共有

※ローランドの長い夜.溢れ出して止まらない

作者: Kaya
last update 最終更新日: 2025-07-09 18:19:00

 城に帰り着いた頃には、すでに深夜を回っていた。

 捕らえたレーヴェンの一味を全員地下牢に拘束し、騎兵隊を解散させ、それぞれ宿舎に戻らせる。

 人騒がせなホイットニーには、明日以降尋問すると言い、侍女が使う部屋に戻らせた。

 「お前にはまだ聞きたい事が沢山ある。」

 そう言って私は、アデリナを自分の宮に連れ帰った。

 「はあい……」

 これから怒られると思っているのか、アデリナはやけに大人しく返事をする。

 城で寝ずに待機していたランドルフが、私の脱いだ外套を受け取った。

 ベルで雑用の侍女達を呼び、指示をした。

 「先に風呂に入れてやれ。その間に軽い食事の用意を。」

 「はい。畏まりました。陛下。」

 しゅんとした様子のアデリナは、複数の下働きのメイド達に連れられて風呂へと向かった。

 ……なぜか彼女を自分の宮に返したくなくて、ここへ連れて来たのだが。

 「陛下……大丈夫でしたか?」

 「ああ……ランドルフ。問題ない。」

 いくら夜遅くても自分より先に寝た事がない優秀なランドルフが、心配してくれているのが分かる。

 おそらく奴隷少年達の件で、アデリナは明日から大臣達の非難を受けるだろう。

 だが問題ない。

 すでに解決策は用意してあるから。

 軽い食事と少量のワインを一気に流し込み、それから風呂に浸かった。

 ◇

 「王妃陛下は寝室でお待ちです。」

 「そうか……もうお前達も下がっていい。」

 宮の衛兵とメイド達を部屋の前から退かせる。

 扉を開けると、厚い夜着を着たアデリナが目に飛び込んできた。

 クブルクは寒い国だ。

 暖炉に薪が焚べてあり、パチパチと音を奏でている。

 「あ……の、陛下。」

 

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ※そんなつもりはなかったのに!ローランドとの甘い一夜が?

     ……リナ。あ で り な。 「アデリナ…頼む。逝かないでくれ!」 えー、逝ってないし。死んでないし。 いや……一度は死んだのかな? 確かに現実世界の上坂葵《わたし》は死んだみたい。 ……って……アデリナ——————!?? さっき確かに、上坂葵《わたし》とアデリナの二人分の走馬灯が駆け抜けたんだよね! そして上坂葵《わたし》の体にアデリナが憑依して、私はまたこの小説の世界に飛ばされて。 「こっちの世界は任せたわって…」 やっと疑問だった、全ての謎が解けた。 先に死んでたアデリナの体に私は一度、仮憑依し、ついさっき死んでしまった上坂葵《わたし》にアデリナが憑依。 そして私はまたこの小説の世界のアデリナに憑依した。ややこしい……! まあ確かにアデリナが言った通り、私達互いに不器用すぎたんだね。 だから魂がリンクしてそれぞれ死んだ体に憑依したのか。……なんか納得。 しかも……アデリナに託されてしまった。 ローランドの事を。 って……どうしよう? だって、こっちの世界で待っているのは恐ろしいバッドエンドだから……! 目を覚ますと、私はローランドの寝室のベッドに横たわっていた。 そんな私をベッドに乗り上げるように見つめ、必死に名前を呼ぶローランドの姿が目に入った。 あ……この人私を、本当に心配してくれてるんだ。 「アデリナ………!!」 「ロー……ランド…&helli

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?アデリナは死んだの?

