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晴れた空に、夢は消えてゆく
晴れた空に、夢は消えてゆく
Auteur: ゆうしょう

第1話

Auteur: ゆうしょう
東都市にその名を轟かせる浅井家と松永家は、代々続く宿敵同士だ。

浅井家には、決して松永家の人間と縁組をしてはならない、という家訓まである。

それなのに、浅井家の跡継ぎである浅井龍一(あさい りゅういち)は、あろうことか松永家に残された一人娘、松永清良(まつなが きよら)に恋をしてしまった。

彼女と結ばれるため、彼は相続権を放棄し、家法として三十発もの杖刑を受け、血を吐きながらも三日三晩、祠堂で跪き続けた。それでも龍一は、清良に向かって微笑んだのだ。

「心配すんな。誰にも俺たちが一緒になるのを止められないさ」

その後、浅井家はついに折れ、二人が駆け落ちすることを認めた。ただし、一つだけ条件を付けた。

それは、龍一が、彼らの選んだ嫁候補・水野美佐子(みずの みさこ)との間に跡継ぎをもうけること。

松永家の人間には、浅井家の子供を産む資格などない、というわけだ。

その日から、龍一が清良に最も多くかけた言葉は、「待ってろ」だった。

一度目は、美佐子を妊娠させるまで待ってろ、と。

そして彼は三十三回、彼女とベッドを共にした。美佐子が彼の子供を身ごもるまで。

二度目は、生まれてきたのが娘だったから、浅井家が息子を欲しがっているから、と。

そして彼はまた三十三回、彼女とベッドを共にした。美佐子が再び身ごもるまで。

ようやくこの苦しみから解放されると思った矢先、龍一と美佐子の娘の百日祝いの席で、赤ん坊の体中が傷だらけになっているのが見つかった。誰もが、清良の仕業だと決めつけた。

美佐子はナイフを掴むと、狂ったように彼女に襲いかかり、その体を切りつけながら、張り裂けんばかりの声で泣き叫んだ。

「私のことが憎いなら私を恨んで!なんで子供に手を出すのよ!」

龍一の両親は激怒した。

「子供に手を出したからには、その落とし前をつける覚悟はできているのだろうな!」

清良は人前で服を剥ぎ取られ、警備員がフルーツナイフを手に、赤ん坊の傷をなぞるように、しかしそれ以上に深く、彼女の体を切り刻んでいった。

床に血が広がる。清良が顔を上げると、龍一が震える手で子供を抱いているのが見えた。かつては愛に満ちていた彼の瞳は、今や骨の髄まで凍りつくような冷たさだけを宿していた。

