転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3

転生して森で暮らしていたら買い物帰りに王女様を拾いました3

last updateLast Updated : 2025-12-25
By:  みみっくOngoing
Language: Japanese
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実力と忠誠心ゆえに、王や王女すら全幅の信頼を寄せる存在。 強力な魔法〈絶対的支配空間〉を操り、戦乱のたびに王国を救ってきた彼は、望まぬままに「辺境伯」の地位を得てしまう。 だがユウは王座にも権力にも興味がない。 可愛くて強い妻たちと平穏に暮らしたいだけ──ただし、王都の危機が訪れれば即出動。 魔獣跋扈する森と、他国の脅威の最前線に立つその地において、彼の一挙手一投足が国の運命を左右していく。

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Chapter 1

第1話 辺境伯ユウ、その絶大な権力と国王の信頼

Selene's Point of view

I stood at the edge of the moonstone platform, hands trembling beneath the delicate lace of my ceremonial gown. My wolf, Nyra, was restless beneath my skin—pacing, growling softly, confused by the crackle of tension that hadn’t eased since dawn.

This was supposed to be the happiest night of my life.

The night my mate would mark me.

The night I would become Luna of the Bloodhowl Pack.

But Damon hadn’t looked at me once since the sun set. Not even during the vow procession. His gaze remained fixed somewhere beyond the crowd, jaw locked, shoulders tense. Every time I reached for the tether that bound us—our mate bond—I felt it twist. Not snap. Just… twist.

Like something was wrong.

Like something was coming.

I tried to brush it off. Told myself it was nerves. Told myself it was just the pressure of the ceremony, the weight of the crown, the hundreds of eyes watching us. But deep down, I knew better.

Damon wasn’t nervous. He was distant. Cold. And he hadn’t touched me in days.

I’d chalked it up to tradition. Some Alphas liked to keep physical boundaries until the formal marking. But even tradition couldn’t explain the way he flinched when our fingers brushed earlier. Or the way he avoided my eyes like they held answers he didn’t want to face.

Elder Kael finished his recitation, and the crowd parted. Damon stepped forward, the moonlight catching on his raven hair, sharp cheekbones, and that cold, emotionless stare I had never seen directed at me before. Not like that.

Still, I smiled.

Because I had to.

Because that’s what a good Luna did.

He took my hand. His fingers were ice. No warmth. No spark. Nyra whimpered.

“Damon Voss,” Kael announced, voice ringing clear across the ceremonial grounds, “do you accept Selene Winters as your fated mate and Luna of this pack?”

Silence.

My heart started to pound, and Nyra growled—low and warning.

The crowd shifted, murmured, unease rippling like a storm through the sea of onlookers.

“Damon?” I whispered, squeezing his hand. My voice cracked. “What are you doing?”

His eyes met mine.

And in one breath, he tore my soul in two.

“I reject you.”

The gasp from the pack echoed like thunder. The bond between us buckled, writhed. My knees gave out. My wolf screamed.

I would’ve fallen—crashed to the stone below—if Damon hadn’t let go of my hand just in time to let me hit the ground on my own.

“I’m sorry,” he said, but there was no sorrow in it. Only finality. “You’re not strong enough to be my Luna.”

I wanted to speak. To scream. To ask him why. To demand the truth. But my throat had sealed shut. My heart was too loud. My pride too shattered.

And the worst part? He didn’t even flinch.

He turned away. Just turned. Like I was nothing. Like the bond that had tied us since my first heat meant nothing.

The last thing I saw before my vision blurred with tears was the moon.

Full. Bright. Silent.

Mocking.

And then I ran.

I heard Kael shouting my name. I heard my father’s voice, heavy with disbelief. I heard whispers, gasps, cruel laughter. But I didn’t stop.

The lace of my ceremonial gown snagged on the stones and tore. My bare feet bled. The forest loomed ahead like a mouth ready to swallow me.

I didn’t care.

The Shadow Forest.

