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第88話

Auteur: 結奈々
「ここで大丈夫です」柚香は断ろうとした。

けれど、一人で大勢の勧めを跳ねのけられるはずもなく、あれこれ不本意ながらも上座のすぐ隣に座らされてしまった。幹部たちは、彼女に異様なくらい丁寧だった。

柚香は落ち着かず、居心地の悪さを隠せない。「私なんてただの平社員ですよ。ここに座るなんて、場違いです」

「何が場違いだよ。ここが君の席だ」彼らは笑顔で続ける。「困ったことがあったら何でも言ってくれ。力になるから」

ここまでくれば、柚香にもだいたい察しがついた。上場企業の株主たちが、ただの社員である自分にこんなに気を遣う理由なんて一つしかない。

――遥真だ。

遥真が彼らに何を言ったのか、あるいは彼らが勝手に誤解しているのかは分からないが、自分の入社が「遥真の仕込み」だった可能性は、九割近く確かだ。

柚香はそっと拳を握り、立ち上がって「自分は遥真とは関係ない」と伝えようとした。

ちょうどそのとき、個室の扉がもう一度開いた。

ライトグレーのオーダーメイドスーツを身にまとった遥真が、片手をポケットに入れたまま入ってきた。白い横顔は相変わらず完璧で、スラリとした脚はスーツに包まれ、彼が一
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