血の涙を流す彼女の視線を受け止めても、龍一の目は失望に満ちていた。かすれた声で、彼は言った。

「もう少し待ってろって言ったはずだ。俺の子に手を出すべきじゃなかった」

なんてこと……「俺の子」、か。

清良は痛みで息が詰まる。体に刻まれる無数の傷の痛みなど、胸の痛みの万分の一にも及ばない。

ふと、彼女は思い出した。

かつて、龍一は彼女の両親の墓前で誓った。

「この生涯、清良ただ一人を愛し、誰にも彼女を傷つけさせないと誓います」

かつて、龍一は激しく体を重ねた後で約束した。

「両親がどんな手を使ってきても、俺は他の誰も求めない。他の女と子供なんて作るものか」

かつて、龍一はオーロラの輝きの下で保証した。

「清良がいつでも一番だ。何があっても、彼女を待たせたりしない」

三つの誓いを、彼はことごとく裏切った。

今、彼は美佐子の隣に立ち、その腕に二人の子供を抱き、まるで悪意に満ちた他人でも見るかのような目で、彼女を見ている。

意識が遠のく瞬間、彼女は龍一の冷たい顔を見つめ、心が完全に砕けた。

もう、待たない。

目を覚ました清良は、すぐに龍一の母・浅井恵子(あさい けいこ)に電話をかけた。

「龍一から離れます。でも、一つだけお願いがあります」

その声には何の感情もなく、死のような静けさが漂っていた。

「龍一が、永遠に私を見つけられないようにしてください」

電話の向こうから、恵子の嘲笑が聞こえる。

「ようやく現実を理解したようね。松永家が破産したからどうこう言う以前に、たとえ松永家のお嬢様のままでも、浅井家はあなたなど認めないわ。

半月後には発ちなさい。自分の言ったことを忘れないで。二度と息子に付きまとわないことね!」

電話が切れると同時に、病室のドアが開いた。清良が目をやると、指先が微かに震えた。

美佐子が子供を抱き、龍一がその彼女を抱きしめている。どこからどう見ても、仲睦まじい家族三人の姿だった。

彼女の視線に気づいた龍一は一歩前に出て、まるで条件反射のように美佐子と子供を背後にかばった。

「先に検査に行ってろ」

その警戒心に満ちた眼差しが、ナイフのように清良の胸に突き刺さる。

彼女が、彼の子供を傷つけるとでも思っているのだ。

龍一は、清良を信じていない。

かつて「永遠にお前を一番愛してる。無条件にお前を信じる」と言った男が、今ではまるで殺人犯を見るような目で彼女を見ている。

美佐子が去ると、龍一はようやくベッドのそばに座り、彼女の手を握った。

「傷はもう手当てしてある。医者には一番いい薬を使わせたから、傷跡は残らないよ」

清良の胸はますます締め付けられた。目を赤くし、力強くその手を振り払った。

龍一は一瞬戸惑い、眉をひそめて説明を始めた。

「朝のあの状況で、お前の肩を持てば持つほど、罰は重くなるだけだったんだ。

それに、俺たちはもうすぐここを離れるんだ。どうして今更あんなことを……子供は無実だろ、お前は……」

「私じゃない!」

清良は赤い目で彼を見つめ、言葉を強めた。

「龍一、信じてくれないの?」

龍一は彼女の目を見て、言葉を失った。

二秒の沈黙の後、清良の背中を撫でてなだめるように言った。

「もう終わったんだ。どうでもいいことさ」

清良は目を伏せ、涙がこぼれ落ちた。

どうでもいいこと。

その言葉が、彼女の最後の期待を打ち砕いた。

結局、彼は信じないのだ。

龍一は清良の髪を優しく撫で、立ち上がった。

「今夜、オークションがあるんだ。気分転換に連れて行ってあげるよ」

夕方、車が病院の前に停まった。

窓が下ろされると、助手席には美佐子が座っていた。

龍一が説明する。

「美佐子も行きたいって言うから。彼女は妊娠してるし、助手席の方が楽なんだ」

清良はうなずき、黙って後部座席に乗り込んだ。

オークションが半ばに差し掛かった頃、ブルーサファイアのネックレスが出品された。

それを見た瞬間、清良の瞳孔が収縮し、思わず龍一の袖を掴んで札を上げた。

それは彼女が生まれた時に祖母からもらったもので、後に祖母が重病になった時、薬代のために手放した、祖母の心残りの品だった。

美佐子はちらりと視線を動かし、それに続いて札を上げる。

三度の入札後、龍一は「誰が入札しても、それを上回る金額で入札する」と宣言した。最後にネックレスを競り落とすと、それを美佐子の手に渡した。

パタン。

清良の手から札が滑り落ちた。

彼女は龍一の袖を引き、目を真っ赤にして訴えた。

「龍一、このネックレスのこと、あなたに話したじゃない。これがどんなに――」

「分かってる」

龍一は冷たく彼女の言葉を遮った。

「美佐子が気に入ったんだ。お前から彼女へのお詫びの品だと思えばいい。このネックレスは子供に贈るのに丁度いい。いずれ俺の子に…」

「ダメ!」

清良は声を張り上げ、ネックレスを奪い取ろうとした。

しかし、美佐子は突然よろめいて後ろに倒れ、お腹を押さえて苦痛の声を上げた。

「お腹が……」

「清良っ!」

龍一は真っ先に彼女を突き飛ばし、その目は冷たく険しかった。

「たかがネックレスの一つで、いつまで騒ぐ気だ!?」

彼の力はあまりに強く、清良の額はそばの柱に叩きつけられ、鮮血が噴き出した。

それでも龍一は振り返りもせず、美佐子を抱きかかえて外へと駆け出していった。

「龍一……」

美佐子は彼の腕の中で弱々しく泣いた。

「赤ちゃん、大丈夫かしら……」

「大丈夫、俺がいる」

龍一の声は、耳障りなほど優しかった。

「俺がお前たちを守る。お前にも、お腹の子にも、何もさせない……」

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