The place no wolf entered willingly. The place that devoured rogues, exiles, cursed bloodlines.

But I wasn’t afraid.

I was already dead.

The trees closed around me like fingers. The world behind me—the life I had been groomed to take, the title I was supposed to carry—disappeared.

My wolf tried to speak. To reason. To beg me to stop. But even Nyra was fractured now, shaking under the weight of our rejection. We were unclaimed. Unwanted. Unmated.

And every step deeper into that forest felt like freedom.

Or madness.

I didn’t care which.

I ran until my legs gave out.

Collapsed beneath a tree twisted with silver bark and black moss, I screamed into the earth. Loud, wild, feral. I screamed until my throat was raw, until blood welled under my fingernails from clawing the dirt.

I thought of Damon.

The way he kissed me in the gardens a week ago, promising forever. The way his eyes used to warm when I walked into a room. The way he said I was meant to rule beside him.

Lies. All of it.

“I hate you,” I whispered into the roots. “I hate you, I hate you, I hate—”

Nyra let out a low whine. Weak. Shaky. Then went silent.

The bond was unraveling. Not broken. Not yet. But the threads were fraying.

A sob caught in my chest.

“I don’t want to feel him anymore,” I begged. “Please. Make it stop.”

But there was no Moon Goddess to answer me.

Only silence.

And shadows.

Something moved in the trees.

A shape. Tall. Watching. Not pack. Not Damon.

A rogue.

I could smell it—feral and sharp.

I pushed myself up, snarling despite the burn in my muscles, the sting of rejection still echoing in my bones.

“Come on, then,” I spat. “Finish it.”

The figure stepped closer.

But he didn’t attack.

He tilted his head, pale eyes glowing.

“You don’t smell like a Luna,” he said.

My lips curled.

“I’m not,” I snapped. “Not anymore.”

He stared a moment longer.

Then, surprisingly, offered me his hand.

“Then maybe you’re something better.”

