Share

第402話

Auteur: シガちゃん
容赦がない、か。

由奈は一度目を伏せ、それからまっすぐ祐一を見つめ返した。「あなたのほうこそ、私に容赦なんてなかったでしょう。しかも……何倍も残酷だった」

その答えを予想していたかのように、祐一はかすかに笑う。「そうか。だからずっと俺を憎んでいたんだな。こうして俺のそばにいるのも、母さんと交わした約束を守るためだけ、というわけか」

由奈の息が、一瞬止まる――千代と約束を交わしたことを、祐一が知っていたのか?

動揺が表情ににじみ、視線が揺れた。

それだけで、図星だと祐一ははっきりとわかった。

祐一は彼女の顔を静かに見つめ、片手で額を覆う。込み上げてくる感情を、無理やり押し込めるように。

「もう、行っていい」

由奈は動かなかった。

「……出ていけ!」

突然の怒声に、体がびくりと震える。由奈は何も言わず、ドアを押し開けて車を降りた。

祐一がとっさに手を伸ばすが、指先は空をつかむだけだった。遠ざかっていく由奈の背中を見つめながら、胸の奥に重たいものが沈んでいくのを感じる。喉の奥に、かすかな鉄の味が広がった。

……

由奈はホテルへは戻らず、タクシーを拾って美夏のマンショ
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第420話

    歩実の片耳は、外部から受けた衝撃で鼓膜が剥がれ、すでに壊死していた。それでも彼女が手術を拒み続けていたのは、ただ一つ――逃げ出す機会を待っていたからだ。彼女はずっと思い込んでいた。自分をこんな惨めな姿にしたのは、留置場にいるあの憎たらしい女たちのせいだと。だが――すべてを仕組んだのは、目の前に立つこの男。かつて、あれほどまでに自分を守り、甘やかしてくれた男だった。祐一が自分を憎んでいることは、歩実も分かっていた。それでも――彼が本当にここまで冷酷になれるとは、どうしても信じたくなかった。だって、あの時。彼は確かに自分を見逃したのだから。だからこそ、心のどこかで思っていた。まだ少しは、自分への情が残っているのではないかと。……本当に、滑稽だ。男なんて、「愛している」と言っていたくせに、ある日突然、何もかもが消えてしまう。歩実の頬を涙が伝い落ちる。だが次の瞬間、その瞳に浮かんだのは――激しい憎しみだった。その衝動のまま、彼女はテーブルの上にあった物をつかみ、祐一めがけて投げつけた。祐一はとっさに腕を上げて受け止めたが、衝撃で腕を打たれる。由奈が思わず前に出ようとしたが、その前に看護師と医師が駆け寄り、歩実を押さえつけた。歩実はベッドに押し倒されながらも、歪んだ笑みを浮かべて叫ぶ。「祐一、私だってあなたを愛してなかったのよ!最初からね!」彼女は笑いながら叫び続ける。「あなたが滝沢家の跡継ぎだから選んだだけ!今じゃ、愛する女に嫌われて――おまけに癌だなんて!」歩実は狂ったように笑う。「報いよ!それがあなたの報いなのよ!」まるで完全に理性を失ったようだった。ICUの中に、彼女の絶叫が響き渡る。やがて医師が鎮静剤を注射する。薬が体に回るにつれ、歩実の抵抗は次第に弱まり、叫び声もゆっくりと途切れていった。それでも、かすかなうめき声だけは耳に残り続ける。白衣の医師や看護師たちが忙しく動き回る。その白い影が、由奈の視界を何度も遮った。由奈はその場に立ち尽くしたまま、ただ一点を見つめている。祐一の背中だった。高くまっすぐな背中。その姿は、どこかこの場所に溶け込めず、ひどく孤独に見えた。その時、祐一がふいに振り向く。そして――由奈と目が合った。その瞬間、祐一はわずかに目を見開いた。だが由奈は何も言

