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第5話

Author: 花職人のコマドリ

一言一句が、毒を塗った刃のように胸を切り裂いていった。

私は身を縮めるようにうずくまり、顔を伏せた。

「あっ、念美さんがいらしたわ」

「まあ、念美さん、本当にお綺麗……! そのドレス、初めて見るわ。フランスの有名デザイナーによる一点物じゃないかしら」

その声に、私はゆっくりと顔を上げた。そこには、挑発するような笑みを浮かべる念美の姿があった。

そして、彼女のドレスを目にした瞬間――私は息を呑んだ。

「それ……お母さんが遺してくれたドレスよ!」

かすれた声を振り絞り、私はよろめきながら念美に飛びかかろうとした。だが、その前に悠真が立ちはだかった。

「おい、何をする気だ!」

私は涙を流しながら、悠真を睨みつけた。

「悠真……あれは、お母さんが私に遺してくれた、たった一つの形見なの! どうしてあの人に渡したの!?」

悠真は不快そうに眉をひそめた。

「ただのドレスだ。念美が喜ぶなら、それで十分だ」

私はとっさに彼の手へ噛みついた。悠真が痛みに思わず私を放した隙に、私は念美の髪をつかんだ。

「返して! そのドレスを返して!」

念美は胸元を押さえ、悲鳴を上げた。

「悠真さん、助けて!」

そのとき、腰に激しい衝撃が走った。私は床へ叩きつけられ、全身を震わせた。

念美はドレスの裾を乱暴に引き裂き、その切れ端を私へ投げつけた。

「欲しかったんでしょ? ほら、返してあげる! 全部返してあげるわ! あなたのせいで、私の誕生日が台無しよ!」

私は震える手で、ドレスの切れ端を抱き寄せた。ぽたり、ぽたりと零れ落ちた涙が、布を濡らしていった。

「ごめんなさい……お母さん……最後の形見さえ……守れなかった……」

次の瞬間、悠真に髪を乱暴につかまれ、頭に鋭い痛みが走った。私はそのまま無理やり引き起こされた。

「澪! まだ念美に手を出す気か! 今日一日、大人しくしていれば済んだ話だった。それなのに、どうしてお前はいつも余計なことをする!」

怒りに顔をゆがめた悠真は、低く吐き捨てた。

「……いいだろう。

人の服を剥ぐのが好きなら、お前も服なんか着るな」

悠真の命令で、私は大勢の招待客の前で服を剥ぎ取られた。

無数のフラッシュが容赦なく私へ向けた。私は目を閉じ、頬を伝う涙を止めることができなかった。

「こいつを外へ捨てろ」

悠真の護衛たちは私を薄暗い路地裏まで引きずっていき、ゴミ箱の脇へ鎖でつないだ。

そこには、数人のチンピラがたむろしていた。

護衛たちの姿が見えなくなると、男たちはゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。私は必死に身を縮めた。

「やめて……来ないで……! 悠真は……あなたたちを許さないわ……!」

男たちは顔を見合わせると、堪えきれないように笑い出した。

「桐生社長が?」

先頭にいた男は鼻で笑った。

「俺たちは、その桐生社長に頼まれてここで待ってたんだ」

その言葉を聞いた瞬間、私の中に残っていた最後の希望は、音もなく崩れ落ちた。

けれど、その抵抗はあまりにも無力だった。恐怖だけが、静かに私をのみ込んでいった。

向かいの大型ビジョンには、念美の誕生日パーティーの様子が映し出されていた。

念美はまるでお姫様のように、皆から祝福を受けていた。

悠真は片膝をつき、何億円もの価値がある南アフリカ産のダイヤモンドを差し出していた。

絶望だけが、静かに胸を満たしていった。私はかすかに口元をゆるめ、そっと目を閉じた。

――その瞬間。

パンッ!

銃声が響き渡った。温かい血が頬へ飛び散り、誰かがそっと、私の肩に上着を掛けた。

私ははっと目を開いた。

目の前に立っていたのは、あの冷たい眼差しの男だった。

「……あなた。本当に、来てくれたのね……」

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