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第1話 辺境伯ユウ、その絶大な権力と国王の信頼
 王国の境界を守る砦の主、辺境伯ユウ。彼の名は、国の隅々にまで響き渡っていた。 王都の豪奢な宮廷とは遠く離れた辺境──しかし、この地こそが王国の最前線であり、その安定はすべて彼の双肩にかかっている。国王は彼に全幅の信頼を置き、中央政府は彼の裁量に異を唱えぬ。王国の統治権は、この領域に限ってはユウに一任され、彼の決断が法となる。 その権限は絶大だった。軍を動かし、法を定め、貴族と商人の行方すら左右する。中央に伺いを立てることなく、独断で外交すら行えるほどに。通常、こうした権力を持つ者には監視と制限が設けられるものだが、ユウに対してはそれがなかった。 理由はただ一つ──彼が揺るぎない忠誠と才覚を持つ人物だからである。幾度も王国を危機から救い、その手腕は疑いようがなかった。実際に、隣国が攻めてきた際も、国中が大騒ぎになる中、エドウィンと国王から懇願されたユウは、仕方なく「絶対的支配空間」を使い、あっという間に敵を撃退した。王都の宮廷では彼に対する畏敬と嫉妬が入り混じっていたが、誰もその権威を覆すことはできなかった。 そう、この地の猛獣の森が攻略されれば、王国の特殊な地形ゆえにユウの領地へと辿り着き、王都は目前となる。その事情から、領主の重要性は増し、さまざまな権限の行使が許されているのだ。 国王と初対面した現場に居合わせた最高位の幹部たちは、その目でユウの実力とオーラを感じ取っていた。その者たちが「逆らうな」と口をそろえて言うのだから、逆らえるはずがない。上級貴族数名も現場で同じ光景を目にしており、彼らも同様だった。王女や王子からも絶大な支持を得ている上、王女を筆頭に、三大貴族の娘二人が彼の妻に加わっていた。 そんな状況にもかかわらず、ユウは国王の座を狙わず、叙爵をも拒んでいた。「俺は森の小屋で静かに暮らす。何かあれば助ける」と言い、実際に他国から攻められた際には撃退した功績もあった。「あの辺境の地を守る者は、王国そのものを支える者と同義。」 それが国王の言葉だった。そして、その信頼の証が、ユウに与えられた統治権であった。王国の境界を守るその者の命令は、王の言葉に等しい。領民はそれを知っていたし、貴族たちも理解していた。たとえ不満を抱いても、彼の判断を覆せる者はどこにもいない。ユウが統治するこの地において、彼の決断こそが法であり、秩序であり、そして絶対的
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第2話 路地裏の惨劇
 この領地の価値は計り知れない。王都に近く、それでいて森と魔獣が自然の要塞となる。そのため、国王から厚遇され、統治権を一任されているのだ。 俺の住む小屋は――そんな危険な森のど真ん中にある。 だが、俺にとっては庭のようなものだ。猛獣が出ようが、魔獣が現れようが、敵兵士が踏み込んできたところで――どうにでもなる。 実際、敵国がこの領地を攻め込んできたこともある。 だが――俺一人で蹴散らした。俺の持つほぼチート級のスキルと身体能力で、あっという間に敵を退けたのだ。 その圧倒的な実績があるからこそ、俺は自由にこの領地の統治を任されている。どこか安心しているような国王の態度を見れば、この領地の防衛が俺にとって造作もないことだと信じているのだろう。 ――この領地と森は、まさに俺の庭だ。 誰が来ようと、俺が守る限り、そう簡単には落ちない。♢♢♢「俺が辺境伯となり数週間経ち、少しは落ち着いてきたな……」 そう呟きながら、ユウは夜の大通りを歩いていた。 それにしても、エリーにリリアとエリシア、ミリーナには助けられる。領地経営なんて全く分からないのだから。 ブツブツと独り言を言っていると、路地裏の方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。「疲れてるんだけどなぁ……」 周囲を見回すが、警備兵の姿は見当たらない。放っておけるわけもなく、ため息をつきながら悲鳴の聞こえた裏路地へと足を踏み入れた。 