苦笑するメセイア侯爵の言葉を聞いて、アーベリアはもう涙が止まらなかった。「会場はすでに準備ができていますよ。――さぁ皆さん、参りましょうか」 アーベリアの様子を見たメセイア侯爵はフッと口元を綻ばせ、ほか

  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   43.ユグドールの貴族達

     翌日、ユグドール城の謁見の間にて。 アーベリアは玉座の前に立ち、ユグドールの貴族達と対面をしていた。 彼女の斜め後ろで、イグニスが銀の瞳を細め、貴族達の一挙一動を監視している。「昨日の騒動を耳にしましたが、本当だったようですな。センダン王が廃位し、貴女がこの国の新しい君主――女王になると」 ブラタナス男爵が太った腹を揺らし、アーベリアをジロリと睨みつけながら口を開いた。 彼は、センダンとルマーサに媚び入り甘い汁を啜っていた貴族の一人だ。「はい。若輩者でございますが、この国のために誠心誠意尽力いたします。皆様のお力添えを賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます」 アーベリアが滑らかな動きでお辞儀をするのを見て、ブラタナス男爵が鼻で嗤った。「フン、未熟で無知な小娘にこの国の君主が務められるものか。ピーピー泣きっ面を見せる前にとっととここから出ていくんだな」「あぁそうだ! 女が王になるなんて間違ってる。この国が近隣諸国に舐められるのが目に見えているじゃないか。この国の貴族としてそれは赦されるものじゃない!」「そうだそうだ! セインウッドの王女だかなんだか知らないが、その国はもうとっくの昔に滅んでいるんだ。我らの国にでしゃばってくるな!!」 ブラタナス男爵の非難を皮切りに、次々と他の貴族から罵倒が飛び交う。 それらを言っている者は男爵と同じ、センダンやルマーサに取り入り、領民の苦労とは裏腹に私腹を肥やしてきた貴族だった。 アーベリアは、自分の手が小刻みに震えていることに気が付いた。 それは緊張か、それとも大の大人達に怒鳴られ責められていることに対しての恐怖か。「……?」 ふと視線を感じ、アーベリアは後ろを振り向く。 イグニスがアーベリアをジッと見つめており、彼女と目が合うと、彼は真摯な眼差しで微かに頷いた。 その仕草が「大丈夫だ」と言ってくれているようで、アーベリアの緊張がふっと解ける。 彼女は一度深呼吸をすると前を向き、玉座に置いてあった紙の束を手に取った。「この国は、【ある一部の】貴族が裕福に暮らし、真面目に生活を営む貴族や国民が高い税に喘ぎ、苦しんでおります。家を失い、外で凍えながら暮らす者達もおります。それらを解決するための是正案を熟慮しましたので、お聞きいただけましたら幸甚(こうじん)に存じます」 そして、アーベリアは

  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   42.遠い空の彼方へ

     ラハンの問いかけに、アーベリアはしっかりと頷く。「えぇ。バセロルト公爵家は、この国で一番の権力を持つ貴族です。お義父様がその場にいらしたら、全員お義父様の顔色を伺って、義娘であるわたくしに何も言えず従うでしょう。ただし、それは表面上――上辺だけです。それではこの国を良くしていけませんわ。お義父様のいない状態で、わたくしに真の忠誠を誓う貴族を、わたくし自身の力で作らなければいけません」「うん、そうだね。でもキミならきっとできるよ。イグニス、ちゃんとアーベリアを護るんだよ」「あぁ」 真剣な顔つきで頷いたイグニスに、ラハンはにこやかな笑みを向けると、バルコニーの手すりに手をかけた。「じゃあ、ボクは行くよ。明日頑張ってね、二人とも」「はい、お気を付けて。本当にありがとうございました、お義兄様」「助かった、兄上」 ラハンは糸目のままヒラリと手を振ると、手すりを飛び越えバルコニーの反対側に出る。 そして華麗に地面に着地すると、軽やかな足取りで去っていった。「地上からここまで結構な高さなのに……。すごいな、ラハン殿は……。ここに現れた時も、下から一気にジャンプしてきたとか……? いや……そんな、まさかな……」「ディーン、それ半分合ってるわ。ラハンさんは私を抱えて、お城の壁を走ってバルコニーにあがったのよ。あの人、一体何者なの? 垂直な壁を走るなんて、とても人間業(わざ)とは思えないわ。人の皮を被った仙人様かしら?」 コノーテの言葉に、イグニスとアーベリアは『言い得て妙』と納得したのだった。「お姉様はこれからどうされるんですの? このお城に住んでくださるのなら大歓迎ですわ」「お誘いは嬉しいけど、私がお世話になっている村に戻るわ。私の薬草を必要としてくれる人達がいてね。記憶喪失で不安だった私に、色々と親身になってくれた人達だから、少しでも恩返しがしたいの」「そうですか……。寂しいですけれど、わかりましたわ」 眉尻を下げて微笑むアーベリアを、コノーテは優しく抱きしめる。「大丈夫よ。ちょくちょく様子を見に来るから。それに、呼んでくれればすぐに駆けつけるわ。絶対にね」「……はい。ありがとうございます、お姉様」「コノーテ、私も君についていっていいか?」 ディーンの突然の申し出に、三人は彼の方を振り向いた。「私が城に残ったら、私を使って君から王位を

