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第15話

Penulis: 藤永ゆいか
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-27 09:16:51

海斗くんに連れられてやって来たのは、カフェだった。モダンでおしゃれな雰囲気の店内は、女性のお客さんで賑わっている。

私と海斗くんは、店員さんに案内された窓際の席に腰をおろす。

「俺、ここに前から一度来てみたかったんだよな。季節限定の、桜のモンブランが気になってて」

「ああ!カフェの入口でディスプレイされてたアレかあ。確かに美味しそうだった」

「だけど、男一人じゃこういう店入りづらくてさ。それで、希空に付き合ってもらいたかったんだ」

なるほど。確かにここって、圧倒的に女性のお客さんが多いもんね。

「希空はどれにする?」

海斗くんが、お店のメニュー表を私のほうへと向けてくれる。

「うーん、どれも美味しそうだけど……このイチゴのショートケーキにしようかな。あと、紅茶を」

「了解。すいません」

海斗くんが手をあげると、すぐに店員さんがテーブルにやってくる。

スマートに二人分の注文を伝える姿さえもかっこよくて、私はつい海斗くんに見とれてしまった。

それからしばらくして、注文していたケーキが運ばれてくる。

「うわぁ、美味しそう」

イチゴのケーキを前に、私は目をキラキラと輝かせる。

「いただきます」

さっそく私は、ケーキをひと口食べる。

「んーっ、美味しい」

イチゴの甘酸っぱさが、口の中いっぱいに広がっていく。

「……ぷっ。ケーキが来てすぐに食べるなんて、希空って食いしん坊なんだな」

「えっ!」

ケーキを食べていたら、海斗くんにいきなりそんなことを言われ、クククと笑われてしまった。

「く、食いしん坊って!海斗くん、ひどい。これでも私、女子なのに」

「はいはい」

陸斗くんだったら、絶対にこんなこと言わないよ……って。私ったら、なんでまた陸斗くんのことを考えてるんだろう。

「でも俺はどっちかと言うと、美味そうによく食べる子のほうが好きだけどな」

そう言うと、海斗くんの手がこちらへと伸びてくる。

「希空、口の端に生クリームがついてるぞ」

海斗くんに指先で口元を拭われ、またドキッとしてしまう。

まさか生クリームがついていたなんて、恥ずかしい。私は、頬が一気に熱くなるのを感じる。

「ふは。希空、耳まで赤くなっちゃって。かーわいい」

海斗くんが私の頬を、親指の腹で撫でてくる。

「希空、まじで可愛すぎる。その顔、陸斗には絶対に見せんなよ?」

「心配しなくても見せないよ」

「本当に?真っ赤な顔
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    海斗くんに連れられてやって来たのは、カフェだった。モダンでおしゃれな雰囲気の店内は、女性のお客さんで賑わっている。私と海斗くんは、店員さんに案内された窓際の席に腰をおろす。「俺、ここに前から一度来てみたかったんだよな。季節限定の、桜のモンブランが気になってて」「ああ!カフェの入口でディスプレイされてたアレかあ。確かに美味しそうだった」「だけど、男一人じゃこういう店入りづらくてさ。それで、希空に付き合ってもらいたかったんだ」なるほど。確かにここって、圧倒的に女性のお客さんが多いもんね。「希空はどれにする?」海斗くんが、お店のメニュー表を私のほうへと向けてくれる。「うーん、どれも美味しそうだけど……このイチゴのショートケーキにしようかな。あと、紅茶を」「了解。すいません」海斗くんが手をあげると、すぐに店員さんがテーブルにやってくる。スマートに二人分の注文を伝える姿さえもかっこよくて、私はつい海斗くんに見とれてしまった。それからしばらくして、注文していたケーキが運ばれてくる。「うわぁ、美味しそう」イチゴのケーキを前に、私は目をキラキラと輝かせる。「いただきます」さっそく私は、ケーキをひと口食べる。「んーっ、美味しい」イチゴの甘酸っぱさが、口の中いっぱいに広がっていく。「……ぷっ。ケーキが来てすぐに食べるなんて、希空って食いしん坊なんだな」「えっ!」ケーキを食べていたら、海斗くんにいきなりそんなことを言われ、クククと笑われてしまった。「く、食いしん坊って!海斗くん、ひどい。これでも私、女子なのに」「はいはい」陸斗くんだったら、絶対にこんなこと言わないよ……って。私ったら、なんでまた陸斗くんのことを考えてるんだろう。「でも俺はどっちかと言うと、美味そうによく食べる子のほうが好きだけどな」そう言うと、海斗くんの手がこちらへと伸びてくる。「希空、口の端に生クリームがついてるぞ」海斗くんに指先で口元を拭われ、またドキッとしてしまう。まさか生クリームがついていたなんて、恥ずかしい。私は、頬が一気に熱くなるのを感じる。「ふは。希空、耳まで赤くなっちゃって。かーわいい」海斗くんが私の頬を、親指の腹で撫でてくる。「希空、まじで可愛すぎる。その顔、陸斗には絶対に見せんなよ?」「心配しなくても見せないよ」「本当に?真っ赤な顔