路地裏へ足を踏み入れた瞬間――世界が一変した。 まるで街の喧騒が断ち切られたかのように、**音が消える。**風すら止まり、冷え冷えとした空気がじわりと肌を刺した。壁の隙間から漏れ出る青白い光が、陰気な影を伸ばし、ゆらゆらと揺らめいている。 道は細く歪み、無秩序に積み上げられたゴミ袋が異様な沈黙を保つ。まるで、何かが潜んでいるかのように──得体の知れない視線が背後から感じられる。 鼻を突くのは、腐臭と湿気の入り混じった独特の匂い。地面に広がる黒ずんだ染みが、ただの泥なのか、それとも……。遠くで響く、何かが軋むような音。それは風のせいか、それとも──誰かの気配か。 影と影の狭間に、じっと潜むものがある。 この場所は、夜の闇を飲み込み、沈黙の恐怖を孕んでいる。「これも改善しないとな……」 そう思いつつ先に進んで行くと、女の子が襲われている現場に遭遇してしまった。 
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第3話 一夜の安らぎ
 当然、彼女に笑顔はなく、一点を見つめて動かない。食事を出して様子を見ていたが、一人にしておくのが良いかと部屋から出て寝室へ向かおうとした、その時だった。 ガタッと椅子から立ち上がった少女が、ユウの服を掴んだ。「……一人に……しないで……また、おそわれちゃう。」 震えるような、しかし可愛らしい声だった。「いや、男に乱暴にされたんだろ。俺がいると落ち着かないんじゃ……?」 ユウの言葉に、少女は無言で首を振る。「分かった。じゃあ、隣に座るがいいか? ちゃんと飯を食えよ……?」 少女は無言で頷いた。言われた通りに、おずおずと一口食べ始めると、パンとスープを完食した。すると、隣に座るユウの服をすぐに掴んだ。「どこにも行かないから、大丈夫だぞ」 ユウはそう言って、優しく頭を撫でた。あまり触れられるのも嫌かもしれないから、これくらいにしておくか、と彼は思った。 ……って、どうやって寝るんだよ。俺、どうすれば……!?「……なあ、寝るのはどうするんだ? 一緒には寝たくはないだろ?」 ユウの問いに、少女は首を振る。……どっちだよ!?「一緒に寝たくないんだろ?」 ユウがもう一度聞くと、少女はぶるぶると……首を横に振った。「……じゃあ、一緒に寝るのか?」 コクリと頷く少女。 ……そっか。まあ、俺は良いけど。可愛いしな。 夜も遅い。寝室に入ると、同じベッドで横になったユウを見て、少女は嬉しそうな顔をした。多分、ベッドで寝られることが嬉しいのだろう。「安心して寝ていいぞ。誰も襲ってこないからな。」 ユウの言葉に、少女はコクリと頷いた。彼女の表情には、ようやく安堵の色が浮かんでいた。 寝ながら、ユウは孤児院について考えていた。この命の軽い世界で、もし孤児たちを保護すれば、たちまち財政難に陥るだろう。きっと「ここに来れば保護してもらえる」と、他の領地からも孤児が押し寄せてくるに違いない。「大して金もかからないか……一日二食で空き家を使うとか。人里離れた場所で?」 そうすれば孤児院の情報が漏れるのを防げるが、ただ育てるだけになってしまうだろうか。畑仕事や料理を教えて……弁当屋でも始めるか。それにしても、職員が必要だな、とユウは考えた。「ふぅ~疲れた。精神的に……」 その時、ゴロンとミレディが抱き着いてきた。これでは動けない。安心しきった顔で眠って
last updateLast Updated : 2025-11-26
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第4話 共同作業の始まり
