LOGINオーディン家、大パニック奪還劇
クリスティン旋風が吹き荒れて三日目。 オーディン家の屋敷では―― 前代未聞の家族会議が開かれていた。 長いテーブル越しに、父、母、姉、そしてオーディン本人が並んでいる。 「……クリスティンを取り戻す方法を、誰か提案しなさい」 父の重々しい一言に、全員が沈黙した。 オーディンは椅子に深く沈み込んでいる。 まるで絞られた雑巾のような顔だった。 姉がバンッとテーブルを叩く。 「こんなの、あんたのせいじゃない! 浮気するからよ!!」 「う……っ」 「昨日の昼餐会、クリスティンが男性に囲まれていたわ。 “彼女はもはや自由だ”って皆がうっとりしていたのよ!」 母も深いため息をつく。 「……あの子、もう“オーディンの妻”という枠に収まらないのね。 あの輝き、あなたが消したのよ」 オーディンは顔を覆った。 「……オレは…… ただ、少し自由が欲しかっただけなんだ……」 「その結果、クリスティンの自由を与えてしまったのよ!」 姉が吠える。 父が重く頷き、最後の一撃を与えた。 「……クリスティンは今や、社交界の象徴だ。 “女性の自由”“誇り”“再出発” そのどれよりも彼女が体現している」 「……っ」 「そしてお前は、その“象徴の夫”として…… 完全に笑い者になっている」 オーディン、撃沈。 ⸻ ★その頃、クリスティンは優雅に“次のパーティ” 昼下がりの庭園で、女性たちとお茶会。 テーマは “自立した女性の新しい生き方”。 クリスティンは軽く笑い、紅茶を口にした。 「旦那がどうこうなんて、もう関係ないわ。 私の人生は、私のものよ」 「クリスティン様、勇気が出るお言葉……!」 「男性に頼らないって、こういうことなのね!」 そんな賛辞の中、男性陣も遠巻きに彼女を見る。 あのレオンも、距離を保ちながら微笑む。 クリスティンは、くるりと扇子を開いた。 「男性ってね――」 興味津々で女性たちが身を乗り出す。 「いろんな人が寄ってくるでしょう? でも、私は旦那に、こう言ったの」 紅茶を置き、優雅に微笑む。 「あなたは、いろんな男性の“いちばん後ろ”に控えているといいわ」 場が静まり―― 次の瞬間、喝采が上がった。 「最高!!」 「さすがクリスティン様!!」 「なんて気品ある強さなの……!」 周囲の男性陣は、完全に撃ち抜かれた顔をしている。 そして―― 険しい顔で遠くからこちらを見ている男がひとり。 オーディンだ。 クリスティンに届いた噂はこうだった。 「オーディン家が、あなたを取り戻すために大騒ぎしている」 ふふん、と私は鼻で笑った。 「戻るわけないじゃない。 私は今――人生の中心に立ってるのよ」 扇子をそっと閉じ、静かに言った。 「昔みたいに、彼の後ろに立つつもりなんてないわ。 今度は―― 彼が、私の列の後ろに並ぶ番」 その言葉に、女性たちはさらに拍手喝采した。 そしてオーディンは―― 遠くの柱にもたれながら、 その言葉を聞いて 完全に砕け散った。 三年“子なき”は去れ——その逆襲 夕陽の中、オーディンが震える声で言った。 「クリスティン……頼む。戻ってきてくれ…… 俺は間違ってた。三年前のあの言葉も……忘れてくれ」 クリスティンは冷静に、扇子を開いて答える。 「忘れる? あの言葉を?」 「……っ」 「オーディン、あなた…… 私に言ったわよね?」 扇子の陰から、うっすらと笑みがのぞく。 『三年“子なき”は去れ』 と。 オーディンの顔が真っ青になる。 彼の家系には古い家訓があった。 『三年子どもができなければ、妻の価値なし。捨ててよい』 という、残酷なもの。 それを、何のためらいもなくクリスティンに向かって言った。 