LOGINうなぎのことも快く思っていないみたいに保健所へ連れて行けってことあるごとに睨み付けてくるし、これ以上可愛いうなちゃんに矛先が向いては大変。だから私、色んなものをグッと飲み込んで、黙って彼の暴言をただただ従順に浴び続けるの。
結婚して二年。うなちゃんがちっとも孝夫さんに懐かないのも原因だろうな? 孝夫さんの〝嫌い〟がうなちゃんにも伝わって、うなちゃんも[あたちも嫌い]の悪循環に陥っているんだと思う。 うなちゃんは私が大学卒業間近な時期に、アパート近くの公園に捨て子されているのを拾った子。 先日強面(こわもて)極道さんの手袋を拾ったあの公園だ。 (そういえばアレから結局彼とは会えず終いで、手袋、返せてないや……) そんなことを思い出しながら、私は昔のことに心を飛ばす。 うなちゃんと出会う少し前――。大学卒業を目前に両親を交通事故で一気に亡くしたばかりだった私は、公園でひとり寂しそうに身体を震わせる子犬に、自分を重ねた。 父方、母方ともにみんな鬼籍の人。一応お付き合いしている人はいたけれど、エリート商社マンの彼は、仕事で忙しくて滅多に会えない。 一人っ子で兄弟姉妹もいない、天涯孤独だった私に、うなちゃんは到底手放すことが出来ない大切な温もりに感じられた。 当時住んでいたアパートはペット不可で、子犬を拾った手前、どこへ引っ越そう? お金なんてないのに……。 そう途方に暮れていた私に手を差し伸べてくれたのが、当時お付き合いしていた商社マンの彼氏――孝夫さんだった。 『穂乃(ほの)は身内にもみんな死なれて、一人ぼっちだ。行くところがないならその犬と一緒に俺ん家に来ればいい。うちはペットOKだし、いっそそのまま結婚しちまえば、一石二鳥だろ?』 私より二歳年上。 超難関大学『東方大学』経済学部を首席で卒業した彼は、その当時、すでに今住んでいるこのマンションに居を構えて、大企業の外資系総合商社『Nexion Holdings(ネクシオン・ホールディングス)』でバリバリ働いていた。 そんな彼が、たまたま合コンで知り合った、さしてレベルの高くない女子大の、日本文学科在籍の私を恋人として選んでくれた理由は、今でもよく分からない。ましてや結婚しようと言ってくれたのも不思議でたまらないと今でも思っている。 ただ、お付き合いしている当初から、私が男性を立てるのが上手で従順なこと、家事能力が高いことをすごく評価されていたように思う。 仕事柄海外出張が多い彼は、『ちょうど俺も家のことをしてくれる人が欲しいと思っていたところだし、穂乃が大学を卒業したら籍を入れよう』と、うなちゃん込みでの同居を申し出てくれた。 そんな孝夫さんは今現在、二十六歳という若さで、海外営業部のアカウントマネージャーを任されるまでになっている。 きっと、私なんかと違ってすごくすごく優秀な人なんだと思う。 私には詳しいことは分からないけれど、孝夫さんは大手クライアントとの契約交渉やフォローアップを任されるポジションにいて、成約率や評価次第で昇進ルートが左右される、いわば〝実力主義の中堅エース〟らしい。 いかにも経験年数や年齢度外視の、超・実力主義の会社『Nexion Holdings(ネクシオン・ホールディングス)』といった感じだ。 孝夫さんの部署の顧客には様々な国の、色んな人がいらっしゃるだろうから、私には想像もつかないくらい毎日ストレスを抱えて仕事をしているんだと思う。「……マジか」 「一臣さんのせいじゃありません」 「実は途中で受け持ちクラスの保護者から電話が入ってさ。そこであの人と別れなきゃなんなかったんだ。さすがに校長か教頭にあいさつして帰ってくれたとばかり思ってたんだけど……図書室へ行ってたって知ってたら俺も後を追いかけたのに。