 ……えっと、普通は音を聞かれるのを嫌がるんじゃないのか? ……ドアくらい閉めよう? しかも、服を掴んだままなのか? ジョワァァァ……と音が聞こえてきた。ミレディは恥ずかしそうに顔を赤く染めている。恥ずかしいという気持ちよりも、怖いという気持ちの方が勝っているのかもしれない。「昼食を一緒に作るか?」 ユウが問いかけると、「つくる」と答え、服を引っ張られた。いや……トイレ中だろ!? あ、あれ……ぽふっと抱きしめられた。ああ……ほんとに懐かれたんだな。お世辞や面倒を見てもらうために言ってたんじゃない。そんな状況でトイレ中に抱きしめてこないだろう。下手すれば……また襲われるぞ。 抱きしめてくるミレディの頭をユウは撫でた。「もしかして、肉に喜んだのか?」「……ちがう。……いっしょに料理する。」 その言葉に、ユウは一瞬驚いた。「あ、俺、料理下手だぞ。肉を焼く、肉を入れたスープくらいしかできないぞ。」 すると、ミレディはふっと笑った。「……ふふっ♪」 おお……笑ったぞ、ミレディが! ユウはからかったり褒めたりせず、あえてスルーしておくことにした。 調理開始。とは言っても、単純に塩と胡椒を振りかけて肉を焼くだけだ。「よし。料理を開始する。ミレディ、配置に着け!」「え? は、はい。」 おお、アワアワしながらも、ミレディはテーブルに置かれた肉の前に立った。しかも、返事までしてくれた。「肉に塩と胡椒を振りかけろ、ミレディ。」「う、うん。あ、はい!」 チラッチラッとユウを見て、分量を確認している。最初は勢いよく塩を掴みかけたが、ユウが『えぇ!?』という顔をすると、徐々に減らし、適量を振りかけた。「あとは、焼くだけだぞ。一緒に焼くかぁ。」「はぁい。」 その返事は、いつもより明るく弾んでいた。ミレディが肉を持ち、目を輝かせながらユウを見つめる。「おにくぅ……」 可愛すぎだろ……。 ユウは収納から薪を取り出し、準備に入る。「よし! ミレディ、焚き火の準備だぁ!」「わっ、は、はい……えっと、こぉ……かなぁ……う、うん。できたぁ!」 ま、まあ、燃えればいいか……。 ユウは手をかざし、ファイヤっと――ぼわっと薪に炎が燃え上がる。火が安定し、焚き火の温かな灯りが場を包み込んだ。「よし! ミレディ、焼くんだ! じっくりゆっくりと回しながらなっ
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第5話 川へ遊びに
 そして、一口かじると──「おいしぃねー!」 ユウはニヤッと笑って答える。「そりゃそうだろ。ミレディが焼いたんだから、不味いわけがないよな。旨すぎだぞ、これ。」 その言葉を聞いた瞬間、ミレディは、ぱぁっと最高の笑顔を見せてくれた。「えへへぇ……うれしぃ……♡」 昼食は、ゆったりとした時間をかけて楽しんだ。 可愛らしく喜ぶミレディの姿を見て、ユウは抱きしめたくなる気持ちを抑えるのが大変だった。なにせ、男に襲われたばかりの女の子だ。だが、せめて彼女をたくさん喜ばせてやりたいという思いが強かった。 焼きたてのパンに、じっくりと火を通した野菜――ミレディは、ひとつひとつに興味津々で、嬉しそうに笑っていた。 そんな穏やかな時間の中、ふとミレディが口を開いた。「日が暮れたら帰るぅ……?」 その言葉には、ほんの少しの寂しさが混じっていた。 ユウは目を細めながら、考える。確かに、予定はある。だが――休みはしっかり取った。強制的に休むと伝えてあるし、家に帰らなくても何の問題もない。テントは収納にあるし、食料も十分だ。 ……となれば、帰る理由はひとつもない。「もしかして、ミレディ泊まりたいのか?」 そう聞くと、ミレディはぱっと目を逸らし、ほんのり頬を染めながら呟いた。「べ、べつにぃ……ユウくんは……いやぁ?」 ――ん? いつのまにか「ユウくん」呼びに変わっていた!? おお……昇格か!? ミレディの変化に、ユウは少し嬉しくなりながら、焚き火を見つめながら答えた。「そうだな。ゆっくりと休んで帰るか……」「え? わ、わぁー……♪ やったぁ!」 ぴょんぴょんと跳ね、満面の笑顔を見せるミレディ。その様子があまりにも嬉しそうで、こっちまで幸せな気分になった。「食べ終わったか? よし、川で遊んでもいいぞ。でも、遠くに行くなよ? 流されて帰ってこれなくなるからな。」 ユウがそう言うと、ミレディは突然動きを止め──「え……いや。帰るぅ。ちがう、ユウくんとずっと一緒がいい。」 ぴたりと腕にしがみついて離れなくなってしまった。 ……脅かしすぎたか? いや、ここの川は足の脛くらいの深さしかない。急に激流になることはないし、最近雨も降っていない。それに──万が一流されたとしても、俺がすぐに探し出して助けられる。だから、安心させることにした。「あはは……
