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140.緊張の訪問

last update Last Updated: 2025-08-21 17:25:03

サラリオ様が国王陛下の元を訪れた翌週、私はサラリオ様と一緒に陛下のいる王宮へと訪問した。

サラリオ様とメルが似合うと褒めてくれた深紅のドレスは、胸元がゴールドで縁どられており華やかな仕立てだった。私の黒髪によく映え、肌の白さを際立たせてくれる。しかし、この華やかさが私には少し過剰に感じられた。

「国王陛下にお会いするのに、こんな胸元が露わになったドレスは派手過ぎない?」

私の不安な問いにメルはいつもの穏やかな笑顔で答えてくれた。

「何を言っているんですか。隣国の王女たちが訪問した際のドレスと変わりませんわ。葵様が着慣れていないだけで、それほど露出は激しくありません。」

メルや他の侍女たちの言葉に後押しされ、私はドレスと綺麗にセットアップしてもらった髪で、サラリオ様の元へ向かった。

「サラリオ様、お待たせいたしました。」

私の姿を見るなり、サラリオ様の瞳が輝いた。

「ああ、葵――。とっても綺麗だ、よく似合っている。」

その言葉に、私の胸が高鳴る。きっと他の王女に対しても同じように「綺麗」と言っているのだろうけれど、サラリオ様に言われると、その言葉には特別な意味があるように感じられた。恥ずかしさで、最後は消え入りそうな声でお礼を言った。

「葵、緊張しているようだね。」

「はい、国王陛下にお会いするなんて夢のようで……。何を話していいか分からなくて……。」

王宮へ向かう馬車の中で私の手のひらは汗ばんでいた。胸の内を告白した私に、サラリオ様はそっと手を重ねてくれた。サラリオ様の温かく大きな手は、私の不安を少しずつ溶かしていく。

「大丈夫だよ。私がついている。何かあったら、私が助けるから安心してくれ。」

優しい言葉と安心させるかのように強められた手の力に、私の心は少し落ち着いた。

(サラリオ様は、私との未来を考えて動いてくださっ
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