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第6話

Auteur: アイスクリーム
寛人との腐れ縁を断ち切り、結月は離れる準備をし始めた。

結月は容坂には家族がいないから、離れる前に家を売る必要がある。

両親が残した家のほかに、家はもう一つあった。それは寛人からもらった結婚した後に住む新居で、二人で所有権を持っている。

結月は寛人と相談して、その不動産権利書から自分の名義を消してしまおうと考えた。これから寛人が再婚しても面倒なことを避けることができる。

結月はスマホを取り出して、寛人にメッセージを送った。

メッセージを送って随分時間がたったが、ずっと返事がない。

結月が容坂にいる時間はもう残り少ない。遠くから戻ってきてこの件に対処したくないから、結月は寛人の近況を知って、直接彼に会いに行くために、彼のインスタをチェックした。

しかしインスタをタップすると、結月はブロックされている表示があらわれた。

結月は少しモヤモヤしていた。薫を通して寛人と連絡を取りたかったが、寛人はあの夜からずっと家に帰っていないことがわかった。

結月は深く息を吸って、澪にメッセージを送った。【寛人と大事な話があるから、私のメッセージに返事するように寛人に伝えてちょうだい】

すると澪はすぐにある住所を送ってきた。

それは寛人の持っているリゾート山荘で、二人の秘密の場所でもある。

友達も遊びに行きたいと言ったことがあるが、寛人はあそこは結月との二人だけの場所で、二人以外誰も足を踏み入れてはいけないと言って拒絶したのだ。

それが今、澪も行けるようになったのか。

あそこはもう二人だけの秘密の場所ではなくなったのだ。

結月は無理やりその思考を停止させて、車を出し、そのリゾート山荘へと向かった。

ここは静かな場所だったが、今は非常に賑やかで、見知らぬ人もたくさんいる。

結月が小道に沿って中に入ると、ちょうど澪が片膝をついて寛人の顔にキスするのが見えた。「私と友達をここに誘ってくれてありがとうね」

寛人は頭を傾げてそれを避けようと思っていたが、結月を見た瞬間にその動きを止めた。

澪が寛人の顔にキスするのを見た瞬間、ふと、ここを自分好みに内装してくれる寛人に感謝の気持ちを伝えるために、結月はここで初めて寛人にキスしたことを思い出した。

それはお互いに人生で初めてのキスだった。それから寛人はキスの心地よさを知り、結月を喜ばせるたびにそのご褒美として、しつこく結月からのキスを求めた。

この邸宅にある草花はみんな、二人の恋を見届けてきた。

そして今も、二人の最後の縁が断ち切られるのを見届けることになるだろう。

結月は黙り込んでそのまま立っていた。二人が離れたのを見て、結月は書類を寛人に渡した。「私たちの新居はあなたが買ったもの。私たちが別れたから、あなたに返すべきだわ。これを読んで、もしあなたがそうしたくないなら、私が今の不動産価格で買うわ」

寛人は冷たい視線で結月を見つめた。骨の鳴る音が聞こえるほど、書類を握り締める手に力を入れた。

しばらくして、彼は口を開いた。「ほかに用事はあるか?」

結月は二秒くらい考えた。「まだここに残してるものがあるから、今日それを全部一緒に持って行きたいわ」

寛人の表情はさらに険悪になっていった。

しかしその時、澪が口に手を当てて、驚いて叫んだ。「まあ、あの部屋にあるものはもういらないと思って、全部使用人に物置小屋に移させたのよ。一緒に取りに行こうか?」

結月は頷いた。「お願いするわ」

寛人の肩に手をついている澪は立ち上がろうとしたが、その瞬間に寛人に腕を捕まえられた。「俺も一緒に行く」

澪は顔が赤くなって、小さい声で呟いた。「もう、甘えん坊なんだから」

結月はそれを見なかったことにして、前だけを見て物置小屋へと向かった。

澪は結月のものを全部一番小さい物置小屋に置いていた。空間が狭くて、二人しか入れない。

寛人はドアの外に立ち、結月が自分のものを選び取るのを横目で見ていた。

澪は腰をかがめて結月を助けるふりをして、結月に近づき、二人しか聞こえない声で言った。「私がこんなにもたくさんの言い訳をして寛人の注意を引いたのに、あんたはまだ諦め切れてないの?