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第6話 日用品を買い物に行く
 ミレディの日用品を買いに行くことにした。現在、彼女が持っているのは今着ている服だけ――たった一着。それ以外のものは何もない。 着替えもなく、綺麗な銀髪をとかすクシさえ持っていない。 まあ、孤児にとっては、クシよりも腹を満たす食べ物の方が優先されるのだろう。それは当然のことだ。 だが、俺が面倒を見ている以上、食事を与えるだけでは不十分だ。生き延びるためだけの生活ではなく、安心して過ごせる環境を整え、いずれは自分自身で未来を考えられるようになってほしい。 ミレディにとって「身なりを整える」ことは、ただの贅沢ではない。社会の中で生きる上で必要なものだ。綺麗な服を着て、髪を整え、最低限の生活用品を揃える。それらはただの物ではなく、自分を大切にするという意識を育てることにもつながる。「まずは、必要なものを揃えないとな」 だから、まずは――身の回りのものを揃えてやるところから始める。「今日は買い物に出かけるぞ。用意を……って、用意することもないか。」 本来なら、女の子は出かける前に身なりを整えたり、準備に時間をかけたりするものだろう。 だが、ミレディにはまだその習慣がない。「ん? どこいくのー? おでかけ? やったぁ!」 俺の言葉を聞いた瞬間、ミレディの顔がぱっと明るくなった。無邪気に俺の腕を掴み、期待に満ちた笑顔を向けてくる。 そんな様子に、少し苦笑しながら思う。 こうして嬉しそうにしている姿を見ると――彼女が、身なりを整えることの楽しさを知るのも、そう遠くないのかもしれないな。 ユウが木製の扉を押して店に入ると、チリン、と控えめな鈴の音が響いた。「いらっしゃいませっ!」 すぐさま、店の奥から小さな足音とともに現れたのは、年端もいかない少女だった。ブロンドの髪をきれいに結い上げた彼女は、くたびれたエプロンを身につけてはいるが、所作は驚くほど洗練されていた。背筋を正し、深々と頭を下げるその姿は、まるで貴族の屋敷で仕える侍女のようだった。(あれは……使用人? いや、奴隷か?) ユウは警戒半分、興味半分で店内を見渡した。棚には雑貨や筆記用具、乾物などが並んでいる。「ええと、ペンと紙を探してるんだけど……」「はい、こちらでございます」 少女はすぐに顔を上げて微笑み、軽やかな足取りで棚の奥を案内してくれた。丁寧な言葉遣い、無駄のない動き。だが、
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第7話 店での騒動と辺境伯の裁き
「貴様、なんということを……! おとなしく捕まれ!」 ニヤッと笑い衛兵たちがユウに手を伸ばした――その時。「やめてっ!! ユウくんに触らないで!!」 ミレディの叫びが響いた。震える声。それでも、彼女は恐怖に逆らい、バリア越しにユウを庇うように前に出た。 そして――。 騎士のような黒衣に身を包んだ男が姿を現す。鋭い双眸に高貴な風格を纏ったその人物を見た瞬間、衛兵たちの顔色が変わった。「け、警備隊長!? どうして、このようなところへ?」 衛兵が気まずそうな顔をしながらユウを拘束しようとしていた。「へ、辺境伯閣下……!? お前ら、いったい……何をしている?」 その場の空気が変わった。 警備隊長の声が低く、静かに響いた。「終わりにするか……」ユウが静かに呟く。まるで、空気そのものを支配するような圧力。 衛兵たちが息を呑む中、ユウは一歩前に出た。「……俺は、ユウ。この地を統べる辺境伯だ」「…………っ!」 沈黙。全員の顔が一瞬で青ざめた。「……っ!? 辺境伯……閣下……!?」 膝を折る警備隊長と衛兵。崩れる店主。「うそだ……おまえ、そんな貴族の服装じゃ……!」「服で身分が決まるのなら、貴族など必要ない」 ユウの瞳は氷のように冷たかった。「暴言、暴行、裏に盗賊風の連中を雇い、奴隷を虐待し……そのうえ、俺を貶めようとしたな。言い逃れはできん」 店主の顔から血の気が引き、脂汗が流れ落ちる。「ち、違う……わたしは……これは……誤解で……!」