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第2話

Penulis: 芋チーズボール
電話が切られたあと、私は複雑な心境で呆然とバルコニーに立つ。

実は私、今日修也と一緒にインタビューを受けていた女の子を知っている。

彼女の名前は野田彩羽(のだ さわ)。修也の後輩かつ付き人秘書である。

万能のインスタグラムが、以前「おすすめ」として彼女を私に推薦してきた。

付添い用のベッドに横になり、彼女のSNSアカウントを開いてゆっくりとスクロールした。

彼女は恋愛ブロガーで、よく自分の恋愛日記を更新している。

私は以前彼女の投稿にいいねをしたこともあったと思い出すと、自嘲気味に笑わずにはいられなかった。

彩羽の最新投稿の位置情報はフランス。

キャプションは。

【世界で一番幸せなことは、最愛の人とパリでオリンピックを見れること!】

その下には夕日を背景にした二人の写真が添えられている。

夕日の中で、若い女性が背高い男性の懐に飛び込んでいる。

修也の優しさと微笑みに満ちた表情は、ここ数年間私が一度も見たことがなかった。

よく考えてみると、付き合い始めた頃の修也も、同じような目で私を見ていた。

彼が初めてスーツを着た時にネクタイが上手く結べなくて、甘えて私に結んでくれと頼んだ。

私は見よう見まねで、あたふたと彼の首の周りでネクタイを弄った。

ようやくなんとか、ちょっと不格好な結び目ができた。

私は少し恥ずかしくなって、顔を上げて聞いた。「解き直そうか?」

修也は優しくて深い眼差しで私を見つめて、そっと私の頭を撫でてくれた。

「解かなくていいよ、よくできてる。

菜月、これから毎日ネクタイ結んでくれない?」

私は笑いながら彼に抱きつき、軽くうなずいた。

八年も経つと、彼はとっくに当初の約束を忘れている。

前回修也に書類を届けに会社に行った時、彩羽が彼にネクタイを結んでいるのを見かけたことがある。

彩羽がつま先立ちになろうとする時に、修也は笑って従順に腰をかがめた。

彼が彩羽を見る目は、昔の私を見るのと同じで、目の中は溢れんばかりの愛情である。

暗闇の中で画面の光が特にまぶしく、目の端から自然と涙が溢れてくる。

修也と付き合って八年間、無一物から成功するまで彼を支えてきた。

しかし今では、若い女の子がもたらす活気と新鮮さに敵わない。

私は間違えたことでもした?なぜ彼は私にこんなことをする?

胸が締め付けられるように痛み、ベッドの上で全身が震えたが、母を起こさないように必死に歯を食いしばりながら涙をこらえた。

母は重病で、最期の願いは私の結婚式を見ること。今は……まだ彼女を願い通りにすることができるだろうか?

ここまで考えると、私は寝返りを打った。なかなか眠れなかったため、翌朝には目に赤い血が走っている。

手術室の前で、医師が手術の準備をするようにと言って病室中に入った。私が母を手術室に押して入ろうとするときに、彼女は突然私を呼び止めて私の手を握りしめた。

「菜月、母さんは人を見間違えるほど老眼ではない。

母さんが気にするのは、あなたがこれから幸せになるかどうかだ。

だから菜月、心の声に従って選択しなさい」

彼女は母があなたの永遠のよりどころであり、逃げ道だというのを口に出さなかったが、私はそれを読み取ることができた。

私の目が一瞬で熱くなり、抑えきれないほど体が微かに震えて、ゆっくりと彼女の手を握り返した。

手術中、私は病室の外で焦りながら待っていた。Lineには修也からの心配のメッセージが一通すらきていない。

なのに、彩羽のアカウントが更新されているというSNSの通知が飛び込んできた。

彼女の投稿を開くと、キャプションが目に飛び込んだ。

【今日セーヌ川のほとりを散歩しているとき、修也が自分からキスしてくれた!

嫌いな人に会わなくて済むから、彼はフランスにいる間とっても楽しそう】

泣きたくはなかったのに、涙がまだ抑えきれずに流れ出た。

八年前の真夏も、オリンピックの季節だった。

修也は起業したばかりで、どこに行っても門前払いを食らっていた。

全身四千円も持っていないのに、無理やり私を屋台に連れて行って誕生日を祝ってくれた。

彼は嬉しそうに笑いながら言った。「俺が苦労するのは構わないけど、菜月を苦労させるわけにはいかない」

八年経った今でも、私は大汗をかきながら、胸からそっと小さなケーキを取り出す彼の様子を鮮明に覚えている。

東都の夏は火のように暑く、彼がどんなに速く走っても、小さなケーキのクリームはほとんど溶けていた。

彼は少し悔しがり、つぶやくように私に聞いた。「ケーキ屋で買い直そうか?」

私は笑って首を振り、立ち上がってろうそくに火を灯した。

後ろの広いレストランが突然騒がしくなった。飛び込み競争の表彰式の後、ある有名な飛び込み選手が自分の彼女にプロポーズしたのをオリンピックの中継に映っている。

いたるところで人々の歓声と祝福の声が上がっている。

その笑い声と祝福の中で、修也も真っ白な歯を見せて、顔を上げて私に笑いかけた。

私はゆっくりとろうそくの火を吹き消した。

沸き立つ人々の声の中で、当時まだ若く未熟だった私が敬虔に自分の誕生日の願いをかけた。

彼とずっと一緒にいたい。

振り返ってみれば、あの人はとっくに変わっていたのかもしれない。

当時私のことでいっぱいだった修也は、今では東都のハイテク領域において、新しく成り上がった偉い者である。

今、彼の目には会社の百人以上の従業員も、彩羽への溺愛も収まりきれる。

ただその目には私を収まる余裕がない。

その人がとっくに変わっているのなら、私ももう未練を持たない。

今は過去を断ち切り、新しい生活を始める時だ。

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