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第419話

    歩実は小さな化粧鏡を手に取り、リップをそっと塗り直した。以前のような完璧なメイクではない。それでも――祐一に会う以上、せめて少しでも元気な姿でいたかった。そこへ看護師がベッドの横に来て、カーテンを静かに引き開ける。次の瞬間、歩実の視界に一人の男の姿が映った。背筋の伸びた長身。端正な顔立ちは、以前よりもいっそう鋭く、近寄りがたい雰囲気をまとっている。祐一だった。「……来てくれないと思ってた」歩実は微笑んだ。だがその目には、どこか恨めしげな色が滲んでいる。「あなたが癌だって聞いた時、ずっと考えてたの。これって……もしかして報いなのかなって」祐一は表情を変えないまま、静かに彼女を見つめた。「その様子だと、ずいぶん苦労したみたいだな」歩実は一瞬だけ目を見開く。すぐに身を乗り出し、祐一の手をつかんだ。「祐一……あなた、本当はまだ私のことを気にしてるんでしょ?」声が震える。「私たち、あんなに長い間一緒にいたのよ。昔はすごく愛し合ってたじゃない。もし池上先生が現れなかったら、あなたは変わらなかったはずよ!」歩実は必死に言葉を重ねた。「認めるわ。私、後悔してる。あの時あなたと別れたこと……本当に後悔してるの。でも、あの時はどうしようもなかった……帰国したら全部話すつもりだったの」彼女の瞳に、強い感情が宿る。「でもあなたの隣に池上先生がいた……悔しかったし、嫉妬もしてた。あの人に負けたくなかっただけなの!」だが――祐一の目は、最後まで変わらなかった。冷たく、静かで、何の感情も浮かんでいない。その視線に気づいた瞬間、歩実の瞳から希望の光がゆっくりと消えていく。彼女は力なく手を離した。祐一は袖口を軽く払う。「君にとっても、俺が唯一の選択ではなかったんだろ?俺がいなくても……米林圭介がいるじゃないか」歩実の顔が凍りついた。血の気が引き、真っ白になる。「……もう、知ってたの?」「調べるのに、ずいぶん時間がかかったけどな」歩実は呆然とした。「……いつから?」祐一は淡々と答える。「影山との一件を知った頃からだ」歩実は慌てて首を振った。「違う!あの人には何も言ってない!」祐一は小さく笑う。「別に、あいつが教えたなんて言ってない」歩実は言葉に詰まった。祐一は続ける。「影山が君を助けたのは、滝沢家への恨

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第418話

    倫也は、話題を逸らした。「米林社長は帰国されたばかりだそうですね」「そうなんです」圭介は軽く肩をすくめる。「数年離れただけなのに、国内はいろいろと変わりましたね。人も、状況も」そう言いながら視線がゆっくりと由奈へ落ちた。口元に意味ありげな笑みが浮かぶ。「それに、江川市総合病院にこんな美人の先生がいるなんて。俺、全然知りませんでした」その視線に、由奈は胸の奥がざわつくのを感じた。――米林。その苗字を聞いた瞬間、もう彼の正体は察していた。明夫と関係のある人物だ。とはいえ、あの事件が起きた当時、圭介は倫也と同じくらいの年齢だったはずだ。つまり、犯人とは同じ人物ではない。そう自分に言い聞かせ、由奈は静かに息を整える。「恐縮です」淡々と返すと、圭介は小さく笑った。「池上先生、ずいぶん控えめなんですね。なるほど……それもあって――」意味深に言葉を切る。その続きを、あえて言わない。倫也はわずかに眉をひそめたまま、由奈の前に立ち続けている。「そういえば、米林社長は東山家のお嬢さんと縁談が決まったとか」圭介は軽く笑い、倫也の肩に手を置いた。「ええ、式を挙げるときは、ちゃんと招待しますよ。白石先生も来てくれますよね?」倫也はちらりと視線を向けると、すぐに逸らす。「そのときは、喜んで」圭介は短く笑い、そのままエレベーターへ向かった。扉が閉まる。その姿が完全に見えなくなったとき、由奈はようやく小さく息を吐いた。だが胸の奥の重苦しさは消えない。――あの人が、米林圭介。倫也が振り返る。「怖かったんですか?」突然の問いに、由奈は一瞬言葉を失った。……気づかれていたのだろうか。「いえ……もう大丈夫です。さっきは助けてくれてありがとうございました」「いえ。それより、昨日のことですが……すみませんでした」思いがけない言葉に、由奈は目を瞬いた。「どうして白石先生が謝るんですか?」「あなたを呼び出したのは私なのに、あんな思いをさせてしまいました」倫也の声は静かだったが、どこか真剣さが滲んでいる。それはただの謝罪というより、どこか自分を責めているような響きだった。由奈は視線を落とす。「白石先生」倫也は黙ったまま彼女を見つめている。ふと、由奈は小さく笑った。「白石先生って、冷たそうに見えるけど……実

