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第8話:逃げ場のない仕掛け

作者: 秦江湖
last update 公開日: 2026-08-15 21:12:26

山道での襲撃事件から二日後。

事件は「夜間配送中に強盗に遭遇するも、絢人が隙を突いて暴漢を追い払い、逃走させた」という形で社内処理された。私は予備の黒縁眼鏡をかけ、後ろで髪をひとつに結び、再び地味で無害な「佐倉志乃」として外商部のデスクに向かっていた。

「佐倉先輩、肩の痛みはもうありませんか?」

隣のデスクから、絢人が気遣うような声をかけてくる。

「ええ、もうすっかり大丈夫です。三島さんこそ、お怪我の具合は……」

「僕も大したことはありません。あの時、先輩が側にいてくださって本当によかった」

絢人は穏やかに微笑む。その表情には、あの夜の強烈な眼光も、車内で見せた暗い影も欠片も残っていない。

(……気のせいだったのかしら)

あの夜、素顔を見られた瞬間に感じた胸の騒ぎ。だが、今の絢人は相変わらず素直で優秀な後輩そのものだ。私は胸の奥の不吉な予感を押し殺し、手元のPC画面に集中した。

襲撃事件の翌日、駆から暗号化されたデータが届いていた。白川結衣の限定ジュエリーの件から足をつけて追っていた、根津健太の身辺調査の結果だ。

健太は以前から海外ブランドの模倣品を本物と偽って横流しし、差額を私腹に
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