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2.黙っていれば、愛されると思っていた①

Auteur: 鷹槻れん
last update Dernière mise à jour: 2025-06-07 07:41:13

 食卓に敷いたランチョンマットの上へ炊きたてのごはんを中心に、右に味噌汁、左に納豆。奥に焼き鮭と卵焼き、ほうれん草のおひたしを並べ、漬物と湯のみを添える。

「よしっ」

 つぶやいて箸置きの上に箸を揃えたところで、足音が近づいてきた。

 夫の杉岡孝夫(すぎおか たかお)だ。

 今日はいつになく険しい顔をしている気がするから、怒らせないようにしなきゃ、と気持ちを引き締める。

 愛犬うなぎは孝夫さんがいる間は、彼が嫌がるので、ケージ内で大人しくしてもらっている。

 彼が出掛けたら束の間だけど、私が出勤するまでの間は狭いケージから出して自由にさせてあげよう。

 ちらりとうなちゃんに視線を投げかけて、私はそう決意した。

***

 私が用意した朝食を、スマホ片手に不機嫌そうに食べ終えた孝夫さんが、

「穂乃(ほの)、お前今日は残業の予定あんの?」

 探るような目で私を見詰めてきた。

 どんなに手間をかけてご飯を作っても、「美味しい」なんて言葉は結婚して二年、一度も言ってもらったことがない。

 お付き合いしているときには笑顔で、「穂乃は家庭的で最高だね。きっといいお嫁さんになれるよ」って褒めてくれていたのに……。

 でも、だからといって私が作ったものに無関心か? といえばそんなことはなくて……。おかずが三品以下だと叱られてしまうから、私は時間を見つけては冷凍庫に常備菜を蓄えて、臨機応変にやりくりするようにしているの。

 急須から注ぎ終えたばかりの緑茶を彼に差し出しながら、「いつも通りだよ」と答えたら、孝夫さんにチッと舌打ちされてしまった。

 ――え? 何で今、舌打ちされたの? 私、答え、間違えた?

「なぁ、穂乃。俺は今、残業の有無を聞いたんだけど? お前の返しってホント、頭悪い女の典型的パターンだよな。返事は要点を的確にって……社会人なら分かんだろ。お前それでよく勤め先、クビにならねぇな」

 小馬鹿にしたように鼻で笑われて、せっかくの清々しい一日の始まりが台無しだ。私は自分の中で心がシュゥゥゥーッと音を立ててしぼんでいくのを感じた。

 今日から新年度のスタート。異動のなかった私にはそんなに大きな環境変化はないけれど、それでも「初めまして」の先生方が沢山いらっしゃる。

 どんな先生と出会えるかな? 上手くお付き合いしていけるかな? そんな風にわくわくソワソワしていたのにな? 朝からこんなの、凄く残念だよ、孝夫さん。

「……ごめんなさい。残業はありません」

 家から徒歩圏内にある公立の小学校で学校図書館司書をしている私には、残業なんて滅多にない。

 そのことは孝夫さんだって知っているはずなのに、あなたの方こそ察しが悪すぎやしませんか?

 ふとそんなことを思ったけれど、口に出せるわけがない。

「お前さぁ、家事とかそういうのが得意だからお情けで家政婦替わり……離婚せずにいてやってるっての、理解してる? 汚ねぇー犬はいつまでも処理しねぇし、お前自身の容姿もパッとしねぇ。ダセェ眼鏡は野暮ったいままだし、たまに温情で抱いてやっても痛がるばっかで反応悪いマグロとか。ホント俺、嫁選び、失敗したと思うわぁー」

 孝夫さん、会社で難しい案件でも動いているのかな?

 出勤前だというのに、いつになく当たりが強い……。

 孝夫さんの私いびりは今に始まったことではないけれど、ここ最近は拍車が掛かってきた気がする。

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