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2. 「最強になるために」④

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-01-21 11:31:43

-④残酷な破壊と手紙-

 守や結愛たちが教室で最初の補習の準備をしていると、クラブハウスや校内の部室から私物をさせてきた「元」部員達が続々と帰ってきた。荷物が多い生徒や少ない生徒、中には高価な宝飾品を持っていたものもいた。結愛が宝飾品に反応していたので多分本物だろう、どこのブランドの物かは想像もできないがかなりの高級品そうだ。必要なのかどうかは正直分からないものが正直な気持ちでこれらを先生たちが見たらどういう反応をするのだろうか、特に湯村先生が。

 「以前」湯村先生には毎日決まって同じ食堂に食事を取りに行く習慣があった。自由な校風だったため、昼食を校外に食べに行っても大丈夫だった。守や琢磨もその食堂でちょこちょこ食事を行っていたので先生の事をよく見かけた。湯村先生本人は毎回同じメニュー「小ご飯とみそ汁」のセットをしみじみと噛みしめながら食べていた。小さめのお茶碗1杯のご飯と優しいお出汁の味が嬉しい温かなみそ汁。具材は豆腐と若布(わかめ)。そして店主自家製のお新香が付いて180円という価格。毎日そのセットを食べていた、ただ本人たちの給料日にはたまの贅沢にとポテトサラダや白身魚のフライといったおかずを一品食べる様にしていたらしい、本当にとてもうれしそうな表情をしながら。ただ、左手の薬指に指輪をしているので結婚はしているらしい、奥さんは忙しい人なのだろうか。もしくは高校生のおこづかい程度の価格で食事が提供されるこのお店で食事をしなければならない位厳しくされているのだろうか。しかし、詮索はよしておこう、いくら何でも本人が可哀そうだ。

 さて、そんな湯村先生が先程の宝飾品を見ると自分が教師であることを忘れる位の気持ちになってしまうのは明白。守たちも呆然と立ち尽くしていた。いよいよ義弘が言っていた「1時間後」が来ようとしている。

 まだ守たちは結愛を完全に信用している訳ではなかった。性格から見て結愛や海斗は義弘に反発している様だがやはり2人は貝塚財閥側の人間、いつ義弘側についてもおかしくはない。

守「お・・・、お嬢様?」

結愛「ああ、結愛でいいよ。」

守「じゃあ・・・、結愛?一つ聞きたいんだけど。」

結愛「何だよ。」

守「俺たちはどうやって結愛の事を信用すればいいんだ?仮にも貝塚財閥の人間だよな、出来れば信用できるように誠意なものを見せて欲しいんだが。」

結愛「そうだな・・・、じゃあ2つ見せるわ。」

守「2つ?」

結愛「とりあえずこっちに来てくれ。」

 全員を教室の一番後ろの監視カメラの下に集めると手元の工具入れから金槌を取り出し、カメラに向かってジャンプした。

『がっしゃーーーん!!』

 結愛は全員の目の前で監視カメラを破壊してみせた。配線もついで感覚で綺麗に切っている。

結愛「それと・・・。」

 結愛は全員の前で衣服を脱ぎ捨てた。下にはまさかの守たちと同じジャージを着ている。ただ番号が記載されていないが。

結愛「これじゃ駄目か??」

全員「十分だぜ結愛、歓迎するしこれからもよろしくな!!信用するぜ!!」

 遂に「1時間後」が来た。クラブハウス前に停車していた重機が動き出した。どごんという大きな音を立てクラブハウスを破壊していく。何名かは涙を流していた。ただ、「元」運動部ではなかった生徒達も涙を流している。琢磨が訳を聞くと泣いてた生徒が震えながら音楽室の方を指差した。

