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7.もう一度、歩き出す前に④

Penulis: 鷹槻れん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-11 14:02:19

ホームセンターに着くと、入口の脇に犬を乗せられるショッピングカートがいくつか並んでいた。四方に囲いがあって、台座も広い。プラスティックの箱が設置されていて中にはペットシーツが敷かれていた。箱はうなぎでも十分乗れる大きさだった。

上段の空いたスペースと、下段に買い物したものを乗せられるようになっていた。

梅本先生は迷わず下段に買い物かごを乗せると、

「ほら、乗っとけ」

「わふっ」

10キロちょっとある中型犬のうなぎを軽々と抱き上げ、あっという間にカートへ乗せてしまう。箱の中はそんなに窮屈ではないみたいで、うなちゃんは楽しそうに尻尾を振りながら良い子にしてお座りした。

「うなちゃん」

カートのそばへ呆然と立ち尽くしたままの私を、うなちゃんがカート上から鼻先を前に突き出すようにして見つめてくる。そんなうなぎが可愛くて、私は思わず笑みがこぼれてしまった。

うなぎの元気さにつられるように、私の胸の奥の重たいものも少しだけ軽くなった気がした。

梅本先生はちょっぴりふらつく私を気遣いながらも、うなぎが乗る大きなカートを上手に取り回しながら、迷わずペット用品売り場へ直行する。私はそんな彼のあとを、はぐれないように歩いた。

梅本先生が押すカートの中、目の前を目まぐるしく移ろっていく商品棚にうなちゃんは興味津々みたい。

「飯、こいつがいつも食べてるの、どれ?」

聞かれて、辺りをキョロキョロと見回してから、柴犬の写真が目印になった赤いパッケージを指さすと「『ピュアわん』か。……んー、一番でっかいのは……これだな」

「こ、こんな大きなの……」

いつもは徒歩で持ち帰るのが大変で、3キロ入りを買うのが関の山。なのに梅本先生は迷わず10キロ入りをカートへ入れてしまう。

「中型犬だぞ。減るの、早いだろ。車で来てるんだ、遠慮すんな」

ぶっきらぼうな言い方なのに、どこか〝私の体調も気遣ってくれている〟響きがあって、なんだか恥ずかしくなる。

「あの……私がいつも大きなの買えないでいたの……」

「あ? 桃瀬先生、車持ってねぇだろ? 話聞く限りじゃぁ旦那が桃瀬先生の買い物にいちいち車、出してくれてたとも思えねーなって思っただけだ」

「ご、ごめんなさい……」

なんだか気遣わせてしまったことが申し訳なくてしゅんとしたら「俺さ、謝られるより礼言われ
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    梅本先生は私の手を引いて、公園横の小さな駐車場へ向かった。 梅本先生は迷わず一台の黒いSUV車に近付くと、ロックを解除する。車内はまだほんのりと温かくて、エンジンを切ってそれほど経っていないことがうかがえた。 (……きっとホテルからこっちへ直行してくださったんだ) 普段梅本先生がこの車に乗っておられるのを見たことはない。でも、昨日アパートの駐車場にこれと同じ車が停まっているのを見かけたのを覚えている。きっと昨日ホテルまで行くのに乗って行かれていたんだと思う。 私が『今からマンションに戻って、夫と話し合いをしてきます』と送った短いメッセージを見て、心配してすぐに駆けつけてくださったんだと分かって、胸の奥がじんと熱くなった。 「乗って? このままホームセンターへ行こう」 相変わらず飾り気のない、用件のみを伝えるような物言い。向けられる表情も強面さんだからなんだか怖い。でも、その実、彼がとっても優しいことを私は知っているから……素直に「はい」とうなずくことができた。 後部のスライドドアを開けるなり、うなぎが何のためらいもなく車内へ乗り込んだ。 「あっ」 そのままシートへお座りするうなちゃんを見て慌てたら、「毛のことなら気にしなくていい。あとで掃除すりゃいいだけだ」って、優しすぎませんか? 孝夫さんは決して愛車にうなちゃんを乗せようとはしなかった。 うなちゃんが体調を崩して大変な時ですら、「どうしてもってんならタクシーで行け」と冷たくあしらわれたのを覚えている。 結局一〇キロ以上あるうなちゃんを抱いて、私は歩いて動物病院へ行ったのだ。 移動用ケージを買っていたならば、あるいはタクシーを拾うこともできたのかもしれない。 でも、孝夫さんから生活するのにギリギリのお金しか渡されていなかった私には、それを買うゆとりがなかった……。 (そういえば……お給料の振込先、変えてもらわなきゃ) 今のままでは孝夫さんが管理している〝私名義〟の通帳へお給料が振り込まれてしまう。 私に任せるのは不安だから、と結婚してからずっと……お金は全て孝夫さんに握られていた。 考えてみれば、それだっておかしな話だよね? どうして私、今まで何も思わず彼に従っていたんだろう? せめて自分が稼いだお金くらいは、自分で管理すべき

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