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月の下、愛されなかった寵妃
月の下、愛されなかった寵妃
مؤلف: 哲希

第1話

مؤلف: 哲希
七日後、知凛が珍しく瑶華宮を訪れた。

皇帝だけが身につける鮮やかな黄色の正装をまとい、背筋をまっすぐに伸ばしている。

冷たく整った顔立ちと近寄りがたい佇まいは、雪の中にすっくと立つ一本の松を思わせた。

「歓宜」と、彼は低い声で切り出した。「余の決定に不満はあるか」

歓宜は慌てて立ち上がり、丁寧に頭を下げた。

「とんでもないことでございます。陛下が姉上を皇后にお選びになったのは、賢明なご判断です。わたくしに不満などございません」

穏やかなその横顔を見つめ、知凛はわずかに眉をひそめた。

彼はてっきり、ここ数日の彼女の静けさは、自分の気を引くためのものだと思っていた。

こうして自ら訪ねて尋ねれば、彼女はきっと泣くはずだ。悔し涙を流し、自分にすがりついてくるはずだ。

そうしたら、いくつか贈り物でも与えてなだめ、少し厳しく言い聞かせればいい。

――お前を妻に迎えたとき、言ったはずだ。余の心にいるのは若螢だけだと。何不自由ない暮らしはさせてやれる。だが、愛までは与えられない。皇后の座も、余が愛する者にしか与えるつもりはない。