「誤解かどうかは、もう関係ない。――辺境伯の名において、命ずる」 ユウが右手を掲げると、空気が震える。「この者の財産をすべて没収し、商業許可を剥奪。奴隷として不当に扱われていた少女は保護下に置き、必要であれば王都での裁きを追加で受けさせる。結果は変わらんがな。国王から、この領地の統治権を一任されているのでな。異論のある者は、今、ここで私に口答えしてみろ」 誰も、声を発する者はいなかった。「ひぃっ……! ご、誤審を……慈悲を……!」 店主は泣き崩れ、床に這いつくばるが、その姿にユウは目もくれず、少女とミレディに歩み寄る。「……よく、声を出したな。ミレディ」「ユウくんが……捕まっちゃうの、嫌だったから……!」「ありがとな」 ユウは微笑み、少女にも優しく手を差し出した。「怖い思いをさせて
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第8話 虐待の終焉と辺境伯の怒り
 少女は、精いっぱいの力で抱きしめ返してきた。「……はい。ありがとうございます。……わたし、シャルロッテといいます。」 安心した表情で、震える声ながらも自己紹介をしてきた。「シャルちゃんかぁー。もう、だいじょうぶだよ。ユウくんは、やさしいからぁ♪」 黙って様子を見ていたミレディが笑顔で、俺とシャルに抱きつくように言った。「じゃ、そうと決まれば、買い物の続きをするか。」 二人を連れて歩き始める。 だが、歩くシャルの動きにどことなくぎこちなさを感じた。歩調が不自然で、わずかに痛々しさがにじむ。「どこか、痛むのか?」「……いいえ。大丈夫です。」 小さな声でそう答えるものの、その様子から我慢しているのは明らかだった。俺は迷うことなく、シャルを抱きかかえる。 シャルの我慢をしている様子が不自然で、嫌な予感がしていた。「……わぁ、え? だ、だいじょうぶですよぅ。あ、あの……ユウ様の服が汚れちゃいますよ? 重いですよぉっ。」 シャルは慌てたように、顔を赤らめながら遠慮しつつも、どうすればいいのか分からずに戸惑っている。「ずるいなぁ~……。ユウくん、力持ちだから大丈夫だよっ♪」 ミレディが明るく言葉を重ね、シャルを安心させようとする。 しかし俺は、そのままミレディの手を掴み、歩を速めた。「え? お買い物……あれぇ?」 ミレディが戸惑うのを聞きながら、俺は二人を連れて近くの警備隊の詰め所へと向かった。「取調室を借りるぞ!」 そう警備兵に告げると、すぐに鋭い声が返ってきた。「貴様! 勝手に何を言ってるんだ!」 怒鳴りつける警備兵を無視し、前へ進もうとした瞬間――。 シュッ―― 苛立った警備兵が抜剣した。 その音と気配を察したのか、隊長室の扉が勢いよく開く。「辺境伯閣下!? どういたしましたか!」 先ほどの店に来ていた隊長が飛び出してきた。そして、ユウの姿を確認するや否や、すぐに跪く。「お前の部屋を使わせてもらうぞ。入室は禁ずるぞ!」 短く言い直し、そのまま隊長室へと入る。 扉を閉め、ゆっくりとシャルを床に降ろした。 静かになった室内で、ミレディとシャルがキョトンとした表情のまま、俺をじっと見つめていた。「シャル、服を脱げ。」といきなり言われたシャルは動揺した顔をして俯き、素直に服を脱いだ。「え? ユウ……くん?」驚いた
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第9話 裁きと、処刑の執行
 先に向かっていた警備兵が到着したと分かるや否や、囚人たちはすぐに買収の交渉を始めた。「おい、話せば分かるだろ? いくら欲しい?」 「見逃してくれりゃ、お前にも分け前を――」 その言葉が届いた瞬間、俺の中で抑えていた怒りがさらに高まるのを感じた。 ……楽に死ねると思うな。 幼い少女を弄び、苦痛を与えながら笑っていた連中――その行いを罪とも思わぬまま、賄賂で逃れようとしている。 全員同罪だな。 衛兵たちは多少関わっただけの立場かと思っていたが、今こうして笑いながら賄賂を渡し、交渉をしているのはまさにこいつらだ。 自分たちは衛兵で、軽い罪だとでも思っているんだろう? ――その通りにしてやる。 俺が歩み寄ると、囚人たちの顔色が変わった。 