女生徒「あれ・・・、あれ・・・、見える・・・?」

 音楽室の窓が全部割られそこから炎が噴き出ている。よく見れば他の実習室等も同様に破壊されている。他のクラスから何人もの生徒が叫びながら走ってきた。

男生徒「大変だーーーー!!」

結愛「おい、落ち着けよ、大丈夫かよ!!」

男生徒「あの理事長どうなってんだよ、体育館まで破壊しやがったぞ!!」

 すると・・・、

海斗「大変だ、皆大丈夫かー?!結愛、無事かーーー?!」

結愛「兄貴!?どうなってんだよ!?」

海斗「俺もわかんねぇよ、訳わかんねぇよ!!」

 何気に海斗もジャージを着ている、どうやら結愛同様疑われたらしい。守たちは何となく申し訳なく思った。

守「お前らの親父って・・・。」

結愛「ああ、目的を達成するならどんなことでもやるんだ、ただまさかここまで・・・。」

海斗「維持費(経費)の削減かよ・・・チィッ!!」

圭「でもあいつ一人でここまで??」

海斗「いや多分・・・。」

貝塚兄妹「黒服だ!!みんな逃げろ、あいつらはどこまでも残忍だ!!最低でも俺たち2人は味方だ、危害を加えるつもりはない、お願いだから急いで逃げてくれ!!」

 全員、校舎の外に逃げると、部室系統のあった建物のみが全焼し、各クラスの教室のある建物のみが残されていた。男女関係なく生徒は皆泣いている。そんな生徒達をよそに校舎からチャイムが鳴り響く。そして生徒指導の飛井(とびい)の怒号が響く。

飛井「早く教室に入れ、すぐに補習が始まるぞ、補習は全員参加、出席率が低いと留年もあり得るから覚悟しろ!!」

 あんな火災の悲劇があったというのに先生たちは平気なのだろうか、まだ立ち直れない生徒もいるが全員校舎へと入っていった。その日の補習は本当に夜9:00までずっと続いた、焼け跡はそのまま残っていて酷いの一言だ。ただ補習が終わった頃には結愛の衣服は元通りに戻っていた。本人曰く、その恰好でないと家に入れないのだという。

結愛「俺と兄貴がジャージ着てたの内緒にしてくれるか?親父は何故かジャージが嫌いなんだ。」

 どうやら貝塚邸は無事らしい。多分義弘の予定通りなのだろうが。

守「分かった、帰るか。」

全員、各々の家路についた。

 守の家は学校から歩いて15分程のところにあり、寄り道や買い食いをしてもすぐに帰る事ができた。隣には圭の家がある。

圭「じゃあね。」

守「うん、お疲れ。」

 二人とも家に入った。

守「母ちゃんただいまー、ずっと何も食ってないから腹ペコだよー、晩飯何ー??」

 クタクタになった守に母・真希子(まきこ)が冷たく言い放った。

真希子「何言ってんのよ、あんた。こんな手紙が来たのに用意している訳ないじゃないの。」

守「手紙・・・?」

 守は真希子から「貝塚学園高校」の文字が書かれた封筒を受け取り、中の手紙を取り出して読んだ。

守「嘘だろ・・・。」

 守は手紙をストンと落とした。

保護者様各位

貝塚学園高校理事長

貝塚財閥 代表取締役

貝塚義弘

 学校名の変更と新理事長就任のお知らせ

拝啓 春暖の候、皆様ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて、突然でございますが、これからは貝塚財閥で西野町高校を管理させて頂く事になり、代表取締役である私貝塚義弘(かいづかよしひろ)が務めさせて頂く形となりました。これからは我々がお子様の勉学を支えさせて頂きますのでよろしくお願い申し上げます。簡単ではございますがご挨拶とさせて頂きます。

敬具

 まさかの形式ばかりの手紙が入っており、守は鼻で笑った。ただ、もう1枚手書きの物をコピーした簡単な手紙を見つけた。それにはこうあった。

 お子様の勉学の時間を確実に確保すべく、また脳の回転を確実に速い状態で保つため、お子様には一切の食事を与えないで下さい。脳の回転は満腹時より空腹時の方が良いとされています、そして1秒でも長く勉学の時間を確保するためにご協力をお願い申し上げます。

守「マジかよ・・・。」

真希子「凄い方が理事長になったんだね、私はあんたや彼に協力するから頑張るんだよ。」

 守は諦めて入浴することにした、そして鞄に手を伸ばす。中には美味そうなお菓子が数個入っていた。どうやら結愛が家から持ち出して皆の鞄に入れてくれたようだ。「少なくて申し訳ないが食ってくれ」との一言書いたメモと一緒に。

 守はそのお菓子を噛みしめる様に食べた。部屋の窓からは圭の部屋が見える。どうやら圭も同じ状態になったらしい守は確信した。

 「結愛は信用できる」、と。

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