「ねぇ、オーディン」 クリスティンは軽やかに言い放つ。 「三年、“子なき”は去れって、あなたが言ったのよ?」 「クリスティン……あれは……!」 「でも不思議よね」 扇子をぱちん、と閉じた。 「私たちに子どもができないのは―― 私のせいじゃなくて、あなた自身のせいだったんだから。」 オーディンの膝がガクッと折れた。 「な……っ……!?」 「医者にも言われたじゃない。 “原因は旦那側にある”って」 周囲の空気が凍りついた。 「なのに、私だけのせいにした。 三年子どもができなければ、妻が悪いですって? 笑わせないで」 クリスティンはゆっくり身をかがめ、 震えるオーディンの耳元に囁いた。 「ねぇ、“三年子なきは去れ”って言ったのは誰?」 「……お、俺……だ……」 「なら、決まりね」 クリスティンはくるりと立ち上がり、笑顔で宣告した。 「三年“子なき”のあなたが、去りなさい。ケラケラ」 オーディンはその場で崩れ落ちた。 目の前で崩れ落ちるオーディン。 「クリスティン……違う……あれは……本心じゃ……」 「でも、私は本気で生きてきたわ。 誰の後ろにも立たず、 人生をやり直したの」 涼しげな笑顔でクリスティンは言う。 「だからもう、あなたに縛られる理由はひとつもないの。 三年前の言葉、返すわね」 オーディンの目から力が抜けていく。オーディンは今にも泣きそうな顔で言った。「クリスティン……頼む……お前がいないと……領地も、家も……何も回らないんだ……」クリスティンは冷たく笑う。「へえ?それって――」一歩、彼に近づく。「私がいないと“領地経営ができないから”?それとも、“遊びたいから”?」オーディンは言葉を詰まらせた。クリスティンは続ける。「あなた、言ってたわよね。“家のことは全部クリスティンがやればいい、俺は社交を楽しむから”って」あの時の侮蔑と怠惰が、クリスティンの胸に蘇る。「領地経営も、書類も、使用人の管理も、ぜ~んぶ私任せで、あなたはアデルと遊んで……」扇子で軽くオーディンの胸を叩く。「そのくせ、私が必要?笑わせるわ」オーディンは震えながら首を振った。「ちがう……違うんだ……!」「違わないわよ」クリスティンの声は静かで、刺すほど鋭い。「あなたが私を繋ぎ止めたかった理由はただひとつ。“自分が楽でいたいから”。領地は私任せ、責任は私任せ。自分は酒と女にふらふらして、まるで――」クリスティンの目が細くなる。「歩く男娼みたいに、あっちこっち行ってたじゃない。」オーディンの顔が青くなった。「そんな……そんな言い方……!」「事実でしょ?」次の瞬間、クリスティンは一段低い声で言った。「誰だって嫌よ。歩く男娼みたいな夫なんて。触れられたくないし、まして――“レス”になった原因が私って思わないで?」オーディンの喉がひゅっと鳴る。「れ……レスは……君が拒むからだろう……!」「違わないわよ」クリスティンは笑った。乾いた、勝者の笑み。「レスになった原因は、あなたよ。だって、私に触れる前に、“ほかの女”に触れてたじゃない」周囲がざわめいた。「そんな夫と、誰が寝たいと思うの?妻が拒否し始めたら、それを“妻の義務違反”と言うつもり?」オーディンの膝が砕けたように崩れ落ちる。「俺は……俺は……」クリスティンは最後に言い放つ。「私を失いたくなかった理由?そんなの簡単よ。」美しい笑みを浮かべながら。「私がいないと、あなたが“何ひとつできない無能”だって、世間にバレるからでしょ。ケラケラ」「あなたの領地経営、わたしには都合がよかったの。だって、崩壊寸前の領地ほど勉強になるものはないわ。問題だらけのおか