気付かなくてすまん」 一臣さんは、やたら申し訳なさそうな顔をして頭を下げてくる。 それは、彼女が私に敵意を持っていることを知っているの前提みたいな態度に思えて――。 私はギュッと拳を握りしめた。「で?」 こちらを見つめる一臣さんの眉間に、わずかに皺が寄る。 「なんか変なこと言われたんだよな、きっと」 そんな一臣さんに、私は意を決して口を開く。「あの……、竹中さんって、一臣さんの……元恋人、なんですか?」 一瞬。 ほんの一瞬、一臣さんが黙った。 でも、否定はしなかった。 やがて、ふうっと短く息を吐く。「……ああ」 分かっていた答えだったけれど、肯定された途端、胸の奥がちくりと痛んだ。「確かに昔、ほんの一時期付き合ってたことがある」 「そう、……なんです、ね」 「……あの人が言ったのか?」 「はい」 「余計なことを……」 一臣さんが面倒くさそうに髪を掻く。「黙ってて悪かった」 「いえ!」 思わず強く否定した。「謝らないでください。そんなの、私に謝ることじゃないです」 「でも」 「本当に大丈夫です」 そこは、ちゃんと伝えておきたかった。「私にだって孝夫さんとのことがありますし。一臣さんに昔付き合っていた人がいたからって、それをどうこう言うつもりはありません」 ――言える立場でもありませんし。 その一言は寸前のところでグッと喉の奥に押し込めた。「穂乃」 「本当です」 竹中さんが元恋人だったことは、苦しい。 嫉妬していないと言った
「ただいまー。……って、うなぎ! お前、今日ちょっとテンション高くね!?」 そんな声が聞こえてきて、思わず笑ってしまう。(……一臣さんだ) たったそれだけのことで、ずっと胸の中に居座っていた重たいものが、ほんの少しだけ軽くなった気がした。「お疲れ様、一臣さん」 キッチンから顔を出す。「おう。ただいま、穂乃」 ――穂乃。 いつものように名前を呼ばれる。 学校では決して呼ばれない、私の名前。「あー、すっげぇいい匂いする」「今日は生姜焼きです」「マジ? メニュー聞いた途端、俄然腹減ってきた」「もう少しでできますよ」「なんか手伝う?」「大丈夫です。一臣さん、着替えてきてください」「ん。ありがとう。じゃあそうさせてもらう」 一臣さんが自分の部屋へ向かっていく。 その後ろ姿を見送りながら、私は小さく息を吐いた。(……いつも通り) 何も変わらない。 家へ帰れば、一臣さんはいつもの一臣さんで……私を穂乃と呼んでくれる。 そして私は、ここで一臣さんの帰りを待っている。 関係は曖昧だけど、恋人に近い距離感なんじゃないかと思いたい。 竹中さんが一臣さんの昔をどれだけ知っていたとしても、今、一臣さんが〝ただいま〟と言って帰ってくる場所には、私がいるのだから。 そう思ったら、ほんの少しだけ、胸が温かくなった。***「ごちそうさま。今日の飯も最高に美味かった」「お粗末さまでした」「いや、マジで穂乃が作ってくれる料理、どれも美味いし……今日の生姜焼きもすげぇ好きな味だった!」「本当ですか?」「おう。なんか穂乃と住むようになってから飯進んで体重やべぇかも」「ふふっ、それは困りましたね」「大丈夫。その分、しっかり運動するようにするから」「はい」「あー、ところで今日、うなぎの散歩は?」「残念ながらもう済ませました」「マジかぁぁぁ」 一臣さんがガクッとうなだれて、「じゃあ、ちょっとしたら一人で走ってくるわ」とつぶやいた。「あの……ご飯は今まで通り作っても大丈夫ですか?」 一応問うたら、「当然」と即答される。「じゃあ、また作りますね」「有難う。俺も早く帰れた日は手伝うから」「はい。よろしくお願いします」 言いながらも、一臣さんはどんなに遅く帰って来た日も、洗い物はしてくださる。 孝夫さんと暮らしていたころは体調不良
