ログイン-⑤疑問-
補習で静まり返った校舎、先日の火災(というより義弘の黒服たちによる計画的犯行)で全焼した校舎は跡形もなくなっていた。養護教諭の乃木(のぎ)が当然とも言える質問を投げかけた。
乃木「理事長先生、少しよろしいでしょうか?」
義弘「どうした。」 乃木「育ち盛りとも言える生徒達に対して一切の飲食を禁ずるのは如何なものかと思うのですが。」 義弘「君は私の考えに、いや、私に反逆するのかね。」 乃木「いや、そんなつもりは。申し訳御座いません。」 義弘「構わないよ、そう思うのも無理はない。いや、養護教諭として当然の事だ。だったら人間がどうして空腹になるのかをご存じかね。」 乃木「食べて・・・、動くからです・・・。」 義弘「いいだろう、ではどこが動くからだ?」 乃木「全身ですか?」 義弘「いや、胃袋だ。人間が食物を食し、食道を通り胃袋に入った後、消化しようと動く。その時にカロリーを消費する、逆に言えば食さなければカロリーを消費しない。」 乃木「しかし女子は1日225・・・。」 義弘「女子は1日2250㎉、そして男子は2750㎉必要だ、しかしそう言った摂取を毎日のように続けるとどうなると思うかね。」 乃木「健康な・・・。」 義弘「健康?何をとぼけたことを言っているんだ君は。摂取を続けると起こりうるのは老化だ。」 乃木「でも昼休みをなくしてまで生徒が努力して夢を追うための栄養を奪うなんて・・・。昼休みをなくす必要は無かったはずでは?」 義弘「努力?夢?何を馬鹿な事を言っているんだ。大切なのはそんなものではない、数値と結果だ。そしてその数値たる結果を何が生み出すと思う、力だ。それも経済力と権力だ。世の中を動かしているのは何よりも金と運気だということを君も知っているだろう、乃木建設のお嬢さん・・・、それでもまだ努力や夢などと馬鹿な事をほざくかね、確か君の所は我が財閥の子会社だ、それに君が前回の赴任先で何をやらかしたのか、私が知らないとでもいうのかね、私が口止めしていなければ今頃・・・。」 乃木「では昼休みのけ・・・、いや申し訳御座いません。」 義弘「そのことも兼ねていずれは諸々を話すことになるであろうが、今は言えない。私が最強になり望みを全て叶えるために。」 乃木はずっと震えていた。かなりの圧力をかけられている様だ。どちらかと言うと「3食しっかり食べましょう」と標語を出さねばという仕事をしているのに全然義弘の言葉に反論しようとせず、一切の食事を禁ずる義弘に賛同している様だった。そのせいかやせこけた生徒が目立ち始めている。しかし制服がわりの囚人服のようなジャージで体系が分かりにくい。今の態勢になってから数か月、相変わらず授業と補習のみの毎日の連続に慣れてきた頃、最近は週末に企業の摸試が校内で行われるようになり、また補習にきている講師の通勤している塾でも摸試を作成していたので生徒たちは毎日のように学校に通うようになっていた。摸試の日も当然の様に食事禁止、その上1日に複数の企業が作成した摸試を受ける日もあった。授業の内容も難しくなって来た上に余復習や日々増えていく宿題、摸試の反省などでバタバタと倒れていく生徒が後を絶たず、毎日のように救急車が来ていた。しかし、教師や講師に何を吹き込まれたのか全員次の日には無理やりにでも学校に来ていた。結愛の2年1組や海斗の3年1組の生徒達は2人のお陰で何とか生き延びていた。
守「なあ、結愛の親父さんって本当にお前が来たいって言っただけでここの理事長になったんかな。」
結愛「う―ん、親父って昔から影があったからな・・・。」 圭「「蹴落としてでも最強に」って言ってたね。」 琢磨「自分がなりたがっている様な言い方もしていたな。」 守「でも陰ってどういうことだよ。」 結愛「あそこに俺達の家があるだろ。」結愛は浜谷商店のあった方向を指差した。貝塚邸が佇む。
結愛「あの家な、親父しか入れない場所が沢山あって俺も全部を把握してねぇんだ、下手すりゃそこに秘密があんのかもな。」
守「ふーん・・・。」守はそこまで深くは考えずに会話を楽しんでいた、相変わらずの日常が幕を閉じようとしている。放課後の補習が終わった後だったので21:00過ぎで真っ暗な夜道を圭と帰って行った。海斗と結愛はいつも間にか大人の前用の服装に着替えて家に入っていく。ただ、後ろにコーラを隠し持って。それを見て守と圭はクスリと笑った。
