LOGIN「あなたの報いは、こんなもんじゃ終わらないわ」それを聞き、陽菜は全身を震わせ、瞳に殺意が満ちた。「琴音、私がこんなになっても、まだ許してくれないわけ?凛斗があなたを庇うのは、ほんの出来心よ。彼は私を愛してるんだから!」言うと、遅れてやってきた凛斗が彼女を引き寄せ、思い切り頬を張り飛ばした。「何でたらめを言ってるんだ! 俺がいつ愛してるなんて言った? 愛してるのは、ずっと琴音だけだぞ!」そして、彼はすぐに私のもとへ駆け寄り、慌てて弁解する。「昔はあいつが単純だと思って、少し世話を焼いてやっただけだよ。琴音への気持ちは、今まで一度も変わってないさ。琴音、俺を信じてくれ」必死にご機嫌を取る彼の様子を見て、胃の中が何度も吐き気を覚える。嫌悪感を露わにして、彼を乱暴に振り払った。「あなたが誰を好きになろうと、私には何の関係もないわ。これ以上、私の前で白々しい真似をしないで。吐き気がするだけよ」その言葉を言い捨てて、私はおじさんの腕を引いて裁判所へと踏み入れる。開廷後、凛斗は一部始終を包み隠さずすべて打ち明けた。彼の後ろには、弁護士の一人すらもついていない。彼が最初から言い逃れする気などないこと、私には分かる。しかし、陽菜は完全に乱れ状態に陥っている。「凛斗、頭がおかしいの?こんなことして、自分の将来を台無しにする気?これまでの努力が全部水の泡になるのよ。私まで巻き込んで、あの女のためにそこまでする価値があるの?」凛斗は思わず拳を握りしめ、彼女の顔面に強く振り下ろした。「お前なんか万死に値する。死刑判決を受けたって当然だ!お前を殺して結衣が戻ってこられるなら、何百回も殺してやるぞ!」二人は狂犬みたいに激しく殴り合うが、最後には職員たちによって無理やり引き離された。おじさんは整理したすべての資料を提出し、憤りに満ちた声で口を開く。「氷室凛斗は星野陽菜と不倫関係にあったばかりか、悪意を持って実の娘を死まで至らしめました。断じて許されるべきではありません。氷室凛斗の厳罰を求めるとして、専門家としての資格を剥奪し、永久に同業界への従事を禁ずることを提案します。同時に、氷室凛斗と被害者の母親である桜井琴音の離婚を主張します」言葉が終わるや否や、凛斗は机を叩いて立
「それはあなたの自業自得なのよ。一生その苦みの中で生きて、自分の犯した最低な罪を償いなさい」それを聞き、凛斗は突然、おかしくなったみたいに自身の頬を平手打ちした。一発殴るごとに「すまない」と口にしながら、止まらない涙を流し続ける。「琴音、俺はもう地獄の中で生きてるんだ。目を閉じても開けても、結衣の顔が浮かんでくる。あの子は助けを求めて、お父さん、お父さん助けてって、ずっと叫んでるんだ……でも、俺が結衣の方に行こうとすると、急に姿が消えてしまう。あんな感じは、本当に死ぬよりも辛いんだ!」私だって同じだ。毎晩のように、血の海に倒れながら「お母さん」と呼ぶ結衣の夢を見る。けれど、結衣がもう二度と帰ってこないことは分かっている。心にあるのは、娘への果てしない思いだけだ。しかし、後ろめたさを抱える凛斗は、結衣を思い出すたびに、ただ苦痛に苛まれるしかない。彼の心にある罪悪感が、彼自身を溺れさせるのに十分だった。苦悶に満ちたその表情を見下ろし、私は皮肉めいた笑い声を漏らす。「一生そうやって生きていけばいいのよ。結衣が味わったすべての痛みを、その身で骨の髄まで感じなさい。それだけじゃないわ。陽菜にも代償を払わせてもらう!」 凛斗は血が滲むまで、黙って唇を噛み締めていた。「琴音の言う通りだな。正直、俺も自分自身を許せないんだ。でも、俺には本当に琴音がいないと駄目なんだ。結衣を失って、この世界でたった一人で生きていくなんて耐えられない。琴音のいない生活も試してみたけど、それは無理だった……」それを聞いた瞬間、私はあらかじめ用意しておいた離婚協議書を、彼の顔に叩きつけた。紙の束が彼の皮膚を鋭くかすめていく。「何度言わせるつもなの?私たちは今すぐ、終わらせなきゃならないのよ。あんたの顔なんて、一秒でも見るだけで吐き気がするわ!」そう言い放つと、バンと音を立ててドアを閉めた。外では、凛斗が狂ったようにドアを叩き、私の名前を叫び続けている。偽善に満ちた「すまない」という言葉と、すすり泣く声が廊下に響き渡る。私は耳を塞ぎ、部屋の奥へと歩む。おじさんはすぐにボディガードを呼んで凛斗を荘園から、無理やり引きずり出させた。そして彼の手の甲を容赦なく踏みつけ、力強く踏み