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第417話

    「兄は……」悠が言いかけたそのとき、倫也から電話がかかってきた。彼女はすぐに通話ボタンを押す。「うん、大丈夫、池上さんはちゃんと送り届けるから安心して」電話の向こうで倫也が何か言ったらしく、悠の表情に一瞬、残念そうな色が浮かんだ。軽く相づちを打つと、彼女は通話を切る。由奈は気になって問いかける。「さっき言いかけたことですけど……」悠はくすりと笑った。「それは……直接兄に聞いたほうがいいと思いますよ」由奈はそれ以上何も聞かず、車内は静かな空気に包まれた。……ホテルに戻った由奈は、廊下で二人の男とすれ違った。一瞬、見覚えがある気がする。もう一度視線を向けて、ようやく思い出した。歩実の監視を担当していた、あの警察官たちだ。由奈はそのまま彼らとすれ違い、数歩進んでから振り返る。二人はそのままエレベーターに乗り込んでいった。――何をしに来たのだろう。そんな疑問が頭をよぎる。部屋に入ると、リビングの大きな窓の前に祐一の姿があった。傍らには麗子が立っている。「長門さんに会いに行かれるんですか?」麗子が静かに尋ねる。祐一はまだ由奈が帰ったことに気づいていない。「ああ、そろそろ一度顔を出すべきだろうな」淡々と答える声。由奈は無表情のまま二人の背後を通り過ぎた。足音に気づいた麗子が振り返る。「奥様……」だが由奈は何も言わず、そのまま寝室へ入っていった。閉まったドアを、祐一はしばらく黙って見つめていた。……翌朝。由奈と祐一は、いつものように向かい合って朝食を取っていた。祐一は昨日のことに一切触れない。いつものような弁解も、説明もない。もっとも――彼が何を言おうと、由奈はもう気にしていなかった。由奈はゆっくりと味噌汁を一口すする。……ふと、手が止まった。今日の味噌汁はやけにあっさりしている。むしろ、由奈の好みに近い味だ。そのとき、将平が遅れてリビングに入ってきた。「今日はずいぶん質素な朝食だな」テーブルを見て、彼は何気なく古賀に声をかける。だが古賀が答える前に、祐一が淡々と言った。「俺が作った」由奈の手がぴたりと止まる。味噌汁を見つめながら、胸の奥に複雑な感情が広がった。将平は眉をひそめる。「お前が?料理なんてしてたのか」「ホテルにこもってると暇でね」祐一はさらりと答える。