担任を持っている一臣さんは、子どもたちが下校したからといってすぐに帰れるわけではない。むしろ児童らが帰ったあとだからこそできる仕事も多いし、今日は保護者からの電話も入っていたと聞いた。(きっといつもより遅いんだろうな) そう思うと、なんだか不安に押しつぶされそうになる。「くぅーん……」 うなちゃんにペロリと頬を舐められて、私はハッとした。「ごめんね、ぼーっとしてた」 気持ちを切り替えるように、わざと明るめに声を出して立ち上がると、私はバッグを所定の位置へ置きに行く。 代わりにうなちゃんのお散歩セットを手に振り返って、 「よし。うなちゃん、お散歩行こっか」 と微笑み掛けた。「わんっ!」 〝お散歩〟という言葉はしっかり分かっているらしい。 途端うなぎが嬉しそうに尻尾を振りながら玄関へ駆けて行って、〝早く早く!〟と急かすみたいに玄関扉へ前足を掛けてから、私を振り返った。「ふふっ。すぐ行くから待って」 急かすうなぎに笑いながら、リードとハーネスを手に取る。 ブンブン振られる尻尾を横目に、私はうなちゃんによく似合う明るい色のハーネスを彼女に装着して外へ出た。「暑いね」 九月に入ったとはいえ、夕方の空気にはまだ夏の名残があった。 それでも真夏の頃に比べれば、日が傾くのも随分早くなった気がする。 暑い時分は陽が落ちてからお散歩へ行くようにしていたから、夕飯づくりの時間とお散歩の時間が今とは逆転していた。「うなちゃん、また寄り道?」 いつもの散歩道。 うなぎはあちこち匂いを嗅いでは立ち止まり、時々思い出したように私の顔を見上げる。「ふふっ。楽しいね」 無邪気なうなぎを見ていると、学校を出てからずっと胸の奥に引っ掛かっていたものが、ほんの少しだけ薄らいでいく気がした。(……今は考えるの、やめよう) 一臣さんが帰ってきたら、ちゃんと顔を見て話せばいい。 そう思いな
それからの私は、どこか上の空。仕事をしていても、何度も同じところで作業の手を止めてしまっていた。『桃瀬先生が話すに値する相手だと思えば、彼も話してくれると思いますし』 忘れようとしても、竹中さんの言葉が頭から離れてくれない。(話すに値する相手……) そんな値踏みするような目を、一臣さんから向けられたことなんて一度もない。 あくまでも竹中さんが勝手に言っただけだ。 そんなの、分かってる。分かっているのに。 私は一臣さんの弟さんのことを、――もっと言えばご家族のことを何も知らなかった。 弟さんがいることも、今日竹中さんから聞かされて初めて知ったくらいだ。(私には話しても無駄だと思われてる?) 親しくなって、それほど経っていないのだ。時期尚早なだけかもしれない。 でも……。 さっきから同じことをぐるぐると考えては、自分を慰めるように教えてもらえていない理由を探している。 現に私だって、一臣さんに自分のことを全て話しているわけじゃない。 家族構成や、孝夫さんとの馴れ初め。 考えてみれば、うなちゃんとの出会いだって、話したりしていないもの。 お見合いで出会ったわけでもない限り、そういうのは少しずつ分かり合っていくものだと思う。(それに……) 誰にだって、人に話したくないことのひとつやふたつ、きっとあるはずだもの。 考えてみれば竹中さんの言い方では、弟さんのことは一臣さんにとって、言いづらい部類のことみたいに聞こえた。 だとしたら尚更。そんなことを、まだ恋人ですらない私が〝教えてほしい〟なんて思うこと自体おこがましい話なのかも?(でも……あんなふうに言うってことは……竹中さんは一臣さんからそういう話をしてもらっていたってこと……だよね?) そもそも、竹中さんと一臣さんはどのくらいの期間、お付き合いなさっていたんだろう? 付き合い始めてどのくらいで、彼から〝話すに値する相手〟だと思われたのかな……。(私は……) 一臣さんと私は、まだちゃんとお付き合いしているわけではない。 下の名前で呼び合って、触れるか触れないかの軽いキスを交わして。一線を越えそうにもなったけれど、私が孝夫さんにされたことを思い出して怖がったのに気付いた一臣さんが、待ってくれた。 もしあのまま身体の関係があったとして……『付き合おう』って言われていない間