     無理言ってお忍びで城下に出かけ、一緒にスイーツを食べたり、オペラを観たり。  でも……結局。 ローランドは私を愛してはくれなかった。 「あの女は本当にろくでもない…」 「金遣いが荒過ぎる。どうにか…」 「全く。仕事もろくにできない、無能な王妃だ!これだから甘やかされて育った…」 普段、ローランドに仕えている臣下達には陰口を叩かれ。 年上の侍女長や専属の侍女達からも、陰で嫌味を言われ嘲笑われる日々。 「王妃が陛下に愛される? 無理無理!あんな性格じゃ死んでも無理でしょ!あははは!」  特に侯爵令嬢のセイディは酷かった。 ムカついて、頭から酒をぶっかけてやったっけ。 廊下で足を引っ掛けて転ばせてやった事も。 ……だから分かってる。煩いわね。 初めから愛されないって分かってるのに、他者が言わないでちょうだい。 「アデリナ様。 私には、アデリナ様の気持ちがちゃんと分かっていますよ。いつかローランド様にも伝わると良いですね。」 落ち込んだ私を励ましてくれたのは、優しいホイットニーだけだった。 ◇◇ その頃になると私は、とある奇妙な夢を見る様になった。 確か…「日本」とか言う場所で「上坂葵」とかいう女の夢を。 長い艶やかな黒髪にパッチリした黒目。 どことなく私に似ている人。 彼女には大好きな夫の「翔」がいるのだが、奴は最低なクズ野郎で、葵を蔑ろにし裏で「麗」と言うクズ女と不倫している。 大人しい性格の葵は私とは正反対で、好きな夫に裏切られて、ボロボロにされてもまだ彼が好きという健気ぶりで…… あー!もう!見ていてイライラするわ! どうして反撃しないの?復讐したら? そんな男の何がいいの? さっさと離婚しなさい

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?アデリナは死んだの?

     ◇◇◇    私はアデリナ。アデリナ・フリーデル・クブルク。    今から約一年前、地図上で言うと母国マレハユガ大帝国のすぐ真下にある、クブルク国の王の元に嫁いだ。 夫は、いつか国との交流で国賓として招かれたローランド・フォン・クブルク。  ローランド六世だ。一目惚れだった。  すらりと伸びた身長。薄水色にも見える、美しい銀の髪。  それを後ろで一本に丁寧に束ねてある。  本当に見事な色。  威圧感のある切れ長の目。口元の黒子。  何事にも動じない性格。  早くに前王の父親を亡くし、まだ若いのに早々と国王になり、立派に国を治めている。    イケメン……!!カッコイイ……!!  好き………!!  滅多に笑わない。逆にそこが素敵! だけど私は大帝国の第一皇女のアデリナ。  幼い頃から父に甘やかされて育ち、自分でも自覚するほど我儘で、傲慢に育った。  直そうと思っても中々直せるものじゃない。 そんな性格が悩みの種で……。 ローランド王に果てしない恋心を抱きながらも、自分の性格の悪さから、彼にアプローチする事ができず。  婚期を逃して二十歳を超えた。  そんな時……  同じく今期を逃したローランド王から、クブルクへの加護を求める要請があったのだ。 「お父様…!クブルクを加護する条件に、私と王との結婚を入れて下さい……!  私、あの方を…ローランド様をお慕いしているんです!」    自分は性格が悪い上に、大事にしたい人達にもつい我儘で、思ってもない行動を取ってしまいがち。  染みついた習慣からつい偉そうにしてしまう。  本音が吐き出せず、すぐ人を傷付ける。  そんな私がローランド王に愛されるはずがない。  分かっていても………好きな人のそばに居たい。    そう思って半ば強引に彼の妻になった。 結婚初夜ではあまりにもローランドがイケメンすぎて、失神しそうになり。  下手な言い訳で彼を困らせた。  本当はそばに居るだけで幸せだった。 それから何夜目かで彼と結ばれて。幸せで幸せで、ただひたすらに幸せで。 どうしても性格だけは直せなかったが、何とかローランドに「好き」の気持ちを分かって貰おうと努力もした。 才能ある画家を雇ってローランドの肖像画を何枚も描かせ、喜んでもらおうとあらゆる場所に飾りまくっ

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?私、上坂葵は死んだの?

