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第6話

작가: シガちゃん
「大人が子ども相手に、なに本気になってるんだ」

由奈は思わず息を呑んだ。祐一が自分を信じてないことくらい、とっくにわかっていた。けれど、こうまであからさまに歩実と健斗をかばう姿勢を見せられると、胸の奥が鋭く痛んだ。

滲む涙を必死で抑え、低い声で言い返す。「私、あの子を推してなんかいません!」

祐一は冷笑を浮かべた。「じゃあ、君の言い分だと――まだ幼い子どもが、自分で転んで君を陥れたってことか?」

胸が震え、呼吸さえ乱れる。

どうせ彼は信じない。もうわかっているのに、なぜまだ必死に弁解しようとしてしまうのか。

由奈は伏せた視線を上げず、絞り出すように言った。「……もういいです。今日は私がついてなかったってことで」

背を向け、一歩を踏み出そうとした瞬間――

「待て」

足が止まる。が、由奈は振り返らない。

「健斗はまだ子どもだ。大人がそこまで意地を張る必要はない」祐一の声は少し柔らいでいた。「謝ってやれ」

「祐一、もういいよ、謝ってもらわなくても……」歩実が口を挟む。

だが祐一の眼差しは冷たかった。「間違ったなら素直に認め、謝るべきときは謝らなきゃならないんだ」

由奈の手は固く握り締められ、爪が掌に食い込んでいた。痛みなど、もう感じなかった。

彼女はゆっくりと顔を上げ、祐一をまっすぐに見据えながら、近くの防犯カメラを指さす。

「滝沢社長、ここはパシフィスガーデン。防犯カメラが至るところにあります。ヒーロー気取りで正義感を振りかざす前に、まず映像を確認したらどうですか?

もし私が間違っていたら謝ります。でも、やってもいないことで謝るつもりはありません!」

そのまま振り返らず、足早に去っていった。

祐一の胸の奥が、不意に重く締めつけられる。表情は陰り、言葉を失った。

「防犯カメラ」というワードに歩実の心臓が跳ねた。もし祐一が本当に確認したらと思い、慌てて祐一の袖を掴む。

「祐一、もういいよ。健斗も怪我はしてないし、池上先生がわざとじゃないって信じてるから」

何としてでも映像の話を掘り下げさせてはならない。彼女はすぐに話題を切り替えた。

「祐一、健斗が遅れちゃうから、もう行きましょ?」

祐一は短く息を吐き、掴まれた腕をそっと引っ込める。

「園長先生にはもう連絡してある。健斗を連れて行ってくれ、向こうで段取りしてくれる。俺はまだ会議があるから、会社に行ってくる」

そう言い残し、車に乗り込んで走り去った。

残された歩実は、祐一の車を見送る視線のまま手を強く握りしめていた。

その動きに、健斗が小さく呻いた。「……ママ、痛いよ」

はっとして手を緩め、しゃがみ込んで彼の肩に手を添える。目の奥に影を宿しながら、唇に薄い笑みを浮かべた。

「健斗、さっきはよくできたわね。ママ、嬉しいよ」

「ほんと?」幼い瞳が輝く。

彼は何もわからない。ただ母の笑顔と褒め言葉があれば、それだけで十分だ。

歩実は息子の頬を撫で、声を潜める。「健斗も祐一おじさんにパパになってほしいでしょ?」

「うん!」彼は無邪気にうなずいた。

歩実の笑顔はさらに冷ややかになる。「だったら、もっともっとおじさんに気に入られるように頑張るの。わかった?」

「わかった!頑張る!」

……

祐一が会社に着くと、秘書の土屋麗子(つちや れいこ)が駆け寄ってきた。「社長、和恵様が部屋でお待ちです」

「わかった」祐一は頷き、執務室に入った。

和恵はソファに座り、優雅に茶を啜りながらまっすぐ祐一を見上げた。「聞いたわよ。あの長門歩実を、由奈と同じ病院にねじ込んだそうじゃない?」

祐一はネクタイを緩め、向かいに腰を下ろした。「その話、由奈から聞いたのか?」

和恵は湯呑みを卓上に叩きつけるように置いた。「祐一、もう少し自分の妻を信じてあげたらどうなの?由奈が告げ口するような女じゃないわよ」

祐一の口元に、冷ややかな笑みが浮かぶ。

「彼女なら、やりかねない。

それに――あのとき由奈がどうやって滝沢家に入ったのか、結婚を迫るようにおばあさまがどんなふうに動いたのか、今でもはっきり覚えています」

和恵の顔に陰が差し、冷ややかな笑みが過ぎる。「もし由奈が告げ口していたなら、あの女が無事に帰国できるはずないでしょう」

祐一は一瞬、言葉を失い、まっすぐ和恵を見返した。「……もう歩実には関わらないでください」

和恵は鼻で笑う。「おや、ずいぶんかばうのね……でもね祐一。あの女、昔私から二億受け取って、あんたと別れたのよ。そんな金に転ぶ女を、本気で選ぶつもり?」

「おばあさまが仕組まなければ、彼女は去らなかったんです」

「祐一……!」和恵の顔が引きつり、次の瞬間、低い笑い声が漏れる。

「祐一、あんたはいずれ後悔するわ。ガラス玉を真珠だと思い込んで、大事に抱えているようなものだから」

そう吐き捨てるように言い、立ち上がった。

「……もうあんたと由奈のことには口を出さない。離婚でも何でも、好きにすればいいわ」

そう言い残し、和恵は扉を開けて出て行った。

祐一は奥歯を噛み締め、眉間に濃い影を落とした。

後悔?

――ありえない。

由奈はすでに欲しいものを手に入れた。贅沢も、地位も。

自分から離れられるはずがないのだ。

祐一の胸の奥で、重く暗い確信が沈殿していった。
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