(私にだって、孝夫さんがいたんだもの) 結婚して、夫婦として一緒に暮らした人がいた。 一臣さんにだけ過去があってはいけないなんて、そんな勝手なことを思うつもりはない。 分かっている。 そんなこと、ちゃんと分かっているのに……。 それでも、胸が痛かった。(……嫌だ) 目の前にいるこの人が、一臣さんの恋人だった。 私の知らない一臣さんを知っている。 〝昔みたいに〟と名前を呼べるくらい近いところにいた。 その事実が、どうしようもなく苦しかった。「……桃瀬先生? いかがなさいました?」 「あ、その……なんでもありません。すみません」 「いえ、大丈夫ですよ」 竹中さんは、私の顔を覗き込むようにして笑う。 「……でも、今ので確信しました。桃瀬先生はやっぱり好きなんですね。一臣のこと」 「……っ!」 否定しなくちゃ。 ここは学校だ。 私は一臣さんとはただの同僚で――。 そう言わなきゃって思うのに、言葉が出てこなかった。 その沈黙をどう受け取ったのか、竹中さんの目がほんの少しだけ細くなる。「ところで一臣は、あなたに話したんですか?」 「……え?」 「ほら。弟さんのこと」 弟さんの、こと……? 思いも寄らない言葉に、私は瞬きをした。 「それって、どういう意味……ですか?」 私がそう尋ねた瞬間、竹中さんの表情が変わった。 そうして次に口を開いた時にはどこか勝ち誇ったように、 「……そう、まだ話してないんですね」 意味深長に微笑んでみせる。 「だから……何のこと……ですか?」 その表情が気になって思わず聞き返すと、竹中さんはすぐには答えず、ただ私をじっと見つめてきた。 同情するような、それでいて、どこか見下ろすような、そんな目で見られて、私はとても居心地が悪くなってしまう。「教えてあげたいのは山々だけど……知らないのは、一臣が話していないからってことでしょう? だったら私から言うことじゃないと思うの」 「それはそう、です、けど……」 「そんなに気になるなら一臣に直接聞いてみたらどうですか?」 にっこりと笑う。 「桃瀬先生が話すに値する相手だと思えば、彼も話してくれると思いますし」 綺麗な笑顔だった。 なのに、背筋がぞくりとした。「ちなみに私は……一臣のことは全部知って
ふたりが図書室を出て行ったあと、私は気持ちを切り替えようと新しく届いた本の受け入れ作業へ戻った。 パソコンへ書誌情報を取り込み、分類を確認して、バーコードと背ラベルを印刷する。 いつもなら、こういう細かい作業をしていると自然と集中できるのに。(……昔みたいに、か) 気を抜くと、すぐに竹中さんの言葉が蘇ってくる。「……もう」 小さく頭を振った。 仕事中だ。 余計なことを考えちゃダメ。 それに、一臣さんは明らかに嫌がっていた。 竹中さんに触れられた時だって、すぐに手を振りほどいていたし。〝……穂乃、また後で〟 最後には、私にそう伝えてくれた。(大丈夫) 何が大丈夫なのか、自分でもよく分からないまま、そう言い聞かせる。 私は印刷されたバーコードと背ラベルを一枚ずつ確認しながら、新しい本へ貼り付けていった。「桃瀬先生」「はい」 不意に入口から声を掛けられ、顔を上げる。「――あ」 そこに立っていたのは、ついさっき一臣さんと図書室を出ていったはずの竹中さんだった。「お仕事中にごめんなさいね」「い、いえ」 慌てて手を止める。 