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51.王女たちの帰還と訪問の意図

last update Last Updated: 2025-07-08 21:22:48

二日間にわたるゼフィリア王国の突然の訪問は、ようやく終わりを告げた。王女たちは皆、王子たちの完璧なエスコートもあってか、満足げな笑顔で王宮を後にした。表面上は、今回の訪問が相手の期待に応える結果を出せたのではないかと、私も感じていた。

ゼフィリア王国の一行が王宮を後にしたことを確認すると、王子たちは皆、サラリオ様の執務室へと集まった。これからのことについて話し合うためだろう。

「はあー、やっと終わった。今後は急な訪問は勘弁してほしいよな」

アゼルがソファにだらんと体を投げ出しそう呟いた。緊張の糸が解けたのか、他の王子たちも苦笑いを浮かべ、咎める者は誰もいない。皆、心の中では同じことを思っていたのだろう。

「国王である父上からも、急な訪問は遠慮してほしいことが伝えてあるから、もう大丈夫だとは思うが……向こうの国王がどう反応するかだな」

サラリオも疲れた様子でそう言った。顔には、この二日間の重圧が色濃く残っている。

「それにしても、今まではこんなことがなかったのに何か問題でもあるのかな?」

ルシアンは考えるように顎に手を当てながら言った。

「ゼフィリアが戦争を仕掛けられそうで、規模を拡大して権威を見せたいとか?」

キリアンが腕を組み、いつもの冷静な声で可能性を口

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