  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   41.惨めな最後

     アーベリアの言葉に、センダンとルマーサは目に見えてホッとした表情を浮かべる。 しかし、続けられた彼女のそれに、二人は再び〝絶望〟を味わうことになった。「あなた方をそう簡単に死なせはいたしませんわ。【打ち首】なんて苦しむ暇もないではありませんか。死んで楽になるなんて、わたくしが絶対に赦しません。あなた方には、この国のために死ぬまで働いてもらいます。娯楽もなく自由もなく、おしゃれも買い物もできない、毎日地獄のような過酷な環境の中で、朝から晩まで年中無休、汗水流しながら一生労働してください。牢にいる時間が勿体ないですし、判決後すぐに働いてもらいます。泣いても喚いても無駄ですわ。この国の元王族として、国民の皆様のお役に少しは立てるのだからありがたく思いなさい」 いつも穏やかに微笑んでいた彼女の、今まで見たことのない冷めた表情と冷えたエメラルドの眼差しが、センダンとルマーサを無意識に凍えさせる。 二人は、当たり前だが一度も働いたことはない。もちろんライラックもだ。 国の最高位である自分達が、一般民と汗を垂らしながら働く―― それは、彼らにとって〝屈辱〟以外の何ものでもなかった。「……ふ……フザけるなっ! 誰がそんなことするかっ! 生意気な小娘――いや、〝極悪女〟め! この国の王であるワシがここで成敗してくれるわ!!」「アナタ、アタクシも加勢するわっ!」 センダンが咆哮したかと思うと、隠し持っていた短剣を取り出しアーベリアに襲いかかった。 ルマーサも懐から扇子を取りそれを広げると、鬼の形相で掴みかかってくる。「……本当に馬鹿な奴らだ。手に負えないな」 イグニスが小さく息を吐く。 彼は動こうとしなかった。これから起こる彼らの〝末路〟を知っているからだ。「――ねぇ? アンタ達さぁ、ボクの可愛い義妹に刃を向けてるの? あぁ……いけないなぁ。いけないねぇ、そんなことしちゃ。そんないけない愚か者には、オシオキが必要だねぇ?」 センダンとルマーサのすぐ後ろで低音の声が聞こえ、二人は心臓が飛び出るほど驚き足が止まった。 瞬間、強烈な回し蹴りが二人に直撃し、その身体が見事に吹っ飛ぶ。「グェッ!」「ギャッ!」 カエルが潰れたような声を出した二つの身体は、バルコニーの手すりの上を軽々と飛び越え――「ギャアアァァッ!!」「ヒイイィィッ!!」 センダンと

