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新しい派遣先の上司が私のことを好きすぎた件
新しい派遣先の上司が私のことを好きすぎた件
Author: rpmカンパニー

1. 出会い

last update publish date: 2026-03-14 00:22:23

 今日からまた新しい職場かぁ。

 これが派遣社員のつらい所であり楽な所である。

 嫌な職場から逃げられるけど新しい職場が良い所かは分からない。

 なので初出社はどうしても憂鬱な気分になる。

 面倒な人がいないといいなぁ。

 会社に到着してそうそうに上司となる人を紹介される。

「初めまして、高橋です。一応君の上司となります」

「こちらこそ初めまして。宮本です」

 30代前半で優しそう。でも髪の毛はぼさぼさでなんか冴えない感じ。

 私より一回り上だけど大人しそうで怖くはないかな。

 機嫌が悪いとすぐ怒り出すような人は嫌だからね。

「じゃあ、さっそく仕事の説明を説明するね」

 私に任されるのは液晶?製品の性能評価だった。

 どうやらそれの明るさとか色とかを測るらしい。

「わかったかな?」

「はい」

 説明を聞きながら簡単にメモを取ったけど特にややこしい手順はない。

 教えられた通りにセットしてボタンを押す。

 装置が動いて何か数値が出た。

「液晶の動作原理は~~~」

 なんか難しいこと話し出した。

 それ、明らかに作業と関係ないよね。

 ただの派遣に何を期待してるんだろう。

 どうさげんりとか言われても何も興味ないんだけど。

「光が透過しないのはこの偏光板の効果、液晶に電気をかけることで光が透過するんだ」

「はい、わかりました」

 意味わかんないや。

 つらつらと専門用語を並べて説明した気になられても困る。

 ついでに言うと私の目を見て話してくるのも何なんだろう。

 ちゃんと聞いてるのかチェックでもしてる?

 まあ聞いてるふりしていればいいか。

「じゃあ、なにかあったら呼んでね」

 一通り説明を終えると彼は去っていった。

 さあ、初仕事始めますか。

・・・

 いくつかの種類のサンプルの測定は終了した。

 それはいいんだけど残っているこいつが問題なのよね。

 こいつだけさっき聞いた説明と違っている。

 何もしなかったら画面が真っ黒と言ってたけど、これは画面が真っ白だ。

 壊れてるの?それとも私の理解が間違ってるの?

 嫌だなぁ、理解が間違っている場合大体2パターンの対応なんだよね。

 ・同じことを説明される。

 ・理解しなくていいから言われた通りやれと言う。

 どちらにしても怒られるんだよなぁ。

 でも壊れてるんだったら言わないとそれはそれで怒られるし……。

 嫌々だけど彼の元に向かう。

「あ、終わった?」

「すみません、さっきの説明と実際のものが違う気がするんですが」

「うーん、どこが違うの?」

 ああ、嫌だな。なんで私が怒られなきゃいけないんだろ。

 理解できないのは私だけのせいじゃないと思うんだけどな。

「画面が真っ黒なのはおかしいと思います」

「そっか、ちょっと待っててね」

 そういうと彼はどこかに行った。

 もしかして質問しただけで怒ったの……?

 どっかに行ったのは派遣元に苦情入れてるとか?うわぁ、最低。

 そんなことを考えていると、可動式の黒板を引いてきた。

「えっと、偏光板の原理は理解できたかな?」

「え、あの、分かりません」

「そっか、なら説明の仕方を変えるね。こういう枠の中に光を~~~」

 彼は黒板に絵を描いて説明を始めた。

 びっくりした、説明の仕方を変えてくるなんて。

 さっきと比べて絵があるので多少は理解できた気がする。

「分かったかな?」

「え、えっと、なんとなくは……」

「最初はそんなものでいいよ」

 そういうものなのか。完璧に理解しないといけないのかと思ってた。

 彼の様子は最初と変わらず穏やかで特に怒っているようには見えない。

 もうちょっと分からないこと聞いてみてもいいかも。

「でもそれだと今度は画面が真っ白なのがあるのか分かりません」

「そっか、うーん、説明が難しいな。例えば~~~」

 そういって彼は原理ではなくイメージ的な説明にしてくれた。

 どうやら液晶には光の方向を捻じ曲げる力?があるらしい。

 理屈は分からないけど何となくのイメージはつかめた。

「なんとなくでもわかったかな?」

「イメージぐらいは」

「よかった、また分からなかったら言ってね」

 そういうと彼はまた自分の作業に戻っていった。

 なんか人生で初めて質問に答えてもらった気がする。

 今まで、質問しても「理解できないお前が悪い」と怒られていた。

 今日は"私が理解できなかった所"を聞いてもらえた。そのうえでわかるように教えてもらえた気がする。

 ただ私の目を見て話してくるのが気恥ずかしい。

 あんなに男の人に見つめられたのは初めてかも。

 少し良い気分で作業に戻る。

 残り頑張りますか。

・・・

「終わりました」

「お、はやいね……うん、結果も問題ない」

 よかった。初仕事で失敗したら落ち込むからね。

「次はここにある複数のボタンをこの順番に押していって」

「はい」

 間を開けずまた次の仕事だ。

 今度は決まった順番にボタンを押すらしい。

 ボタンを押すと画面の色が赤とか青とかに変わってる。

 赤青緑の順番に光らせてるけど何か意味があるのかな?

 緑青赤の方がボタン押しやすいんだけどなぁ。

「どうしてこの順番に押すんですか?」

 さっきまでの気やすい雰囲気があったので、なにげなく口に出てしまった。

「ああ、それは装置をそういう設定にしてるからだね」

 彼は普通に答えてくれた。よかった。

 でもそういう設定ってなんだろう。

 分からないって言ったら教えてくれるかな?

「よく分かりません」

「そっか、えっとね、最初に決めた人がその順番が好きだったからだよ」

 え、そんな適当な決め方なの!?

 私が驚いたのが分かったのか彼が苦笑している。

「それ以上の理由は特にないから説明のしようがないんだ」

 世の中の決まり事ってもっとちゃんとした理由があるんだと思ってた。

 おもしろいなぁ。

 この後もちょこちょこ質問したけど、特に嫌そうなそぶりもなく答えてくれた。

 何か不思議な感覚。

 彼に「わからない」というと、説明を変えてくれて教えてくれる。

 今までは怒り出す人ばかりだったから質問するのが嫌だったけど、ちゃんと答えてくれるなら質問するのも楽しいかも。

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