それなら、私が助けてやるわよ」

結月に反応する時間を与えず、澪は「不注意」で後ろにある棚にぶつかった。すると一番上にある箱がその衝撃で、二人に向かって落ちてきた。

その瞬間、寛人の目はぴくっと痙攣した。彼はダッシュで物置小屋に入り、迷わずに澪を自分の懐に引っ張った!

重い箱が澪の肩を掠めて、結月の肩に激しくぶつかった。

そして結月はふらついて、床に転んでしまった。

しかし、寛人はただ眉をひそめて結月を見るだけで、すぐ掠り傷を負った澪を抱き上げて、彼女を病院に送るために慌てて車を探した。

結月は痛みで身動き一つできず、意識が朦朧となっていった。

気絶する前に、結月は思った。

時任寛人、あなたへの気持ちが冷めてよかったわ。

もう愛していないから、生死の境にあんたに捨てられても悲しくなんてない。

もう愛していないから、これ以上あんたに期待などしない。

澪が怪我をしたのを見て、澪の友人たちはみんな寛人を囲んで、一緒に澪を病院に送っていった。

そして結月が発見されたのは二日目の朝、使用人が掃除しに来た時だった。

使用人は何があったのか分からないが、結月のことは知っているから、救急車を呼んで、またすぐ寛人に電話した。「時任さん、伊東さんはひどい傷を負っていて、物置小屋に倒れていました。もう救急車を呼びましたが、時任さんは見に来られますか?」

寛人は答えなかった。

澪が小さい声で痛いと言ったのを聞いて、彼はやっとハッとして、冷たい声で言った。「救急車を呼んであるんなら、もう俺が行く必要はないだろう。もう俺とは関係ないんだから、俺がどうこうする必要もないだろう」

使用人はこれ以上なにも言えず、謝罪する言葉を言って、電話を切ろうとした。

するとそこへ澪が注意した。「本当に行ってみないの?伊東さんは物を整理していたから……」

澪の話を聞いて、寛人の声は更に冷たくなった。「そうだ、ちゃんと整理するんだ。あいつの物で俺の場所を汚すんじゃないぞ」

唇が青白くなった結月は小さい声で言った。「わかった」

結月も、結月のものも、寛人の世界からきれいに消え去る。

結月の傷はそこまでひどいものではなかった。

使用人は誰に連絡すればいいのかわからなくて、薫に連絡した。

薫はびっくりして、すぐに結月の世話をしに駆けつけて来た。

結月が起きた時、薫はちょうど廊下で寛人と電話をしていた。「この大馬鹿者!どこにいようがどうでもいいわ、まだ結月さんと仲直りがしたいなら、今すぐ戻って結月さんの面倒を見なさい!今回のチャンスを逃がしたら、結月さんは本当にあんたを許さないわよ!」

病室はあまりにも静かだから、寛人の吹き出す声まで結月の耳に届いた。「許さないからなんだ?婚約も解消したし、あいつが残してた物は全部持っていっただろ。あいつが死んでも俺が葬式に出る必要はないぞ」

薫は彼を叱ろうとしたが、寛人はすでに電話を切っていた。

薫がドアを押して部屋に入ると、起きている結月を見て、気まずそうに言った。「結月さん、寛人は……

結月さんもよく知ってるでしょう、寛人は怒りに任せて何だって口から出ちゃうのよ、だからあまり気にしないで」

薫の話を中断させるように、結月は頭を横に振った。

寛人の言った通りだ。

二人には何の関係もない。

これから、結月は寛人を自分の人生から完全に消すのだ。

薫が結月の表情を見て、二人にはもうなんの可能性もないとわかった。残念に思いながらも、結月の意見を尊重した。そして、一人の母親として、結月のために結婚前の準備をし始めた。

この日、薫はあるリストを結月に渡して、丁寧に言い聞かせた。「これらは全ておばさんが用意した嫁入り道具よ。結月さんは一人で遠いところに結婚するんだから、お金や不動産で身を守らないと。これらがあれば心強いでしょ」

結月は感動して、何度も大丈夫だと言った。

しかし、薫は結月の手を軽く叩いた。「あの時、芙美が私をあの小さい村から連れ出してくれなかったら、今日の私もいなかったわ。それに、寛人が結月さんに悪いことをしたことに変わりはないんだから。私も母親として償わないと。

京坂についたら、すぐに引き渡しの手続きを……」

その話の途中で、寛人がドアを押し開いて言った。「誰が京坂市に行くんだって?」
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