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第2話

مؤلف: 魚魚魚ちゃん
テーブルの上には、手作りのレースのヘアバンドが1つ置いてあった。

デザインからして、ヨーロッパ製のものらしく、きっと月美の娘のものだろう。

節美は思わず皮肉めいた笑みを浮かべた。

この親子、本当に情が深いね。娘にまで「愛屋及烏」ってやつか。

貴志はそんな彼女の表情が気に食わなかったのか、眉をひそめて不機嫌そうに怒鳴った。

「明日までに直ってないと困るんだよ!今すぐちゃんと直せ!」

節美は視線をそらして、冷たく言った。

「できないわ」

手作りのレースは元々繊細な上に、このヘアバンドはどこかで引っかけたのか、大きな穴が空いていた。

修理するにも、簡単にはいかない。

それに、彼女はついさっきまで外で三時間も立ちっぱなしで凍えていた。

手も足も冷えきって、まともに動けなかった。

それなのに、貴志は急に怒鳴った。

「なんでそんなに使えないの!?やろうと思えばできるくせに、やる気ないだけだろ!晴美ちゃんに明日渡すって約束したんだよ!今日中に絶対にやれ!」

節美は温かい湯の入ったカップで手を温めながら、冷たい声で返した。

「貴志。私はあなたの母親であって、家政婦じゃないの!」

彼女が貴志に強く出ることは、めったになかった。

貴志は父親譲りの高いIQを持ち、勉強に関しては彼女の出番などなかった。

そのため、節美は日々の暮らしを支える役割を一手に担ってきた。

食事、服、体調管理まで、すべて気を配ってきた。

なのに貴志は、いつも母のアラ探しをしては文句ばかり。

母親の献身に慣れきって、当然のように要求し、少しでも思い通りにならないと不満をぶつけていた。

絵本を読む声のトーンにすらクレームをつけた。

賢い子どもを育てるのは簡単じゃないと分かっていたから、ずっと我慢してきた。

でも......もう限界だった。

貴志は母の変化に驚いて、思わず廷悟の方を見た。

廷悟はキッチンから出てきて、貴志に言った。

「今夜はお母さんに休んでもらおう。作るのは明日でいい」

その瞬間、廷悟はまた「理想の夫」のふりをした。

エプロンをつけ、優しい目で湯たんぽを差し出してから、彼女の頭を撫でた。

「子どもだから、そんなに怒らなくてもいいよ」

節美はわずかに頭を傾けて、その手を避けた。

そして落ち着いた声で言った。

「怒ってなんかないわ」

ただ、貴志に......これからはもう家政婦のようには動かないと伝えただけ。

廷悟の手は空中で止まり、そのままゆっくり引っ込められた。

沈黙のなかに、気まずさと、言いようのない虚しさが漂っている。

廷悟は眉をひそめた。

彼の予想では、節美は泣きわめき、責め立て、怒りをぶつけて、最後にはまた折れてくるはずだった。

でも、彼女はそのどれもしなかった。

すべてを飛ばして、ただ静かに......まるで何もかもに興味がないかのように、受け入れた。

「とにかく、まずはご飯を食べよう」

話題を切り替えるように、廷悟はキッチンから魚のスープを運んできた。

一杯目を節美に差し出した。

「温かいうちに飲んで。魚のスープ、好きだよね?」

乳白色のスープに、ふわふわの白身、出汁の香りが立ちのぼってきた。

これは、廷悟の得意料理だった。

......ただ。

節美の胸に広がったのは、苦味だった。

「魚のスープが好きなのは、月美よ」

廷悟の手が一瞬止まったが、すぐに何事もなかったように言った。

「姉妹だろ?好みが似ててもおかしくない」

節美は、自嘲するように笑った。

自分と月美の好みは、全然違っている。

でも、廷悟の記憶には月美しかいないんだ。

普段は実験データしか覚えられない男が、なぜかそれ以外彼女のことだけは忘れないだろう。

節美は目を伏せ、淡々と言った。

「私は魚のスープが大嫌い。魚の生臭さが鼻につくし、気持ち悪くなる。私にとってまるで生ごみのようだ」

廷悟はスープをよそう手を止めることなく、ただ冷静に言った。

「魚は心臓にいいから」

節美は、スプーンを握っている手に力を込めた......彼が気にしているのは、それだけなんだ。