やはり結愛はこちら側の人間で、仲間だった。-330 託児所の存在理由- 知らぬ間にすっかり託児所と化してしまった社長室を見て深くため息を吐く結愛、ただ壁紙等を本格的に変えた訳ではなくベビーベッドを数台持ち込んで作った簡易的な物だったので致し方なく承認する事に(と言うかもう既に行動を起こしてしまっているので時すでに遅しと言うべきだろうか)。結愛「あのな・・・、別に構わねぇんだけどせめて俺に一言言ってくれないかな。」ヒドゥラ「別に良いじゃ無いの、あんたここには偶にしか帰って来ないんだから。」 秘書長が言っている事は正論だった、普段は支社・営業先回りや今日みたいに現場の作業を手伝っている事が多いので正直殆どこの部屋で働いている事は少ない(ただハッキリ言ってしまえば今日はほぼ遊びなのだが)。結愛「それを言われてしまうと否定が出来ねぇな、ただ言い出しっぺは誰なんだよ。」 何となく嫌な予感がしたが念の為に確認する全身ジャージ姿の代表取締役。女性「私に決まっているだろ、聞く程の事じゃ無いはずだよ?」結愛「やっぱりか・・・、相変わらずおばちゃんの行動力には敵わないな・・・。」 結愛はもう笑う事しか出来なかった、本人が予想した通りそこにいたのはダンラルタ王国にある貝塚財閥魔獣保護養育施設所長でアーク・ワイズマンの貝塚美玖であった。本社の社長である結愛でも流石に叔母には頭が上がらない、それが故に諦めの気持ちでいっぱいだった。美玖「そんな事より結愛、あんたも抱いてみたらどうだい?案外可愛いもんだよ?」 託児所(もうこう呼んでも良いか)と言えどやはりここは異世界、ベビーベッドには生まれて間もない鳥獣人族(ホークマン)や龍(ドラゴン)の赤ちゃんがすやすやと眠っていた。結愛「そうしたいのは山々なんだが俺今から土いじりしないとだから行くわ、部屋は暫く使ってくれて良いからまた抱かせてくれや。」 社長はそう言うとバハラの家庭菜園へと『瞬間移動』で戻った、戻った先ではキャベツの収穫が始まろうとしていた。好美「お帰り、「すぐ戻る」って言ってたのに時間かかったみたいだね。」 3人の目の前で頭を悩ませる様子の結愛、大体想像は付くのだが・・・。美麗「あれ・・・、何かあった?」結愛「いや実は・・・、かくかくしかじかでさ。」 だから前にも言ったかも知れないけど絶対伝わってると思えねぇんだが・・・。バハラ「え?結愛ち
-329 お人好し達- 貝塚運送を設立してから数週間後、結愛はヒドゥラに決して無理をして欲しくないという理由で本社に「秘書課」を新設していた。極端な人員不足を起こさない事を考慮する為に数々の課から優秀な社員を1人ずつ引き抜き今までラミアが1人で行っていた作業を割り振っていたのだが、本人達にとって未だに慣れない事が多かったので車両のメンテナンスの空き時間を割いてヒドゥラが所々サポートしていた様だ。本人曰く「一緒に行った方が仕事の流れ等を説明しやすい」との事だが、これだと意味がない気がしてならない。 美麗の話を聞いて気が気でなかった結愛は取り急ぎ本社の秘書課へと連絡を試みたが、誰も電話に出なかったので着の身着のままで向かう事に(と言うかヒドゥラに直接『念話』を飛ばせば済む話だと思うのだが)。結愛「仕方が無いな・・・、ちょっと様子を見て来るわ・・・。すぐ戻るから3人はお茶でも飲んでいてくれないか?」好美「分かったけどさ、お茶なんて皆持って来て無いよ?」結愛「え・・・、そうなのか?」 何となく嫌な予感がした結愛は後頭部を掻きながら『瞬間移動』する事に、大したことが無いと良いのだが・・・。結愛「よいしょっと・・・、あれ?」 最近改築を行い広くした秘書室には誰一人いなかった、何処からどう見ても「もぬけの殻」という言葉がぴったりの状態だ。一先ず結愛は美麗の前で演技をしてた時の呼び名で車両メンテナンス係兼秘書長を呼んでみる事に、ただ相手の方はちゃんと覚えているのだろうか。結愛「ヒドゥー、いるんだろ?俺だ、結愛だぞ?」 すると部屋の奥で何かしらが蠢く気配がした、ヒドゥラが『人化』を解除して何処かに忍び込んでいるのだろうか。結愛「何だ・・・、まさかまた仕事サボってかくれんぼをしてんじゃねぇだろうな?この前あれ程口を酸っぱくして「休憩時間だけにしろ」って言ったのに懲りない奴らだな。」 これは秘書室が広くなったばかりだった日の事だ、ラミアである自らの特性を活かしたヒドゥラは新たに出来た部下たちと交流を深める為に「1人でも自分を見つけて捕まえることが出来たら賞金を与える」という何とも子供っぽいゲームを行っていた。ただ各々のデスクで書類が山積みになりかけていたのを結愛に目撃された為に「これは流石に他の社員たちに示しがつかないので休憩時間だけにしよう」という決まりになっ
