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悪魔と過ごす休日

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-08-10 08:40:27

土曜日の朝、午前七時。

総一は枕元の目覚ましに起こされ、のろのろとベッドから起き上がった。

いつもなら学校があるから六時起きだが、今日は休日。

もう少し寝ていても良かったのに、なぜか早く目が覚めてしまった。

「……ん?」

ベッドの隣を見ると、リリムがいない。

昨日の夜、いつものように勝手に潜り込んできたはずなのに。

リビングに向かうと、キッチンから美味しそうな匂いが漂ってきた。

「おはよー」

振り向くと、エプロン姿のリリムが鍋を覗き込んでいる。

髪は一つに結び、頬にはうっすらと汗が浮かんでいた。

「……お前、料理してるのか?」

「してるって言うか、挑戦してるって言うか……」

リリムの手元を見ると、卵焼きらしきものがフライパンの上で黒く焦げている。

「おい、火つけすぎだろ」

「え? でもレシピには『中火で』って書いてあるわよ?」

「それ強火になってる。というか、煙出てるぞ」

慌てて火を止め、フライパンを流しに持っていく。

中から出てきたのは、炭のように真っ黒になった卵焼きだった。

「……これ、食べられるのか?」

「たぶん……食べられる、と思う」

リリムは自信なさげに答える。

「なんで急に料理なんてしようと思ったんだよ」

「だって、今日はわたしたちの初デートでしょ?」

「デートって……誰がそんなこと言った」

「言ってないけど、そうでしょ? 休日に二人で街を歩くって」

「それはただの外出だ」

「同じことよ」

リリムは得意げに笑う。

結局、朝食は近所のコンビニで買ったサンドイッチとコーヒーになった。

リリムは「手作りの方が愛情がこもってる」とぶつぶつ文句を言っていたが、総一は命の危険を感じたので強行した。

「で、どこに行くつもりなんだ?」

「んー、人間界の『定番デートスポット』に行ってみたい」

「だからデートじゃないって……」

準備を整え、二人で外に出る。

リベットにはピンクのワンピースを着たリリムが、総一の腕にしがみついていた。

「おい、引っ付くな」

「何よ、減るもんじゃないでしょ」

「周りの目が気になるんだよ」

実際、道行く人々の視線がちらちらと向けられている。

リリムの美貌は人間界でも十分に目立つレベルだった。

「最初はどこに行く?」

「そうね……映画館とか?」

「映画館か。何見るんだよ」

「恋愛映画!」

「却下」

「えー、なんでよ」

「趣味じゃない」

結局、駅前の
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