竹中さんの背後へ視線を凝らしても、一臣さんの姿はない。(竹中さん、一人……?)「学校の中はもう見て回られたんですか?」「ええ。おかげさまで」 竹中さんはにこやかに答えながら、こちらへ歩いてくる。「梅本先生は……?」 聞いてしまってから、なぜ私はこんなことを気にしているんだろうと思った。「ああ。一臣?」 わざとらしいほど自然に彼の名前を口にされて、胸がまた小さくざわめく。「保護者からの電話が入ったとかで、途中で別れました」「そう、ですか」「本当に相変わらず真面目なのよね。昔から」 また、〝昔から〟。 竹中さんは私の目の前まで来ると、カウンターに積まれた本へ視線を落とした。「大変そうですね」「二学期は新しい本の受け入れも多いので」「そうなんですね」 穏やかな会話。 さっきまでなら、何も疑わずに笑っていられたはずなのに。 今は竹中さんの言葉ひとつひとつに、何か別の意味があるような気がしてしまう。「あの」「はい?」「桃瀬先生は、一臣と仲がいいんですね」「えっ」 突然の言葉に、手が止まった。「そ、そんな……」「あら? 違うんで
「おはようございます」 朝、夫の孝夫さんと色々あったことは極力考えないようにして、私は気持ちを切り替えるように努めて明るい声とともに、勤め先『市立青葉小学校』職員室のドアをくぐった。 「おはようございます、〝桃瀬〟先生」 前年度から異動なしの、顔馴染みの先生方数名が、私を見て挨拶を返して下さる。 私は二年前に結婚して苗字が【杉岡】になっているけれど、職場では旧姓の【桃瀬】のまま仕事をさせて頂いているの。 子供達を惑わせるのが嫌だったと言えば聞こえがいいけれど、単に私が〝杉
食卓に敷いたランチョンマットの上へ炊きたてのごはんを中心に、右に味噌汁、左に納豆。奥に焼き鮭と卵焼き、ほうれん草のおひたしを並べ、漬物と湯のみを添える。「よしっ」 つぶやいて箸置きの上に箸を揃えたところで、足音が近づいてきた。 夫の杉岡孝夫(すぎおか たかお)だ。 今日はいつになく険しい顔をしている気がするから、怒らせないようにしなきゃ、と気持ちを引き締める。 愛犬うなぎは孝夫さんがいる間は、彼が嫌がるので、ケージ内で大人しくしてもらっている。 彼が出掛けたら束の間だけど、私が出勤するまでの間は狭いケージから出して自由にさせてあげよう。 ちらりとうなちゃんに視線を投げかけて
だけどそう思ったのは、目の前の彼――極道さん?――も同様だったらしい。 どすの利いた声で「はぁ? 何言ってんだよ、あんた」と吐き捨てられ、ギロリと睨まれた私は、今度こそ「ヒィッ!」と声を上げて後ずさった。 「す、すみません! わ、私、闇バイトなんて知りません! 気のせいでした! 忘れてください!」 そうでした! 確か例のバイト、片手袋は誰にも気付かれず、スマートに落とさないといけなかったはずですし、落としたことを誰かに気付かれただけならまだしも、バイトでしたことだとバレたらきっと大事に違いないのです! 見られたらどうなるのかは分からないですけど、見た側が「見ぃ〜たぁ〜なぁ〜?」というお
「あっ。うなちゃん、ダメだよっ」 近所の大きな運動公園をお散歩中、私たちを小走りに追い越して行った男性が、黒いものを落とした。 それを愛犬〝うなぎ〟がすかさずパクッと咥えるから、私は慌てて彼女をたしなめる。 うなぎはビーグルみたいな毛色をした、体重一〇キロちょっとの中型犬ミックスです。耳は柴犬みたいにピンと天を突いた立派な立ち耳で、目の色は虹彩が色素薄めのアンバー。 だからかな? なんとなく目つきが鋭い強面さんに見えてしまうから、しょっちゅう男の子に間違われてしまうの。 だけど残念! うちのうなぎは正真正銘の、可愛い可愛い女の子です! うなぎは、目の上にチョンチョンと乗