もう何も言わず、彼女はそのスープを黙って飲み干し、部屋へ戻った。

結婚して八年間、二人はずっと別々の部屋で寝ていた。

廷悟が「自分は眠りが浅い」と言ったから、彼女は気を遣って客間に移ったのが始まりで、それから八年間も続いた。

本当は......ただ一緒にいたくなかっただけだろう。

でも、今となっては、節美にとってもうどうでもよかった。

......翌朝。

起きたばかりで、頭がぼんやりしている時、外から、ドンドンとドアを叩く音が響いた。

「ママ!悪いママ!なんでまだ起きてないの!ごはん作ってよ!」

重い体で、なんとか起き上がると、もう八時を過ぎていた。

貴志は七時半に学校へ行くはずだった。

それでいつもなら彼女は六時前に起きて、朝食や持ち物を準備していた。

ドアを開けた瞬間、貴志の足が彼女のすねに思い切り蹴った。

七歳だけだが、蹴りにも十分な力があった。

節美は顔をしかめて数歩後ずさり、ドア枠にしがみついてなんとか倒れそうな体を支えられた。

「お父さんは?」

リビングは空っぽで、部屋にも誰もいない。

貴志は当然のように言った。

「パパは仕事で忙しいんだよ。ママは家にいるくせに、何もしてくれないし、ごはんもサボってるなんて」

確かに、廷悟は忙しい。

江川市一の心臓外科医である彼は、睡眠時間も惜しんで働いていて、家族なんて完全に放ったらかしだ。

貴志が小さい頃、熱を出して病院に行ったときも、節美一人で子どもを抱えて、受付や検査を走り回っていた。貴志がようやく元気になった頃には、自分が倒れていた。

その話を聞いた廷悟は、こう言っただけだった。

「次からはベビーシッターを呼べばいいだろ」

その「ベビーシッター」という言葉は、あまりにも軽く、そして冷たかった。

廷悟は子育てをしてこなかった。だから、子どもが病気のとき、母親がどれだけ不安になるかなんて分からないのだ。

シッターは手伝いにはなるけど、子どものそばで寄り添うことを完全にやらせるわけにはいかない。

でも、それは彼には理解できなかった。

......そして今、貴志も同じだった。

「月美おばさんが言ってたよ。ママはただの怠け者で、全然いいママじゃないって」

子どもの言葉は、いつも人の心を刺すものだった。

節美は、十ヶ月もお腹の中で育てて産んだ自分の子を見つめた。

かつては自分の首に抱きついて「大きくなったらママを守るよ!」と笑ってくれた子が、今は、こんなふうになってしまった。

節美は乾いた笑みを浮かべた。

「貴志......ママが具合悪いの、見てわからないの?」

貴志はようやく、彼女の顔色に気づいた。

眉をひそめたが、その目に浮かぶのは廷悟と同じような冷たさだった。

心配ではなく、苛立ちだけが滲んでいる。

「バカだな。なんでこんなときに体調崩すの?健康管理もできないなんて、ママ失格だよ」

そう言い放って、貴志はランドセルを背負って出て行った。

節美はドアの前に立ったまま、目が回るような感覚に襲われ、ドア枠にもたれてしゃがみ込んだ。

バタンと、音を立てて玄関のドアが閉められた。

胸を押さえた節美は、広がる苦しみに静かに耐えた。

安心して、貴志.....もうすぐ、私はあなたのママじゃなくなるんだから。

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  • 心臓をささげてから、新しい人生へ   第7話

    その後、節美の言葉は次第に少なくなった。毎日、原稿を描いたり、ただ窓の外をぼんやりと眺めたりするだけだった。残りの10日間、ただ日々を数えているように過ごして、彼女は目の前のすべてに対してもう何の未練も感じなくなっていた。廷悟は仕事をすべて放っていて、節美をあちこちで検査を受けさせた。採血したり、薬を飲んだり、散々注射したりして、節美は一切声を上げなかった。その無言の沈黙が、彼の心をさらに不安にさせた。月美の病室を通りかかる父は、複雑な顔で、問い詰めてきた。「いったい何がしたいんだ?風邪ごときでそんなに検査が必要なのか?」「まさか、わざとそんなことをして、みんな

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