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81:賢王と薬草師

last update Date de publication: 2025-11-01 09:54:45

 アレクの戴冠から一年が過ぎた。

 王宮の評議の間では、アレクが大臣たちと重要政策について議論をしている。

 儀礼的な意味合いが強い玉座の間とは異なる、実務的な部屋だ。

 机に広げられた大きな地図を前に、大臣たちが次々と報告を行った。

 これまでに多くの議論が交わされて、今日の議題は、先の戦乱で荒廃した北の穀倉地帯の復興についてだった。

「陛下、北の復興には莫大な資金が必要です。一時的にでも、商業都市から税を徴収するのが妥当でございましょう」

 財務大臣が言う。他の臣下たちは頷いたが、アレクは首を横に振った。

「ならぬ。一つの傷を癒すために、別の場所に新たな傷を作るのは愚策だ。各地の商業都市は、前王ガーランドに不満を持つ者が多かった。それを俺が悪法を撤廃すると約束して、助力を取り付けたのだ。ここで必要以上の税を課せば、彼らの心が離れていくだろう」

 彼は立ち上がり、地図の前に立った。脳裏には、森でエリアーリアから教わった言葉が響いている。『一つの木だけでなく、森全体を見よ。森の生命

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  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   09:森の歌声2

     この日から、エリアーリアはアレクを連れて森を歩くのが日課になった。 エリアーリアは森の様々な知識を彼に教えた。食べられる草や木の実、きのこ。毒のあるもの。薬草になるハーブの見分け方。 特殊な性能を持つ樹木の樹皮や、その他の素材になり得る植物たちなど。 森の獣たちの習性に、天候が変わる兆しの読み方。 木々を渡る風の魔力の感じ方。「アレク、あれを見なさい」 エリアーリアが指さした先には、一本の古いミズナラの木がある。古い木はあちこち傷ついて、もう枯れかけていた。「あの木はもう寿命を迎えるけれど、

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-17
  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   08:森の歌声

    (このままではいけない。ただでさえ魔女の禁忌に触れているのに) こみ上げる感情を押し殺すために、エリアーリアはわざと冷たく言った。「戯言はそこまでにして。勘違いしないで。私はあなたを助けるけれど、それだけ。傷が癒えれば、あなたはただの他人よ」 顔を背けたまま鋭く言い放つ。 その言葉に、アレクの瞳が一瞬だけ悲しげな色を浮かべたのを、エリアーリアは気づかないふりをした。◇ あれから数週間が過ぎて、森は初夏の色合いを濃くしていた。 アレ

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-17
  • 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す   10:森の歌声3

     また別の日の午後。エリアーリアは普段使わない、丁寧に編まれた特別な籠を手に小屋を出た。 いつもより深く、古い魔力の濃い森の奥へと向かう。そこは獣道すらない、彼女だけが知る聖域への道だった。呪いを抑える薬に必要な、花を摘みに行くのだ。花は満月の日にのみ咲く、とても貴重なものである。 アレクの視線から解放され、純粋に森と一体になれるこの時間を、彼女は心の拠り所としていた。(少し、一人になりましょう。ほっとするわ) 小屋に残されたアレクは、彼女の普段と違う様子に強い好奇心を覚えていた。(どこへ行くんだろう? そういえばあ

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-17
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