  • 意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます   第14話

    「希空、来てくれたんだ。ありがとう」「ううん。私はただ、ファンの子たちに混ざって見てただけだから」どうしよう。わざわざこっちに来てくれたなんて……嬉しい。「でも、希空の声援バッチリ聞こえたぞ。俺、希空が見てくれてるって思うと、今日めっちゃ頑張れた」「そんな……海斗くん、大袈裟だよ」「ううん、大袈裟じゃない」海斗くんの唇が、私の耳元へと近づく。「俺、希空の応援が誰よりも嬉しかった。来てくれて、ほんとありがとうな」他の皆には内緒とばかりに、海斗くんは私にだけ聞こえる声で言う。「希空、また応援に来てくれる?」「……っ」耳元に海斗くんの顔があるから。さっきから海斗くんが話すたびに、息が耳にかかってくすぐったい。「いい、よ」「うっしゃ。やった!」私の言葉ひとつで喜んでくれる海斗くんに、私は思わず笑みがこぼれた。◇数日後の放課後。あっ。私が帰ろうと席を立ったとき、教室の開いた扉から陸斗くんがリマちゃんと一緒に廊下を歩いているのが見えた。イケメンの陸斗くんと学年一可愛いリマちゃんは、とてもよくお似合いで。仲良く並んで歩く二人を見ただけで胸の辺りがモヤモヤして、視界がわずかにぼやける。陸斗くん……。失恋してから何日か経ったけど、私はまだ陸斗くんのこと、全然吹っ切れてないや。「はぁー……っ!?」私がひとりため息をついたとき、突然後ろから誰かに両目を手で塞がれた。「え、ちょっと誰!?」こんなふうに両目を手で覆われたら、目の前が真っ暗で何も見えない……!︎︎︎︎︎︎「ちょっ、目隠しとか嫌だ。はっ、離して!」「ふはっ。希空、俺だよ俺」えっ、この声は……。「海斗くん!」ようやく私の目から手が離れたので振り返ると、後ろに立っていたのは海斗くんだった。「もう!海斗くんったら、いきなりこんなことしないでよ」「悪い。希空が泣きそうな顔で、陸斗のことを見てたからつい……」「えっ。私、また泣きそうだった?」「ああ。この前、あれだけ沢山泣いたんだから。できればもう、希空には泣いて欲しくなくて。目隠ししてごめんな?」「ううん」さっきまでわずかにぼやけていた視界は、いつの間にかクリアになっていた。「なぁ希空、このあと時間ある?」「え?うん」「それじゃあ、今から俺と付き合って」私は、海斗くんに手を取られる。「でも海斗くん、部活

  • 意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます   第13話

    翌日の放課後。 私はスクールバッグを手に、教室からグラウンドへと行きかけた足を止めた。 帰宅部の私は、今まで放課後はグラウンドで陸斗くんが所属するサッカー部の練習を見てから帰るのが習慣となっていたのだけど。 そっか。今日からはもう、グラウンドへ行く必要はないんだ。だって昨日、私は陸斗くんに振られちゃったから。 昨日のことを思い出しただけで、胸がちくっと痛む。 「おい、希空!」 突然名前を呼ばれてそちらを向くと、海斗くんが立っていた。 「お前、今日ヒマ?」 「うん。このあとは、家に帰るだけだけど」 「それなら、今日はバスケ部の練習を見に来てよ」 「え、バスケ部の?」 「ああ。たまには良いだろ?俺、希空に応援に来て欲しい。今日絶対にシュート決めるからさ」 真っ直ぐこちらを見てくる海斗くんに、不覚にも胸がドキドキしてしまう。 「俺、体育館で待ってるから」 それだけ言うと、海斗くんは教室を出て行った。 海斗くんに『待ってる』なんて言われたら、やっぱり行かないわけにはいかなくて。 私は少ししてから、体育館へとやって来た。 放課後の体育館には、初めて来たけれど。ドリブルの音とバッシュが床を擦る音がし、コート付近にはギャラリーができていて賑やかだ。 ほんと、すごい人の数。しかも女の子ばっかり。 「キャーッ」 「相楽くん、頑張ってー!」 ギャラリーの女の子たちのほぼ全員が、海斗くんへと声援を送っている。 いま海斗くんたちは、試合形式で練習をしているみたい。 体育館には本当の試合さながらの、緊迫した空気が漂っている。 海斗くんはどこだろう……あっ、いた。 オレンジのビブスを身につけた海斗くんは今、ドリブルをしていた。 彼の横顔はとても真剣で、思わず見入ってしまう。 海斗くんがバスケをするところは、初めて見たけれど。走る姿も、パスをする姿も、汗を拭う姿も……すごくかっこいい。 何分か経過し、試合形式の練習もいよいよ終盤。 「相楽っ!」 ボールが今、チームメイトから海斗くんに渡った。 「海斗くーん」 「頑張ってえ」 その瞬間、女子たちの声援はより一層大きくなる。 現在、試合の点差は2点。海斗くんのチームが負けている状況で、残り時間は30秒を切っていた。 ファンの女子たちの中に混じって、私も試