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第416話

    悠がそう言うと、恭介も頷いた。「そうだな、時間があれば、一緒に食事をしよう」由奈は断ることもできず、結局その申し出を受け入れるしかなかった。やがて昼食の時間になり、皐月が会社から戻ってきた。後ろには梓の姿もある。皐月は由奈をちらりと一瞥したが、すぐに視線を逸らし、椅子を引いて席に着いた。「総司はまだ会社か?」恭介が尋ねる。皐月はナイフとフォークを手に取りながら答えた。「ええ、少し仕事が残っているみたいで。戻るのはもう少し遅くなるそうです」そう言うと、今度は由奈に目を向ける。「お料理、お口に合ってるかしら?」由奈は微笑んだ。「好き嫌いはないので、大丈夫です」皐月は何気ない口調で続ける。「そういえば、お義母さんの千代さんとは、もう何年もお会いしてないの。お元気かしら?」一見ただの世間話のようだが、実際は由奈の立場をそれとなく思い出させるための言葉だった。――まるで、祐一と別れたら自分がそのまま白石家に嫁ぐとでも思われているかのようで、由奈は心の中で小さくため息をつく。だが、わざわざ正面から反論する気はなかった。由奈は笑みを崩さないまま、穏やかに言う。「皐月さんは、義母と親しくされているんですか?私はあまり聞いたことがなくて……今度義父に伝えておきますね。皐月さんが義母のことを気にかけていらしたって」倫也は目を伏せ、ふっと小さく笑った。どうやら自分の出番はなさそうだ。皐月は言葉に詰まり、顔色が変わって思わず恭介の方を見る。――彼女と将平の過去は、白石家が気にしないわけがない。恭介は相変わらずゆっくりと食事を続けており、会話など気にも留めていない様子だ。すると後ろに立っていた梓が、思わず口を開いた。「池上さん、少し言動には気をつけた方がよろしいかと」由奈が何か言うより早く、倫也の表情から笑みが消えた。「あなたこそ、言動に気をつけた方がいいんじゃないか?」梓は一瞬で固まり、慌てて視線を落とす。唇をきゅっと噛んだ。恭介もようやく、皐月がわざと意地の悪いことをしていると察したらしい。「客に対して、最低限の礼儀はわきまえるべきだろう。そばに置く人間にも、そのくらいは教えておくものだ」皐月はわずかに眉を動かし、梓を横目で見た。「私の配慮が足りませんでした。梓さん、あなたも池上さんに謝って」梓は唇を引き結ん

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第415話

    由奈の表情が、すっと曇った。白石家が江川市でも屈指の名門であることは、彼女だってよく知っている。倫也の将来の結婚相手が、家柄の釣り合う相手になるだろうことも理解していた。だが、梓の言い方と態度には、さすがに神経を逆なでされた。由奈が言い返そうと口を開きかけた、そのとき――「日野さん、あなたが兄の決定を代弁できる立場じゃないと思いますが」玄関の方から、若い女性の声が響いた。日野梓(ひの あずさ)は一瞬固まり、慌てて一歩下がる。「お、お嬢様……」――お嬢様?由奈がそちらへ目を向けると、ひとりの少女がゆっくりと室内へ入ってきた。二十歳そこそこだろうか。人形のような姫カットの長い黒髪に、雪のように白い肌。暖色の宮廷風ナイトドレスの上から、ざっくりとしたニットカーディガンを羽織っている。その瞳は美しく、どこか倫也に似ていた。倫也に妹がいるなんて、由奈は初めて知った。少女――白石悠(しらいし ゆう)は、由奈と目が合うと柔らかく微笑み、すぐに梓へ視線を移す。「この方、兄の客人ですよね?」穏やかな声だったが、その奥にははっきりした圧があった。「今の話、もし兄に聞かれたら……あなた、困るんじゃないですか?」梓は慌てて弁解する。「それは奥様のご意向で……」「たとえ母の意向でも、さっきの言い方は母の言葉そのままじゃないでしょう?」その一言で、梓の顔色がみるみる白くなる。悠は終始やわらかな口調のまま、静かに続けた。「母が二人の交際に反対しているとしても、客人の前であんな言い方はしません。あなたが母のもとで働けているのも、母が引き立てたからでしょう?あなたの仕事は、与えられた役目をきちんと果たすこと。白石家のことを決める立場じゃありませんよ」柔らかな声なのに、妙な迫力があった。梓はいたたまれなくなり、そのまま立ち去ろうとする。だが――「ちょっと待って」悠が呼び止めた。「謝罪はまだですよね?」梓は言葉に詰まり、明らかに不満そうな顔をした。それでも、結局は由奈に向き直る。「……失礼しました」短くそう言って、足早に部屋を出ていった。由奈は悠へ軽く頭を下げる。「助けてくださって、ありがとうございます」悠はくすっと笑う。「いえ、当然のことです。白石家の評判が、ああいう人のせいで落ちるのは困りますから」そう言

