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第21話

Author: 温井虚秋
遥香は、蓮司に向かって軽く会釈をした。

その表情は凪のように穏やかで、ただ口元の微笑みがわずかに消えただけだった。

そして、そのまま背を向けて立ち去ろうとする。

蓮司はもはや衝動を抑えきれず、背後に控える秘書を置き去りにして駆け出した。

「遥香!」

彼の叫びが館内に響き渡り、周囲の視線が一斉に彼へと注がれる。

「遥香、いつ帰ってきたんだ?生きていると信じていた!あれからずっと、どこに隠れていたんだ!」

蓮司は胸に渦巻く激しい歓喜と悲憤を抑え、溜め込んできた言葉を堰を切ったように叩きつけた。

あと少し。あと少し手を伸ばせば、彼女に触れられる。

だがその刹那、ある人影が不意に現れ、蓮司の前に立ちはだかった。

勇人だった。

「人違いだぞ」

白いカジュアルスーツを着こなした勇人は、鋭く刺すような威圧感を放っていた。

「彼女はお前の言う『遥香』ではない。僕の婚約者、ヴィヴィアンだ」

勇人は有無を言わせぬ口調で冷たく言い放った。

同時に、もう一方の手を遥香の腰に回し、それが自らの不可侵の領域であると見せつけるように主権を宣言した。

遥香はそれを拒むどころか、むしろ勇
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