  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   40.再会

    「ごめんね、二人とも。心配かけちゃったわね」 そう言って目を細めて笑うコノーテの表情は、昔と変わっていなくて。「お姉様……っ!」「コノーテッ!」 アーベリアとディーンは堪らず叫ぶと、コノーテのもとへと走った。 勢いのまま胸の中に飛び込んだアーベリアを、コノーテはしっかりと抱き留める。「大きくなったわね、アーベリア。お母様に似ているわ。美人さんに成長したわね」「お姉様、生きておられたのですね! 良かった……本当に良かった――」「あぁ、本当に……。本当に良かった……」 目尻に浮かんだ涙を何度も指で拭ったディーンは、気になったことをコノーテに訊いてみた。「だが、今までどこにいたんだ? 私は……その、てっきり――」「ディーン、あなた声がガラガラで酷いじゃない。喉を傷めちゃったの? あとで喉によく効く薬草を処方してあげるわ」「あ、ありがとう……」 コノーテは頷くと、言葉を続ける。「あのね……実は私、今までずっと記憶喪失だったの」「記憶喪失っ!?」 コノーテは、目を見開き驚く二人を見て苦笑する。「えぇ。十二年前のあの時、崖に追いつめられた私は、護衛騎士さん達の声を聞いたの。『勇気を出して、崖から飛び下りて。大丈夫、必ず助かります』って。確かに頭に響いたその声に、私は迷わず崖から飛んだわ。そして川に落ちたの。その衝撃で記憶を失ったみたいで、川岸に倒れていた私を助けてくれた老夫婦のもとでお世話になって暮らしていたの」「そんなことが……」「護衛騎士さん達は、最後の最期まで私を助けてくれたわ……。記憶喪失のまま暮らしていたけれど、一か月前くらいかしら……この子が私のもとへ飛んできたのよ。その懐かしい姿を見て、今までの記憶をすべて取り戻したの。この子のお陰ね」 コノーテの肩の上で、氷の鳥が恥ずかしそうに羽根の先で頭を掻いた。「十二年前の子と大きさが違っていたから、ディーンがまた私を想って作ってくれたんだ、生きていたんだってわかって、本当に嬉しかった。すぐに連絡したかったけど、村の人達の薬草作りに忙しくて連絡できなかったの。あの村、年配者ばかりだから……。そんなある日、ラハンさんが村にやってきたのよ。私が昔作ったクッキーを持ってね」「まぁ、お義兄様が?」「うん、そうだよー。毒草に関しては、専門家の『薬草師』に訊いた方が早いと思ってね。そしたら

  • 後悔?そんなの勝手にすればよろしくて?〜悪女と呼ばれた公爵令嬢は絢爛に返り咲く〜   39.舞いおりた希望

    「は……はぁっ!? 何をフザけたことを……!」「ユグドール王国はセインウッド王国の従属国です。そして、セインウッドはユグドールの宗主国。セインウッドの王族が誰もいなくなればその関係は消滅いたしますが、一人でも残っていた場合、関係は持続いたします。ですので、わたくしがこの国の〝女王〟になることはまったく問題ございません」「じょ……女王だとっ!? 馬鹿なことを言うな! この国はワシのものだ! 誰にも渡しはしないぞ!!」 唾を飛ばしながら怒鳴るセンダンに、アーベリアは冷たい目線を送った。 その冷酷な眼差しに、ビクリとセンダンの身体が震える。「あなたがなんの罪も犯していない場合は、このまま王でいられたでしょう。ですが、あなたは沢山の罪を犯しました。救いようがない大きな罪まで。あなたに王を名乗る資格はございません。本日をもって【廃位】です」「なっ……わしがなんの罪を犯したというのだ! ワシはなんにも悪いことなどやっておらん!!」 センダンの言葉に、アーベリアは馬鹿にしたように声を立てて笑った。 今まで見たことのない彼女の嘲笑に、周りにいた者は唖然とする。「まったく……どの汚い口がそう言っているのかしら? あまりにも愚かで笑ってしまいましたわ」「なっ……なんだとっ!?」「まずはユグドール王。貴族との贈収賄や、気に食わない貴族への圧制、自分に歯向かった者に対し、何の罪もない者を処罰。国民に対して必要以上に高い納税の要求。そのお金で豪遊。国民が貧しい思いをして訴えてもまったく耳を傾けない。王とは名ばかりの、ただの愚者ですわ。バセロルト公爵家と、公爵家に賛同する貴族達の力がなければ、この国はとっくに潰れていたでしょうね」「……っ!!」「続いては、王太子と王妃」 アーベリアから鋭い視線を向けられ、ライラックとルマーサは大きく肩を波打たせる。「王の贈収賄や貴族の圧制を知っていながらも見て見ぬ振りをし、そのお金で豪遊。闇賭博にも手をつけている。そのうえ王妃は何人かの貴族と不倫。自分と夜を共にした貴族の要求に応え、国庫金を使いたい放題。そして殺人未遂と殺人教唆。どれも立派な犯罪ですわ」「そんな……そんなことはしておらんっ! とんでもない法螺(ほら)を吹く〝悪女〟めがっ! 護衛ども、その悪女を斬ってしまえ!!」 センダンの命令に、護衛騎士達は剣を抜きアーベリ

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