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第56話

Author: 結奈々
「飲めないなら無理しなくてもいいよ」時也が口元に笑みを浮かべる。「こういうのは、お互い納得してこそだから」

弘志はグラスを握る手に思わず力が入り、テーブルを一目を見たあと、いろいろと計算した末にきっぱり答えた。「飲みます!」

さっきあの連中は柚香のせいで機嫌を損ねてしまった。もう一度協力してもらおうと思えば、ここで出された酒なんかよりもっと厄介なものを飲まされるに決まっている。欲しいのはチャンス。なら、遥真からもらう方がいい。

彼さえその気なら、この先一生、食うに困ることはない。

そう腹を括った途端、一杯また一杯とあおり続けた。

時也は空になったボトルが次々積み上がっていくのを眺め、隣の男を横目に見た。

……どんだけだよ!

ドンッ!

最後の一本が空になった頃には、弘志はもう完全に潰れていた。足元もおぼつかず、口も回らない。それでも目的だけは忘れていない。「ほら、全部飲みましたよ」

「うん」遥真は淡々とした声を返す。

弘志が何か言いかけたそのとき、遥真は立ち上がり、彼を一瞥することもなく外へ歩き出した。慌てて行く手を塞ぐ。「は、遥真さん!チャンスって結局なんなんですか!」

「本当は、君の会社を建て直すつもりだった」遥真の冷えた眼差しが一度だけ弘志を射抜く。その黒い瞳は、まるで氷のように冷たい。「でも柚香に手を出した時点で、その話は消えた」

弘志はぐちゃぐちゃの頭でその言葉をなんとか理解し、数秒後、顔を真っ赤にして怒鳴った。「俺を弄んだのかよ!」

遥真は振り向きもせず、冷え切った足取りで歩き続ける。

弘志の頭は怒りで真っ白になった。

柚香のところで受けた屈辱に、さっきのやり取りで積もった怒り。それらが酒に火をつけ、感情は一気に爆発した。傍にあったボトルを掴むと、遥真の後頭部めがけて振り下ろした!

――遥真がなんだってんだ。

こんな扱いをしていいと思ってるのか!

立場から言えば、自分はあいつの「義父」だ。何年も助けてくれたことは一度もないくせに、今になってこんな仕打ちか、そう思うほど弘志の目には狂気が宿り、振り下ろす力は限界まで強まった。

「ガキッ!」遥真は振り返りざまにその手首をつかむと、容赦なくねじった。

弘志の腕は一瞬で外れ、痛みの悲鳴を上げる間もなく、遥真の蹴りが飛んだ。

ガンッ!

ガラガラッ。

一連の音とともに、弘志
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