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馬車に揺られて

Penulis: 空蝉ゆあん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-19 01:01:29

◇◇◇◇◇◇◇◇第三話◇◇◇◇◇◇◇◇

歩くのは大変だからとダーシャの馬車へと乗る。ヒエンは別の馬車だ。ここが何処だか分からない。見た事もない景色。あたしは自分の家でいたはずなのに、どうしてこんな事になっているのかと頭を悩ませてしまう。

うろ覚えだけど、あの男の子・・・・・から貰った手鏡で自分の顔を見ていたら、吸い込まれるようにこの訳の分からない状況になってしまったようだ。これは夢なの……かな?そう思う事で現実を見ようとしてなかった。

ダーシャと名乗る男、初めて見る人なのに、どうしてだか懐かしさを覚えてしまう。変な感じ。どこかで会った事があるような違和感を覚えながらも、抵抗をするより、二人についていく事に決めたの。自分の状況を確認するってより、これは夢だろうから、少し冒険したい気持ちが膨れたんだと思う。

ふうとため息をつきながら、景色を見つめた。綺麗な草原の中に牧場らしき場所がある。先ほどまで緑一色だったのに、急に表れた牧場その光景を見ていると、なんだか癒されている自分がいた。

「綺麗な景色だろう?」

急に話しかけてくるダーシャの声が体を包み込んでくる。まるで抱きしめられているような錯覚を覚えたあたしは、顔を真っ赤に染めながら、コクンと頷いた。

「ヒエンは君の事を理解出来てない。君があちら側の世界から来た住人だと気づく事もないだろうから、安心しなさい」

「えっ……」

その言葉を聞いて、彼の方に視線を向けた。すると彼の瞳はジイッとあたしを見つめて離さない。柔らかな表情を向けるダーシャにドキドキしてしまう。

(知らない人なのよ?何ときめいてんの、あたし)

心の中で邪念を振り払う。これは夢、そうよ夢なんだからと言い聞かせてみるけど、現実の出来事のような気がして、心音は加速していくばかりだ。

「夢なんかじゃない。これは現実だ」

「なんで」

「君の考えている事ならなんでも分かるさ。だって僕がこの世界に君を連れてきたんだから」

夢だと思うのなら、自分の頬をつねってみるといい、そうダーシャは言った。あたしは疑心暗鬼になりながら、右頬を抓る。

「痛い」

夢の中でこんな痛み感じるの?それとも寝ぼけているだけかしら?寝ながらつねっているかもしれないと思い、もう一度確かめてみる。うん、痛い。

「分かっただろう?これは夢なんかじゃない」

「……どうして」

「抵抗せず大人しくついてきたのは正解だな。まぁ君が逃げようとしても逃がさないけど」

ゴクッと唾を飲み込みながら、聞いてみた。ここは何処かって。すると彼は微笑みながらこの国がサザンウェーブという国だと教えてくれた。そして異世界で存在していたもう一人のあたしの生きていた場所だと。

「もう一人のあたし?」

「そう。ヒエンが勘違いしていただろう?」

「そんなの……」

「信じられないって?でもこれも現実なんだよサリア」

馬車はあたしの心とは裏腹に前に進んでいく。止めようと思っても止まらない時間に振り回されている自分がいた。

◇◇◇◇◇◇◇◇第四話◇◇◇◇◇◇◇◇

 僕の心の中にはいつも君がいた。まだ五歳の頃に大きなハリケーンが発生し、巻き込まれた。もうダメだ、そう思いながらギュッと目を瞑ると見た事のない場所にいた。ここは何処だ?そこには僕の知っている景色はなくて、キョトンとする事しか出来ない。

 「ここは一体」

 ハリケーンに巻き込まれて絶体絶命だったはずなのに、どうしてだろうか。状況が掴めない僕は不安を抱きながら足を進めた。今の僕の身なりとは違う幼少の自分。父の顔を知らない僕は病弱な母に育てられた。生活は貧しかったけど、母と一緒にいる時間が何よりも大切で、守りたいと思っていたんだ。

 働けない母の代わりに出稼ぎに出ていた。本来なら仕事を与えてもらう事が出来ない年齢だったが、知り合いのおじさんが声をかけてくれて、手伝いをしていた。そこまでお金をくれる訳じゃないけど、僕達の環境を知っているから、二人が生活出来るくらいのお金は貰っていた。

 働きづめだった僕は寝坊をしてしまった。急いでおじさんの後を追い、どうにか辿り着く事が出来、すみませんと頭を下げた。

 「疲れていたんだろう、お前は働きすぎだから」

 怒られるものだと思っていたが、おじさんは優しく僕の頭を撫で、そういった。まるで父親のような大きな手は安心感を与え、少しむずがゆくなる。恥ずかしいというか、なんというか、自分でもよく分からない。

 そんな時、行商人がこの街に来ているから、買い物に行こうと言われたが、寝坊してしまった僕は一人で行きます、といい、譲らない。困ったような顔をしながらも、お願い出来るか、と気持ちをくんでくれたのが嬉しい。

 一人で買い物ぐらい出来る、そうやってこの場所・・・・へと走った。そして運悪くハリケーンが現れたんだ。

 「ふぅ……」

 ため息しか出ない。どうしてこんな事になったんだろうかと頭をポリポリとかく。それでも進む事をやめない僕は大きな木を見つけた。何かに引き寄せられるように走り出す。どうしてだか分からないが、早くいかないとと思った。

 木の近くに行くと、人影が見える。

 「誰かいるのか?」

 更に前に進む。普段から走る事になれているので、息切れする事はなかった。こんな時日常の行動が役に立つんだな、そう思いながら木の下へとたどり着いた。

 「何をしているんだい?」

 ピンクのワンピースを着ている女の子の背中に声をかけてみる。ドキドキしながら。僕の声に引き寄せられるように振り向いた女の子を見つめて、時が止まったように感じたんだ。

 綺麗な子、瞳は真っ黒で優しい顔立ちをしている。ふんわりとした雰囲気が僕の心を射抜いた瞬間だった。

 「お空を見ているの」

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