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レオンとの打ち合わせ

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-05-25 14:46:13

レオンの部屋にいけば、案の定、既にレオンが待っていた。

「おはよう。アスカ」

隣のアスナのことは完全に無視か。

「おはよう、レオン。お前のお陰でアスカと共に歩む未来を手に入れた。ありがとな!」

笑顔で煽りまくるアスナ。

お前その言い方はやめろ!間違ってはいないが語弊がありすぎだろう。分かっててやってるな?

一応レオンは俺の婚約者ということになっているんだ。

わざわざ喧嘩を売るんじゃない!間に挟まれる俺が面倒だろうが!

だが俺の予想に反し、レオンは売られた喧嘩を買わなかった。

アスナの存在をなきものとして俺にのみ話しかけ続けたのである。

「アスカ、昨日はありがとう。この10年しつこく私に憑りついていたゴミが、アスカのおかげでようやく取り除かれた。すっきりしたよ」

いや、買ってるな。俺に話しかける体でアスカに喧嘩を売り返してやがる。

なあ、アスカ、お前はゴミだとよ。

するとアスカは余裕の表情でこう切り返した。

「嫌だなあ、もう忘れたのか?そのゴミに身体を奪われかけたのは誰だっけ?

ってことは……ゴミに身体を奪われかけたお前の能力はゴミ以下、ということだよな?

アスカのことはこの俺に任せて、負け犬はさっさとアスカの人生から消えてくれていいんだぜ?」

「犬というのなら君のほうでしょう?アスカの忠犬、いや下僕なのですから。

私は婚約者、パートナーです。どちらの立場が上なのか、理解できませんか?

ああ、駄犬には理解が難しいのかな?」

「身分にものを言わせて婚約者になったやつはいうことが違うぜ。みじめだなあ!

俺は実力でアスカの隣を勝ち取ったぜ?アスカとは生涯離れられない特別な仲なんだよ!」

笑顔の舌戦だ。お互いになかなかうまいことを言う。

同じ顔で言いあっているのはなかなかシュールだな。

黒と金、さながら天使と悪魔の対決だ。言っている内容はしょうもないのだが。

どこまでこのくだらない言い合いをするのだろうか。

面倒だと思っていたのに、ちょっと面白くなってしまった。

俺はあえて口を挟まず大人しくこの舌戦を観賞することにした。

さりげなく距離を取り、壁に寄りかかって足を汲む。

さあ、存分にやってくれ!

ワクワクしながら見守っていると、二人の視線が俺に向く。

「……アスカ?」

「……君、もしかして楽しんでない?」

「いや、気のせいだ!俺のことは気にせず、存分にやってくれ!」

珍しく
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