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第29話

last update publish date: 2026-01-13 19:00:00
【蓮side】

咲希が眠った。穏やかな寝息が聞こえる。

俺は椅子に座ったまま、彼女を見ていた。

頬が少し赤い。熱で、火照っているのだろう。

額にかかる髪を、そっと払う。

柔らかい。驚くほど、柔らかい。

今朝、彼女がリビングに現れなかった時、胸が冷たくなった。

何かあったのか、どこかへ行ったのか。

こんなふうに、誰かのことで不安になったのはいつぶりだろう。

部屋のベッドで苦しそうに眠る咲希を見つけ、彼女の額に触れた瞬間、俺は焦った。

医者を呼ぶことすら忘れて、パニックになった。

俺は近所の薬局に走り、慣れない手つきでスマホを見ながら、おかゆを作った。

米の研ぎ方すら怪しく、火加減を間違えて鍋を吹きこぼし、慌てて素手で蓋を掴んで指を火傷した。

「はあ……」

我ながら、いい歳をしてかっこ悪い。

流水で冷やした指に、不器用な手つきで絆創膏を貼り付けた。

高級なシステムキッチンは、見るも無惨に汚れたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

母が昔作ってくれた、あの味を再現することだけに必死だった。

生姜を刻んで鍋に入れ、弱火でコトコト煮る。不器用ながら、何とか形になった。

咲希の部屋に戻ると
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