-328 労働者の権利- 当然の様にピューアに断られた好美は一先ずバハラにある程度の場所を聞いた後に『探知』を使用して狙いを定め『瞬間移動』した、まぁ以前から転生者達がよくやっていた事だったので今頃説明する必要もないのだが。好美「ここが・・・、バハラさんの家庭菜園?何と言うか・・・、思った以上に凄いね。」 おおよそでの推測だが、そこには大体20ha(ヘクタール)程の広大な畑が広がっていた。周囲には滝や河川が存在して水車が設置されている、どうやら農耕に必要な水は基本的にそこから引いている様だ。 好美は目を輝かせながらど真ん中に広がる畑を指差して尋ねた、一目見ただけだがこの家庭菜園でも1番面積を使用している様に思われる。好美「この畑で作っているのは何?」バハラ「これかい?これは玉ねぎとキャベツさ、やっぱり年中の消費量が最も多い野菜を作るのが良いかなと思ってね。」 確かに日本(元の世界)における玉ねぎの消費量は他の野菜に比べれば断トツに多い、それに家庭料理におけるキャベツの使用率も高いというのが事実だ。ただそれらが1つの畑で育てられる事などあるのだろうかと困惑してしまうがやはりそこは「何でもありの異世界」、神々が便利な様に気候まで作り変えてしまったのだろう。よく考えれば光の家庭菜園でも野菜が良く育っていた様な気がするが・・・、関係無いか。バハラ「丁度美味しく育った時期だと思うからそこから収穫していこうと思っていたんだ、好美ちゃんが来てくれて助かったよ。手伝ってくれるかい・・・、ってあれ?いつの間にか人数増えていないかい?」好美「へっ・・・?」 好美が後ろに振り向くと知らぬ間に転生者が2名程ついて来ていた様だ。好美「結愛に美麗!!」結愛「偶には俺達も土いじりしたくなるじゃねぇか、悪くねぇだろ?」美麗「そうだよ、こんなに楽しそうなイベントを好美に独り占めさせるなんて勿体ないよ。」 まず「イベント」と呼ぶべきか分からない上にただの土いじりでは無い事をご理解いただきたい、それに大企業の代表取締役社長である結愛がその様な事をして良いのだろうかと考え込んでしまうし光明はどう思っているのだろうか。好美「2人共、仕事は大丈夫な訳?」美麗「私は有給取ったから問題無いよ、貝塚運送(結愛の所)って前の会社より良い所だから助かるんだよね。」結愛「いやいや、労働
-327 必要な(?)準備と件- バハラに指摘された好美は流石に自分の格好が恥ずかしくなって来たので自室へと『瞬間移動』して着替えをし始めた、何となくだが最初から家庭菜園を見に行くだけと分かっていたはずだった者が選ぶ服装にしては恥ずかしくならないかと疑いの目を持ってしまうのは俺だけだろうかと思い悩んでしまう。 数分後、Tシャツとジャージの長ズボンに着替えてきた好美はグラスとピッチャーに入った水を片手に戻ってきた。確かに暑いのは分かるがそれ飲み過ぎじゃないか?バハラ「好美ちゃん、今日ってそこまで気温が高かったかい?テレビでは平年並みって言ってたけど・・・、もしかして熱でもあるんじゃないのかい?」 『状態異常無効』のスキルにより熱が出るどころか風邪を引く事は無いと思われる好美が顔を赤くするなんてよっぽど事ではないだろうか、いや気の所為だったら良いんだが。好美「バハラさん・・・、私だって女の子だよ?「恥ずかしい」っていう感情位あるもん。」 改めて言う事じゃないが「恥じらい」は男女関係なくある物だと学んで欲しい今日この頃、この場に守がいたらどう言うんだろうな・・・。好美「何?守は私に反発なんかしないもん!!」 確かにな・・・、好美の性格の事を考慮したら反発しづらいのも分からなくも無いな。