南都市のトップに君臨する弁護士、橘宗介(たちばな そうすけ)は、父の義弟にあたる。私が結婚してから、彼は正式に弁護士を引退し、イギリスの別荘で隠居生活を送っていた。結衣の死に陽菜と凛斗が関わっていると知った時、私は娘のためにけじめをつけると決意した。そして真っ先に思い浮かんだのが、橘おじさんのことだった。「琴音、氷室のやつ、それでも人間か? 自分の娘を愛人の練習台にするとは。結婚した時の誓いを忘れたとでも言うのか? 思い上がるのもいい加減にしろ」おじさんは私以上に結衣を溺愛しており、隠居してからも頻繁にプレゼントを送ってくれていた。結衣が凛斗のせいで爆死したと知り、彼を八つ裂きにしたいほど憎んでいる。私は結衣が遺したスマートウォッチを握りしめ、震える手でそれを彼に手渡した。「ここに陽菜が結衣を拉致して、いたぶった映像が入ってるわ。あの二人を、刑務所へ送ってやって。私と凛斗の関係は、もうおしまいだよ」結婚して五年間、私と結衣に昼夜を問わず寄り添ってくれた凛斗が、こんな常軌を逸した真似をするなんて思いもしなかった。最短で結衣を救出し、苦痛から解放することが、彼にとって簡単であるはずなのに。それが、陽菜のわがままな甘えに絆され、結衣の命をその手に委ねたのだ。かつて私と結衣を掌中の珠のように大切にしてくれた凛斗は、もうどこにもいない。彼への五年間の愛も、一瞬にして灰に消え失せた。私が送ったUSBメモリを受け取ったのだろうか、凛斗もついに、陽菜のしでかした悪行を知ることになった。彼は自らメディアの前で、己の過ちを深く懺悔して謝罪した。しばらく見ない内に、彼の頭には白髪が混じり、目が深く落ち窪んでいた。「すべては俺が星野を安易に信じたせいです。そのせいで娘を死なせ、琴音にも見放されました。俺に専門家を名乗る資格はありません。ただの、ろくでなしです!」彼は事の顛末をすべて語り、数え切れないほどの「申し訳ありません」を口にした。しかし、ネット民がそんなものを鵜呑みにするはずがない。【英雄だと思ってたのに、愛人のために自分の娘を犠牲にするなんて、人間のクズかよ】【星野なんて資格証すら持ってないじゃん。勝手に爆弾を解体させるとか規程違反もいいとこだろ。なんでそんな奴を信じたのか】
映像の中では、陽菜が結衣の首を強く締め上げながら、容赦ない言葉で脅している。「このクソガキ、あんたの母親と同じで目障りなのよ。凛斗との愛を奪い合う気なんて、死ねばいい!でも、ただで死なせるわけにはいかないわね。凛斗に私の才能を認めさせるための生贄になってもらうわ。あんたも吹き飛ばせるんだから、一石二鳥でしょ?次は母親の番だね。地獄で仲良く親子再会させてあげるから!」そう言うと、結衣の口をガムテープで塞ぎ、その体を思い切り蹴り上げる。「あんたもあの女も、本当に反吐が出る!」結衣は無残にも床に這いつくばり、叫ぼうとしても声が出せず、顔を真っ赤にして苦しんでいる。目の前の光景は、鉄槌となって凛斗の心臓を容赦なく打つ。窒息になるまで痛めつけられる娘の姿に、胸が痛む。そして何よりも、結衣を拉致した真犯人が、自分が誰より甘やかしていた陽菜だったとは!映像に映る女の醜悪な本性に、彼は目を疑う。これ以上見ていられず、パソコンを閉じると、すぐ電話をかけて陽菜を呼びつけた。ドアから入ってきた女は、散らかった部屋を見るなり、白々しい態度で口を開く。「凛斗、元気を出して。きっと良くなるわよ。これからは私がそばにいるから。ねえ、一緒に住んで……」その言葉が終わるより早く、重い平手打ちが彼女の頬に落ちた。陽菜は目を丸くして、信じられないように目の前の凛斗を見つめる。「ど……どうしたの?」とぼける彼女を見て、凛斗はさらに頬を張り飛ばした。「よくもどうしたなんて聞けるよな!結衣を拉致したのもお前なら、わざと爆発時間を縮めたのもお前じゃないか!陽菜、このまま済むと思うなよ!」陽菜は恐怖のあまりその場に這いつくばって、命乞いを始める。「凛斗、本当にわざとじゃないの。私を信じて。ほんの出来心だったの。私を見捨てないでよ!」凛斗は彼女を一気に蹴り飛ばし、目を血走らせて咆哮する。「出来心だと? 完全に計算してやったんだろうが!結衣を殺して、次に琴音まで消すつもりだったじゃない。ふざけるのも大概にしろ!」それと共に、彼の拳が女の顔面を無慈悲にぶつける。陽菜は顔中血まみれになりながらも、無様に這い寄ってくる。「お願い、今回だけは許して。私のこと、愛してるでしょ?こんなに