オーディン家、大パニック奪還劇 クリスティン旋風が吹き荒れて三日目。 オーディン家の屋敷では―― 前代未聞の家族会議が開かれていた。 長いテーブル越しに、父、母、姉、そしてオーディン本人が並んでいる。 「……クリスティンを取り戻す方法を、誰か提案しなさい」 父の重々しい一言に、全員が沈黙した。 オーディンは椅子に深く沈み込んでいる。 まるで絞られた雑巾のような顔だった。 姉がバンッとテーブルを叩く。 「こんなの、あんたのせいじゃない! 浮気するからよ!!」 「う……っ」 「昨日の昼餐会、クリスティンが男性に囲まれていたわ。 “彼女はもはや自由だ”って皆がうっとりしていたのよ!」 母も深いため息をつく。 「……あの子、もう“オーディンの妻”という枠に収まらないのね。 あの輝き、あなたが消したのよ」 オーディンは顔を覆った。 「……オレは…… ただ、少し自由が欲しかっただけなんだ……」 「その結果、クリスティンの自由を与えてしまったのよ!」 姉が吠える。 父が重く頷き、最後の一撃を与えた。 「……クリスティンは今や、社交界の象徴だ。 “女性の自由”“誇り”“再出発” そのどれよりも彼女が体現している」 「……っ」 「そしてお前は、その“象徴の夫”として…… 完全に笑い者になっている」 オーディン、撃沈。 ⸻ ★その頃、ク
社交界が大騒ぎ&パーティのお誘い レオンと優雅に踊り終え、私はシャンパンを一口。 気分は不思議なほど軽かった。 周囲を見渡すと―― 拍手。 え?と思った瞬間、女性たちが次々に近づいてきた。 「クリスティン様……! 最高でしたわ!」 「あのオーディン様が真っ青になるなんて!」 「従順な奥様、って評判だったのに……ついに反旗を翻されたのね!」 「拍手喝采よ。本当に!!」 ――え、そんなに有名だったの?私。 女性たちは目を輝かせ、次々に私の手を握る。 「次、うちのパーティに来てくださらない? あなたの“あの堂々たる態度”、ぜひうちの夫にも見せたいわ!」 「そうよ、オーディン様だけじゃないの。 あれで震えた男……何人もいたわよ?」 「えっ」 会場の端では―― ■ 足を崩し落ちるオーディン ■ 顔色ひとつ変えず失望の眼差しを送る夫の姉 ■ その横で絶句している夫の父 ■ そして、しがみついて離れないアデル ……地獄の家族図。 オーディンの姉がつかつかと近づいてきた。 「クリスティン。 あなた……よくやったわね」 「え?」 「今まであの子、あなたに
シャンデリアが滴るように光を落とす大広間。 壁沿いでは宝石を散りばめたドレスの女性たちが噂話に花を咲かせ、中央では貴族たちが軽やかにステップを踏んでいる。 私は、赤いドレスのすそをつまみ、会場の片隅――影の落ちる柱の前でそっと息を整えた。 (今日だけは、“ただの女の私”でいたいの) 髪は黒いウィッグ。瞳も淡いレンズ。化粧も普段より濃い。 **偽名「アーデル」**とだけ受付で告げ、誰にも気づかれずに入ってきた。 ワイングラスを持ち上げ、一口含んだ瞬間――。 ⸻ ◆紳士の登場 「……失礼。 この会場で、あなたほど美しい方を私は知りません」 低いけれど柔らかな声。 振り向くと、金髪の長身の紳士が優雅に一礼しながら立っていた。 名札には“エドワード卿”。 「アーデル殿。 どうか――私の妻になっていただけませんか?」 いきなりプロポーズ!? 「えっ、あの……」 ⸻ その時 ――リアル夫が現れる 「――彼女は、俺の妻だ」 背後から空気を震わせる低音。 私は思わず肩を震わせて振り返った。 黒のタキシード、整った肩幅、感情を押し殺した深い青の瞳――金の髪。 オーディン。 眉間にはうっすら皺。