好美「ちょっとあんた、それどう言う意味?」バハラ「そうだよ、私の可愛い娘を泣かせちゃ許さないよ。」 バハラさん、好美は別に良いとしてその言葉は俺じゃ無くて守に言うべきなんじゃ無いのか?俺が登場人物をどうしようが勝手だろうがよ。バハラ「いや、関係なくないね。私は1度でも「大切にしたい、守りたい」って思ったら徹底的にそうするって決めているんだ。謝るなら今の内だよ、でないと作者のあんたでも絶対許さないからね!!」 これはまずいな・・・、これから絶対活躍するであろうティアマットを敵に回す訳にはいかないからな・・・。あの・・・、本当にすみませんでした!!バハラ「分かれば良いんだよ、それで何の話だっけ?」 ほ・・・、ほら、好美がバハラさんの家庭菜園に行くところじゃ無かったですか?バハラ「そうだよ、やっと好美ちゃんがマシな格好をして来たから行こうかって思っていたのにやたら水を飲んでいたんだよね。」好美「暑かったから喉が渇いていたんだもん、しょうがないじゃん。」 本人は
-326 やる気満々なのは分かるが・・・- 自室へと慌てて『瞬間移動』した好美は、急ぎメイクを施して店舗へと戻ってきた。特に知識がある訳でも無いのだがそう言った事は落ち着いて行うべきでは無いかと思ってしまう俺が予想した通り、好美のメイクが少し雑になっていた様なのでバハラによって手直しがなされた様だ。バハラ「もう何考えてんの、時間はたっぷりあるんだから落ち着きなさいよ。」好美「ごめんって、早く畑を見てみたくてウズウズしてたの。」 好美の言葉に何かしらの違和感を覚えるバハラ、気の所為だったら良いのだが。バハラ「何言ってんだい、私(うち)のはただの家庭菜園だよ。そこまでハードルを上げられると困るじゃないか、はぁ~・・・。」 メイクの手直しをしながら深くため息を吐く混沌龍、ただ少し楽しそうにしている様にも見える。好美「な・・・、何?」バハラ「何も無いから気にしないでおくれ、ただもう1人娘が出来た様で嬉しくなっちゃってね。」 ヌラルの実年齢は2298歳だが人間で言ったら丁度大学生位(だから大学で勉強する事になったと言っても過言では無いのだが)、大学を卒業してから数年後に亡くなってこの世界に転生して来た好美がそのままの姿でずっといるのでバハラがそう思っても仕方が無い。好美「もう学生じゃないもん、ちゃんと仕事している社会人だもん。」バハラ「悪かったよ、王城で夜働きながら店を経営しているだなんて凄いじゃないか。あんたみたいなのが私の上司になるだなんて想像も出来なかったんだよ、あんたの為なら何でもするから許しておくれ。」 まずいぞ・・・、好美の顔がニヤついている気がするんだが・・・。好美「ねぇ、今「何でもする」って言った?」バハラ「私に出来る限りの事は・・・、だよ?」好美「言ったね、言ったよね?」バハラ「何だい、急に態度を変えられると困るじゃないか。」 突然テンションを上げる好美に思わずタジタジになってしまうバハラ、またオーナーの悪い癖が出なければ良いんだが・・・。好美「いやね、ヌラルも食べてたって言う「アボカドとトマトのサラダ」をうちで出せないかなと思ってさ。」 あら、意外な事を言うもんだな。取り敢えず・・・、悪い想像して・・・、すんません。バハラ「好美ちゃんが良いなら私は別に構わないけど・・・、本当に良いのかい?ただのサラダだよ?」好美
-325 混沌龍の考える将来- 相も変わらず自分の都合を優先させたオーナーが突如店の厨房で炒飯を作って逃げる様に『瞬間移動』でその場から離れた頃(いや絶対逃げただろ)、結愛はヌラルが描く将来のビジョンを聞いて少し頭を悩ませていた。別にそこまで結愛が介入するような問題では無いと思うのだが、理事長として可能な限り学生達の希望を叶えてやりたいという気持ちがあった様だ。結愛「確かにな・・・、強制収容所でお前の母ちゃんの話を聞いているから気持ちは分からんでも無いがそう簡単に行かんだろう。まず第一に好美が頭を縦に振るかどうか・・・。」ヌラル「ダメ・・・、かな・・・。」結愛「い、いや・・・!!決して駄目じゃねぇよ、ただそれに関しては俺の一存で決めて良い訳じゃ無いから一旦好美に相談しないといけないじゃねぇか。」 