「身の程を知れ」凛斗が言い捨てるや否や、助手が血相を変えてドアを押し開け、慌てて言う。「氷室様、ここにいらっしゃったんですね!何度も電話したんですよ。……爆発で亡くなった被害者は、お娘さんなんです!」その短い一言で、凛斗の頭の中に激しい耳鳴りが響き渡る。彼は口をパクパクとさせ、しばらくしてようやく声を発した。「お前……何を言ってるんだ?冗談だろう? 俺はトップクラスの専門家だぞ。俺の娘が爆弾で死ぬわけがないじゃないか」その様子を見て、助手は急いで死者の資料を取り出す。「本当です。間違いありません。それに、本部も氷室様の責任を追及する構えです……誰かが通報したそうで」凛斗は資料をひったくって見た。そこに貼られている写真は、紛れもなく結衣のものだ。途端に激しい目眩いに襲われ、世界全体がぐるぐると回り出すような感覚に陥る。自分の目の前で、何よりも愛する娘が命を落としたなど、到底信じられないのだ。「ありえない。時間はまだあったはずなのに……」その時、ふと琴音が泣き崩れていた姿が脳裏をよぎる。「凛斗、一時間遅れることが何を意味するか分かってるの?」「結衣を助けに行かないと、絶対に後悔するわよ!」この二つの言葉が頭の中で響き続ける。まるで彼を少しずつ、深淵へと引きずり込んでいくかのようだ。まさか、カウントダウンは本当に一時間短縮されていたというのか?凛斗はゆっくりと首を巡らせ、陽菜を見据える。「本当のことを言え。お前が教えてくれた時間は嘘だったのか?答えろ!」陽菜は目を丸くして驚き、しどろもどろになりながら弁解する。「私が凛斗に嘘なんてつくわけがない! 爆弾が早く爆発したなら、きっと犯人が何か細工をしたのよ」その言葉を、凛斗は半信半疑で受け止める。だが、誰が細工をしたにせよ、彼の娘が爆死したという事実はもう変わらない。突如として押し寄せてきた苦痛が、彼をきつく締め付ける。「結衣、お父さんが悪かった。守ってやれなくてごめんな……」凛斗は力なく床にへたり込み、全身を震わせて慟哭する。業界の誰も、彼がこれほどまでに弱い姿を見たことはない。陽菜は彼を慰めながらも、心の中では密かに笑っている。あのガキがいなくなれば、琴音も悲しみのあまりに、二
がらんとした部屋のどこにも、結衣の姿は見当たらない。気付けられるのは、コンクリートの床に四方八方へと飛び散り、彼の足元まで広がっている血痕だけだ。後から追いついてきた記者たちも、目の前の惨状で、その場に立ち竦む。しばらくして、凛斗はようやく自分の声を取り戻した。「こ……こんなこと、あり得るわけがない。まだ十数分も残っていたはずだ。処理するには十分すぎる時間なのに、どうして爆発なんかが?」その体は大きく揺らぎ、今にも崩れ落ちそうになる。傍らの手すりにしがみつき、かろうじて立っている状態だ。ふと、何かを思い出したように、彼は慌てた様子で工場の責任者を呼びつけた。「一体何が起きたんだ?すぐに監視カメラを確認しろ! こんなの、絶対にあり得ないだろう!」責任者が背を向けようとしたその時、突然陽菜がその前に立ちはだかり、凛斗を見る。「凛斗、まさか私のことを信じてくれないの?ちゃんと設定しておいたもん。あの子は絶対に無事なはずよ」だが、目の前に広がる血痕は、どう見ても無事な様子ではない。凛斗の躊躇を感じ取った陽菜は、目を細めてこうけしかける。「私の推測だけど、きっと琴音さんがあの子を助け出したのよ。この床の血も彼女が偽造したもので、私に恥をかかせようとしてるに違いないわ」そう言うと、彼女は悔しそうにすすり泣きを始める。凛斗は少し考えを巡らせば、わずかに安堵の息を漏らす。「もし本当にそうだったら、琴音のやつ、やりすぎだろ。結衣の体に縛り付けられた爆弾が爆発するのを恐れていないのか?」そう言うや否や、凛斗は急いでスマホを取り出し、琴音に何度も電話をかける。結衣のスマートウォッチにまで電話かけた。しかし、返ってくるのは冷ややかな機械の音声ばかりだ。「おかけになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか……」その声を聞くたびに、どうしようもない焦燥感がする。陽菜がそっと彼の腕を引いたことで、ようやく我に返る。「琴音さん、あんなに結衣ちゃんを大事にしてるんだから、きっと解除する方法を見つけたのよ。気が済んだら、きっと帰ってくるわ。とりあえず授賞式の会場に行きましょうよ。凛斗と一緒にコンビとして注目されたおかげで、主催者側が賞をくれることになったの」今の彼にとっ