異様なオーラが周囲を覆い、空間が歪むほどの怒りを滲ませる。 それを感じ取った囚人たちは、恐怖に顔を引きつらせながら後退る。しかし、すぐ後ろにある冷たい壁が逃げ道を塞ぐ。 ゴォォ…… 沈黙の中、まるで空気そのものが揺らぐような低いうねりが響く。「さて……楽しい談笑は済んだか?」 低く、冷たい声音が牢屋全体を支配する。 誰一人として動けない。誰一人として言葉を発せない。「先ほどまで、賑やかにしていたように聞こえたが……? まあ、良い。」 声は淡々としている。だが、その冷たい響きに、警備兵でさえも息を詰まらせていた。 その中でようやく、一人の警備兵が震えながら口を開いた。「ひ、必要でしたら……囚人を……出しますが。」 俺は静かに、一歩前へ進む。「その必要はない。これより、辺境伯の名のもとに裁きを言い渡す。」 その言葉が牢屋全体に響く。「私は、国王より統治権を一任された者――すなわち、この地において法であり、正義そのものだ。」「ゆえに、裁きを下す権利を有する。異論は認めない。」 静けさが広がった。 他の囚人もいるはずなのに、話し声も物音もひとつしない。 魔法もスキルも使っていない。 だが、今この空間は完全に俺の支配下にある。 警備兵ですら、捕まったわけではないのに震え、圧倒され、息を殺していた。 何者にも許されぬ罪がここにある。 今、この場を支配するのは、俺の怒り――そして、下されるべき裁きだ。「……店主および、その使用人は同罪とし――即、死刑とする。」 牢内の空気が凍りついた。
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第10話 地下牢の響きと辺境伯の統治術
 しばらくの間──地下牢に苦痛に苦しみ、のたうち回る音とともに叫び声が響きわたり、恐ろしい光景が広がっていた。警備兵や捕らえられていた囚人は、悪さは絶対にしないと心に誓っていた。 牢屋を後にする際、ユウは最後に静かに言い残した。「お前らも、あまり悪さをしていると──同じ目に合うかもな。」 その言葉が響くと、囚人たちは一様に顔を歪めた。すでに戦意も希望もない。今ここで支配しているのは、恐怖と後悔だけだった。 牢を出たユウは、長椅子に腰を下ろし、大きく息を吐く。一瞬、すべてを忘れるように目を閉じた。それまで漲っていた怒りは、すでに消えていた。今のユウの顔は──ただの少年に戻っていた。その変化に、残っていた下級の警備兵たちは、戻ってきたユウに気づいていなかったのも無理はない。先ほどまでの威圧感に支配されていた彼らにとって、この穏やかな表情は、まるで別人に見えたのだろう。(やはり、やりすぎたか……) ユウは内心で自嘲する。辺境伯としての冷徹な裁きは必要だった。だが、彼の本質は、どこまでも自由を愛する少年だ。他者に苦痛を与えることに、喜びを感じる性分ではない。にもかかわらず、あの地下牢で、彼は敢えて恐怖を植え付けた。それは、二度とあのような虐待が繰り返されないようにという、彼の強い覚悟の表れでもあった。 しばらくして、具合の悪そうな警備兵たちが戻ってきた。ユウは軽く目を開け、低く呟く。「悪かったな……悲惨なものを見せてしまったな。」 警備兵の一人がすぐに答える。「い、いえ……謀反の罪は重罪です。一族が巻き込まれなかっただけでも幸運だと思います!」 もう一人が続けた。「牢にいた者も皆、改心したようでした!」 ユウはその言葉に、ふと考え込む。(改心、か……。恐怖は一時のものだ。果たして、どれだけ続く?) この世界では戦争や盗賊、猛獣や魔物退治など、命が軽く消えることが当たり前にある。だからこそ、彼らは慣れているのかもしれない。警備兵たちは、思ったよりもダメージを受けていないようだった。 ──これじゃ、抑止力にならなかったかもな。 ユウは少しばかりの失望を感じた。ただ恐怖を与えるだけでは、根本的な解決にはならない。人は、恐怖だけでは長く動かない。より本質的な動機、あるいは明確な「餌」が必要だと、彼は経験から知っていた。 ソファから立ち上がり、テ
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