何を隠そうヌラルがバイトとして採用された「暴徒の鱗 ビル下店」で全権を握っているのはオーナーである好美だ、ただ好美が承認したからと言って店の従業員達を動揺させる訳にもいかないと考えてしまう。何となくだがそう言った事がしっかりしている所は好美とは違うねと褒めたくなるのは俺だけだろうか、よく考えてみれば鮪やら白菜やら・・・。好美「はー・・・、っくしょん!!風邪引いたかな・・・。」 気分を変えようと自宅の露天風呂を楽しみながら昼呑みをする噂のオーナー。おいおい、本当にそう思うなら早く出ろって。湯冷めしても知らねぇぞ?好美「余計なお世話よ、ってかあんた何処から話しかけてんのよ!!この変態!!」 大丈夫だって、一応手で目隠ししているから安心しろって。好美「それ1番信用出来ない奴じゃん・・・、まぁ別に気にしてないけど。」 気にしろよ!!恥じらいを持てって以前から言ってんだろうがよ!!まぁ良い、このまま言っていても話が進まねぇだけだからこれ位にしておくか。 ヌラルの思いを汲んだ結愛が色々と悩んでやっと好美へと『念話』を飛ばして来た、すぐに聞けば済む話だと思うが今は何も言うまい。結愛(念話)「好美・・・、ちょっと良いか?」好美(念話)「ちょっと待って、今服着るから。」結愛(念話)「いやお前、着替えながら『念話』出来ねぇのかよ。そこまで不器用じゃねぇだろ。」好美(念話)「別に良いじゃん、ついでにメイクも落とそうと思っていたんだからさ。」結愛(念話)「この時
-㉝ 馬鹿げた噂- 龍太郎は油淋鶏をおかずに白飯を頬張る結愛を調理場からチラチラと見ながら数回程首を傾げていた、何処か違和感があったからだ。高級外車で店にやって来た大財閥の代表取締役はそんな店主に気付いて一言尋ねた。結愛「さっきから何だよ、俺の顔に何か付いてるか?」龍太郎「いやすまねぇ、いつもそればっかり食ってるのにやたら美味そうに食うからよ。」結愛「大好物の美味いもんを不味そうに食えって言う方が難しいだろう。」 義弘による残虐な独裁政治が終末を迎えてから数日後、守や圭と一緒に松龍に来て初めて食べたこの「油淋鶏定食」に惚れこんだ結愛は店に来るとこればかり頼んでいた。龍太郎「そうだ
-㉜ 高嶺の同級生との再会- 麻婆豆腐の追加注文が入ったので、龍太郎が必死に鍋を振っている横をお手洗いを済ませた守が浮かない顔をして通った。 守の表情を見た店主兼警視総監はさり気なく電話の内容について聞いてみる事にした。龍太郎「おい守、さっきまでの元気はどうしたんだよ。結愛ちゃんは何て言ってたんだ?」 結愛も守や正と一緒にちょこちょこ店に来ていたので龍太郎にとっては友達みたいなものだった為に普段から「結愛ちゃん」と呼んでいた。守「好美の事故についてだったんだけど、どうやら義弘が関与しているらしいって言ってたんだ。」 警視総監として義弘についてずっと捜査しているので龍太郎は勿論知っ
-㉗ 一歩を踏み出す- 少し浮かない表情を見せる守の様子を見て自らの言動に気掛かりな事があったのではないかと懸念し始めた真美は一息ついてから守に声を掛けた。真美「真美、何かまずい事言っちゃった?」 自分の事を名前で呼称するのも姉の真帆と変わらない、これも一卵性双生児だからだろうか(※因みに作者は二卵性双生児です)。守「いや、そんな事無いよ。ちょっと死んだ昔の彼女の事を思い出しただけさ。」真帆「また思い出してんの?いい加減にしろ、守!!」 顔を赤くした真帆は酔った勢いで守に怒鳴りつけた、いつも付けている「兄ちゃん」を忘れる位だから相当だ。真美「お姉ちゃん、呑み過ぎだから!!守兄ち
-㉕ 釈放後の様子- 次の日の朝から龍太郎と王麗は行方不明とされていた義弘が暮らしていたと噂される山小屋へと向かった、暗い木々の中にひっそりと立つその山小屋は何処からどう見ても廃墟としか思えなかった。王麗「父ちゃん、気味が悪くてどう見ても人が住んでいたなんて思えないよ。私、何か寒気がしてきたんだけどね。」龍太郎「敢えてこういった場所を選んだんだろう、でないと行方を眩ませることなんて到底出来ないからな。ほら母ちゃん、見てみな。」 龍太郎は少し遠くの方向を指さした、よく見てみるとコンビニのおにぎりの食べカスが捨てられている。何故か全部「ツナマヨ」だったのが少し気になったのだが。王麗「あ