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第29話

    歩実は絶句し、胸の奥で煮え立つような悔しさを覚えた。――あの女、私を馬鹿にしてる。そう思った瞬間、廊下から人の気配がして、歩実は慌ててスマホを元の場所に戻し、横に身を引いた。ほどなくして祐一と麗子が執務室に入ってくる。祐一は歩実を一瞥し、眉をひそめた。「もう退院したのか?」「ええ、怪我はなかったし、軽い休養でいいって言われたわ」歩実は微笑みながら彼に近づく。祐一が椅子に腰を下ろしてスマホを手に取るのを見て、歩実はすかさず話題を変えた。「そういえば、健斗があなたに会いたがってるわ。一緒にお昼とかどう?」祐一は通話履歴に目もくれず、社内グループのメッセージを確認しただけ

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第42話

    歩実が意識を失って運ばれたあと、祐一は彼女が起きるまでそばを離れずにいた。「……祐一……」微かな声に、祐一が顔を上げる。「起きたのか?」その時、病室のドアが開き、達夫が笑顔で入ってきた。「おや、滝沢社長もいらっしゃいましたか」「ああ」祐一は軽く返すだけで、すぐに本題に切り込んだ。「彼女はなぜ倒れた?」達夫は歩実と視線を交わし、言葉を選びながら答える。「長門先生は出産後に無理をされたようで……産後の回復が十分ではなかったんです。しばらく静養すれば問題ないかと」歩実も合わせるように言う。「祐一、心配しないで、私なら大丈夫だから。迷惑かけてごめんね」歩実は顔色が紙のように白く

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第47話

    ……子ども?祐一の言葉の意味を、由奈はいっとき理解できなかった。頭の中をよぎったのは、健斗の姿だけ。祐一をこれほど取り乱させる原因があるとすれば、それしか思い当たらない。「子どもに酷い真似を?」由奈は乾いた笑みを浮かべる。「滝沢社長、何を言っているのか、私にはさっぱりわかりません」「とぼけるな!ケーキを買ったのは君だろう!」祐一は彼女の手首を乱暴に掴んだ。骨に食い込むほどの力に、由奈は思わず顔をしかめる。痛みに息を呑みながら、なんとか腕を振り解く。「ええ、長門先生に頼まれて買いました。それが何か?」祐一の腕が再び伸び、彼女の身体をぐっと引き寄せる。鼻先が触れそう

  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第21話

    「土屋が送ってもらうから、先に帰ってくれ」祐一は歩実の手を振り払い、背を向けて歩き出した。その背中を見送りながら、彼女はブレスレットをきつく握りしめ、目に憎しみを宿す。――池上由奈。あんな嫌らしい女に祐一を奪われてたまるか!彼女はスマホを取り出し、迷いなく番号を押した。……駐車場に入った由奈の後ろを、彰が追いかけてきた。振り返った彼女は少し驚いて、「彰さん?」と声を上げる。彰は肩をすくめ、にやりと笑った。「僕は信じてるよ、由奈ちゃん。君がそんなことする人間じゃないって」由奈は一瞬きょとんとした。「どうして……信じてくれるんですか?」彰は腕を組み、さらに笑

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status