  • 意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます   第12話

    あの日、スーパーで親切にしてもらって以来、彼女のことが忘れられなかった俺は、学校であの子のことを探してみることに。すると、意外とすぐに見つかった。俺の隣のクラスの子で、名前は小嶋希空というらしい。希空が陸斗と同じクラスだと知った俺は、わざと教科書を忘れたフリをして、希空を見たさに陸斗に借りに行くようになった。希空が図書委員だと知ると、学校の図書室へ定期的に通うようになった。図書室で本を読みながら、委員の仕事をする希空のことをこっそり見てみたり。希空がカウンターの貸し出し当番のときは、彼女に本を渡すだけでドキドキした。希空はあの日俺にしてくれたように、誰に対しても分け隔てなく優しくて。希空のことを知るうちに、彼女へ抱く感情が、“ 気になる ” から “ 好き ” へと変わっていった。隣のクラスで特に接点もないから、1年の頃の俺は、希空のことを遠くからただ見ているだけしかできなかった。だけど高校2年生になり、俺にもチャンスが巡ってきた。高校2年のクラス替えで、念願叶って俺は希空と同じクラスになれたのだ。しかも、俺の席が希空の後ろ。これからしばらく授業中は希空のことを見られるなと思ったら、頬が勝手に緩んでしまう。だけど、喜んでいたのも束の間。「あーあ。今年は陸斗くんと、クラスが離れちゃったよぉ」前の席の希空が、友達にそんなことを話しているのが聞こえてきた。陸斗……。それからも、希空の口からは何度も陸斗の名前が出てきて。友達の栗山さんと休み時間にそんな話ばかりしていたら、後ろの席の俺には丸聞こえで。そのうち、嫌でも分かった。希空は、陸斗のことが好きなのだと。自分の好きな人が、他の男を好きだと知ってショックだった。しかも、その相手が自分の兄貴。いつも陸斗ばかり見ている希空のことが、嫌で嫌で仕方なかった。陸斗だけでなく、俺のほうも見て欲しい。どうにかして希空を、こっちに向かせたい。少しでも、俺のことを意識させたい。そう思った俺は、いつしか希空にちょっかいをかけるようになっていた。希空のテストの答案用紙を、わざと手の届かないところへやったり。希空のポニーテールのヘアゴムを外して、勝手に持っていったり。「ちょっと、相楽くん……!やめてよ」ガキだなと自分で思いながらも、希空が俺を見てくれるのが嬉しくて。俺はつい、希空の嫌がる

  • 意地悪なクラスメイトが、最近甘くて困ってます   第11話

    【海斗side】「あっ。海斗くんだ」「海斗くん、おはようー!」朝。俺・相楽海斗の1日は、矢継ぎ早に飛んでくる黄色い声を交わすところから始まる。双子の兄である陸斗と二人で登校し、校門をくぐり抜けた途端、横に後ろにと女子たちがワッと集まってきた。またか……と、ため息をつきそうになるのを俺は必死に堪える。高校に入学してからというもの、毎日こんな調子だ。「キャーッ。今日は、陸斗くんと海斗くんが一緒だ」「ふたり一緒なんて、ラッキーだね」特に陸斗と一緒にいると、集まる女子の数は半端ない。人から嫌われるよりは、好かれるほうが格段に良いのかもしれないが。アイドルでもないのに、こうも毎日のようにキャーキャー言われると、さすがに参ってしまう。「あの、海斗くん。これ、クッキーなんだけど……良かったら、食べてください」頬を赤く染めながら、俺に可愛くラッピングされた手作りのお菓子を差し出す女子。「悪いけど、いらない」冷たく言い放つと、俺は真っ直ぐ前だけを見て歩いていく。さっきみたいなとき、もし陸斗だったら『ありがとう』って言って、優しくお菓子を受け取るのだろうけど。俺は、そんなことはしない。だって俺には、好きなヤツがいるから。陸斗と別れて自分の教室にいくと、真っ先に探すのはアイツの姿。……いた。あいつは……希空は、自分の席で友達の栗山さんと楽しそうに話していた。今日も、朝から可愛いな。希空を見て、思わず俺の頬が持ち上がる。俺は、希空のことが好きだ。いつからかと聞かれたら、それはけっこう前からだ。あれは、俺が高校に入学して1ヶ月ほどが過ぎた頃。部活を終えた俺は学校帰り、母親におつかいを頼まれてスーパーへと立ち寄った。必要なものを買い物カゴに入れて、セルフレジで商品のバーコードを全てスキャンし、あとは代金を支払うだけとなったのだが……。は?嘘だろ。まさかの160円足りない。この日の俺の財布には、ちょうど3000円しか入っていなかったため、支払う金額が3160円に対して、160円が不足していた。世間でスマホ決済が普及するなか、俺は昔から変わらず現金派のため、スマホ決済のアプリは持っていないし……困ったな。こういうことは初めてだからか、心臓がバクバクと音を立て出す。仕方ない。ここは店員の人に訳を話して、商品を全部戻すか……そう思ったときだった

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