そう言い聞かせれば、この件も収まるはずだったのに。どうやら彼女は、本当に気にしていないらしい。

こうして余計な手を煩わせることもなく、騒ぎも起こさないところは悪くない。あの日の言葉をきちんと覚え、自分には望めないものを欲しがっていない証拠でもある。

それなのに、その無関心そうな顔を見ていると、知凛の胸には言いようのない苛立ちがこみ上げてきた。

「陛下、お品をお持ちいたしました」

女官たちを引き連れた宦官長の李徳全(り とくぜん)が、美しい錦張りの箱を恭しく両手で捧げながら入ってきた。

蓋を開けると、中には雪のように真っ白で一点の汚れもない、上質な白狐の毛皮が収められていた。それは数日前、知凛が自ら狩りで仕留めたものだった。

皇后にしなかったことへの、せめてもの償いとして、歓宜に贈るつもりだった。

だが彼女の様子を見ているうちに、急に何と言って渡せばいいのか分からなくなった。

もういい。

何も言わず、これだけ置いて帰ろう。

そう口に出しかけたとき、歓宜が先に口を開いた。

「まあ、見事な毛皮ですこと」

白狐の毛皮を見つめる目には感心こそ浮かんでいたが、驚いた様子はない。

「陛下が先日の狩りで仕留められたものですね。わたくしにお渡しになるということは、これで姉上の肩掛けを仕立てるように、ということでしょうか」

知凛の胸の苛立ちが、さらに膨れ上がった。

「なぜお前は、これが余からお前への贈り物だとは思わない」

歓宜は慌てて、その場に膝をついた。

「陛下、どうかお許しください。わたくしがそんな身の程知らずなことを考えるはずがございません。陛下は以前、心にいるのは姉上だけだと仰いました。

わざわざご自身で仕留められたほど貴重な白狐の毛皮ですもの、当然、姉上への贈り物だと思っただけです。勝手に陛下のお気持ちを取り違えるような真似はいたしません」

徳全がたまらず口を挟もうとした。

「お妃さま、こちらは実は陛下がわざわざ――」

「李徳全」

知凛が遮った。その声は低く、ひどく冷たかった。

徳全は慌てて口をつぐむ。

跪く歓宜を見下ろしながら、知凛の胸には、得体の知れない怒りがますます募っていった。

「そこまで言うのなら」その声も冷え切っていた。

「一日で仕立てろ。近頃はずいぶん冷え込んできた。皇后は体が弱い。風邪をひかせるわけにはいかない」

「かしこまりました。仰せのとおりにいたします」

歓宜は頭を下げて答えた。

その素直すぎる態度を見て、知凛はいっそう苛立った。彼は勢いよく袖を翻して踵を返すと、大股で瑶華宮を後にした。

歓宜は立ち上がり、遠ざかっていく知凛の背中を見送りながら、少しだけ戸惑ったような顔をしたが、それも一瞬のことで、すぐにいつもの静かな表情へ戻った。

彼女は身の回りの世話をしている青禾(せいか)を呼ぶ。

「裁縫道具を持ってきて」

「かしこまりました」

青禾が針箱を運んでくると、歓宜は窓辺に腰を下ろし、差し込む陽の光に細い指を照らされながら、慣れた手つきで肩掛けを縫い始めた。

「お妃さま」青禾がそっと尋ねた。「本当に、お辛くはないのですか」

歓宜の手が、ふと止まった。

そして、かすかに微笑む。その笑みは淡く、それでいて雪や氷がゆっくりと解けていくような、はっとするほどの美しさがあった。

「辛い?」彼女は小さく呟いた。「別に、辛くなんてないわ」

なにしろ五日後には、あらかじめ飲んでおいた仮死状態にする薬が効き始める。そうすれば彼女は、この宮殿からも、知凛からも、完全に逃れられる。

南方にある江南――本当に愛する人がいる場所へ。

振り返ると、歓宜と若螢は、朝廷を支える宰相の家に生まれた姉妹だった。

けれど歓宜は側室の娘で、幼い頃から体が弱かったため、江南に暮らす祖母のもとへ預けられて育った。

その江南で、彼女は沈清河(しん せいが)と出会った。

彼は、江南を治める高官の息子で、穏やかで優しく、学問にも優れた青年だった。

二人は幼い頃から一緒に本を読み、花を眺め、江南に降る細かな雨を見ながら育った。

まだ少年だった清河は、彼女の手を握ってこう誓った。

「歓宜、そなたが大人になったら、私の妻に迎える」

彼女は頬を赤らめ、こくりと頷いた。

「……うん」

けれど、歓宜が年頃を迎えた頃、清河の家が正式に縁談を申し込もうとしていた矢先、父が突然使いを寄越し、歓宜を都へ呼び戻した。

知凛に嫁がせるためだった。

ちょうどその頃、九人の皇子たちは次の皇帝の座を巡って激しく争っていた。当時の皇帝は、それぞれの皇子に有力な家の娘を妻として迎えさせており、知凛の妻として選ばれたのが宰相の家の娘だった。

だが知凛が想いを寄せていたのは、歓宜ではなく、その異母姉である若螢だった。

それでも彼は、当時の自分がどれほど危険な立場にいるかを、誰よりもよく分かっていた。若螢を妻に迎えれば、彼女まで命がけの権力争いに巻き込むことになる。

だからこそ、若螢と同じ家に、江南で育った異母妹がいると知ったとき、知凛はあえて歓宜を妻に望んだのだ。

歓宜はこの結婚を拒んだが、父は清河の命を盾に彼女を脅した。

「嫁ぐことを拒むなら、清河だけではない。沈家一族もただでは済まさん」

そして最後に、父はこう約束した。

「知凛が皇帝になったら、お前に仮死状態にする薬を渡す。死んだことにして、宮殿から逃がしてやろう。そうすれば、清河のもとへ行ける」

歓宜は承諾した。

こうして彼女は、知凛に嫁いだ。

嫁いでからというもの、予想どおり危険は絶えなかった。暗殺者に狙われ、毒を盛られ、罠にはめられ、幾度となく傷つき、倒れた。それでも歓宜は、一度も不満を口にしなかった。

知凛が皇子だった頃、歓宜は屋敷のことをすべて滞りなく取り仕切り、誰から見ても非の打ちどころのない妻を演じ続けた。

知凛が怪我をし、手に入りにくい薬が必要になれば、命がけで手に入れた。

知凛が敵の罠にはめられれば、身を挺して彼をかばい、代わりに刃を受けた。

いつからか、屋敷の中ではこんな噂まで流れるようになっていた。

歓宜は、知凛に心の底から惚れ込んでいる――と。

歓宜は、それを否定しようとはしなかった。ただ、自分が命がけで知凛を支え、彼を皇帝の座に就かせさえすれば、いつか清河のもとへ戻れると、それだけを信じていた。

そして今、すべてが終わった。

知凛は皇帝になった。そして若螢も無事皇后になった。

歓宜自身だって二日前に、あの仮死状態にする薬を飲んでいる。

薬が効き始めるまでには、七日かかる。

あと五日。

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