     ……つまり私は今、半死状態で死んだ訳ではないってこと……? だとしたら魂が体から抜けて、小説の中のアデリナの体に入ったの!? すごいレアなケースじゃない……!!  って言うか、死にかけの妻の元に、不倫相手を連れ込むなっていうの……! 「……これが中々死なないんだよな。 でもまあ、もう助からないって医者からも言われてるようなもんだし、葵が死んだら家に来いよ。 その時はもう邪魔者もいないだろうから。」 「えー本当に?嬉しい〜そしたら私と結婚してくれる?」 「もちろん。それに葵が死んだら保険金も入るしさ。 離婚届にサインしてなくて良かった。俺達本当にラッキーじゃん。」 堂々と腰に手を回し合い、病室でイチャイチャする二人。 本当にびっくりするぐらい最低なクズ二人だな!地獄へ堕ちろ! もうこんなクズ男どーでもいいわ! それに私、こうなる前に離婚届用意してたんだね? ならこのまま死んだら、別にローランドとイチャイチャしても法律には触れない? ……って何言ってんの!どうしたの私! 血管切れて頭おかしくなった!? とにかくこのまま上坂葵《わたし》の体が死んだら、私どうなるんだろう……? ……それ、あまりに悔し過ぎる! このクズ二人に死ぬ前に何とか復讐してやりたいのに! 「……リナ……」 え?グラリと視界が歪む。病室や翔達も似た様に歪んで見えた。 「………アデリナ。」 誰かが私を呼んでいる。切実な声で。 今にも泣き出しそうな声で。 あれ……ロー…

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?私、上坂葵は死んだの?

     「とにかく人の浮気でいちいち騒ぐな、ムカつくわ。 お前みたいに何の努力もしない女見てると本当に腹立つ。あ〜あ。癒されたい。 つか本当にお前と一緒の空間にいたくない。」 「ふざけないで……!浮気なんて許さないから……!」 「ふざけてないけど?なら別れる? 俺は別にいいよ。どっちでも。 お前といるより浮気相手といる方がずっと楽だし。結婚してから地味になったお前には、もう何の興味も湧かない。」 特に反省した様子もなく、冷めた目をして部屋を出て行く翔を見て私は悟った。 もう……翔の気持ちは私にないんだ。 「うっ……っ、くっ、ううっ……」 崩れ落ちる様にその場にしゃがんだ。 震えと涙が止まらない。 どうしたらいいのか分からない。 離婚……?裁判……? だけど翔と別れたくない。 こんなにも愛してるのに、今別れたら本当に辛い。 ……耐えるしかないのかな。 ◇ 《ねえ、まだ別れないの?いつまで奥さんと一緒にいるの?》 《もうちょっと我慢してよ 結婚した手前、世間体とかあるからさ 後一年…いや半年したら絶対別れるから》  《もう、いつもそればっかり!》 《ごめん、ごめん、怒るなよ 愛してるのは麗、お前だけだからさ》  バレたらバレたで、むしろ翔と麗は堂々と不倫するようになった。 バカみたいに毎日メールや電話でやり取りをし。 デートや不倫旅行も隠そうともしない。 お陰で私とはレスだった。 彼の呆れた言い分はこう。  「不倫を許すなら離婚だけはしないでやる。 有り難いと思え。」

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?私、神様葵は死んだの?

     ………え?私、死んだ? 小説の中の世界でも死んで、現実でも死? そしたら私どうなるの? 今度こそ本当の死……? なんかローランドにキスされて、めっちゃ焦ったんだよね! だって私一応、現実世界では主婦で人妻だった訳だし、ローランドとあのまま流されてヤる訳にはいかなかったから。 だってそれこそ不倫じゃない!? 自分が非難している事をするのは、さすがに違うというか。 ……でも、ローランド。何か必死だった。 って………所でここって?  ピッ、ピッと定期的に心音を告げる音が聞こえてくる。 頭の上には波状を描くモニターが。 ……これって。病院……?  ってあそこに寝てるの、私じゃ!? しかも……何か酸素マスクしてるし、脇には物々しい医療器具やら点滴がいっぱい。 あれ?なんか重体……っぽくない? 「……葵。」 ベッドに横たわったままピクリとも動かない自分の体を、部屋の天井付近から見下ろしている。すぐに自分が霊体だと分かった! だって浮いてるし、半透明だし!  そんな私の体の横にいるスーツ姿の男。 ……あの!クズ野郎じゃない!! 現実世界の上坂葵の夫で不倫男の。 上坂翔《かみさか かける》。 「……やば。奥さんまだ死なないんだ?」 その不倫男の側に立ち、私の顔をじっくりと眺めて不謹慎な言葉を吐くのは、翔の不倫相手の星乃麗《ほしの うらら》。 人の家庭をめちゃくちゃにした略奪女である。 なんか次第に記憶が戻ってきた。

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status