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来世では、もう二度とあなたに会わない
来世では、もう二度とあなたに会わない
Author: 甘くないこぐま

第1話

Author: 甘くないこぐま
汚水に浸かったまま3日が過ぎ、私の魂はようやく肉体を離れた。

自分の亡骸を確かめる間もなく、まばゆい白い光に包まれた。

光が消えたとき、私は自宅に戻っていた。

呆然としていると、夫の祐介の声が聞こえた。

「いい子だから、言うことを聞いて」

私は反射的に声をたどり、寝室へ向かった。

祐介が忘れられずにいた相手、相沢芽衣(あいざわ めい)が、私たちのベッドに横たわっていた。

祐介は、芽衣の頬を伝う涙を優しく拭っていた。

芽衣は傷ついたように唇をかみ、震える声で言った。

「ココが祐介にもらった子だからって、あんなひどいことをするなんて……」

話すうちに、芽衣の顔はますます悲しげに歪んでいった。

そして甘えるように、祐介の胸へ飛び込んだ。

「祐介と別れたのは、私たちの縁がそこまでだったから。ずっとこの気持ちを押し殺してきたのに、どうしてあの人は私を許してくれないの?ココは私の命なのに」

祐介が芽衣の背中を優しく叩いてなだめる姿に、思わず苦笑が漏れた。

床でおとなしく伏せている犬へ目を向けた。

3日前、私がうっかりココに触れたときのことだった。

ココは何の反応も見せていないのに、芽衣は私の前へ飛び出してきた。

そして、死んでしまえとまで罵った。

私が言い返すと、芽衣は突然その場に倒れ込んだ。

そこへ、ちょうど祐介が戻ってきた。

祐介は事情を確かめようともせず、芽衣を助け起こすなり、私の頬を力任せに打った。

芽衣は彼の胸にすがりつき、悲しそうに泣いていた。

今は星奈さんの顔を見たくない――芽衣がそう言っただけで、祐介は私に出ていけと吐き捨てた。頭を冷やして反省しろ、とも。

祐介が電話に出た隙に、芽衣は私をすぐそばのエレベーターへ突き飛ばした。

彼は知らなかった。

そのエレベーターが、故障で運転を停止していたことを。

芽衣は祐介に、私が彼の通話中に腹を立てて帰ったと告げた。立ち去る前に、自分の頬まで打ったのだと嘘をついた。

祐介は芽衣が自分で打った頬を、痛ましそうに撫でた。

その頃、私の体はものすごい速さで落下していた。

そして、汚水が溜まった昇降路の底へ叩きつけられた。

助かることも、すぐに死ぬこともできないまま、必死に助けを呼んでいたとき、祐介はもう芽衣を抱いてその場を去っていた。

汚水が鼻に入り込んだ瞬間、自分の命が尽きようとしているのだと悟った。

芽衣の声で、私は過去の記憶から引き戻された。

芽衣は祐介の袖をつかみ、すがるような目で見上げた。

「もし……星奈さんが帰ってきて私を見たら、追い出されるかな?祐介も知ってるでしょう。この街には、祐介以外に頼れる人が誰もいないの」

祐介の顔には、芽衣を案じる気持ちがありありと浮かんでいた。

彼は芽衣の頬をそっと撫でた。

「俺がいる。誰にも芽衣を傷つけさせない」

芽衣は笑みを浮かべ、彼の胸に身を寄せた。

その光景に、胸を刃物で切り裂かれたような痛みが走った。

そのとき、初めて知った。

汚水の中でもがき、生き延びようとしていた頃、祐介は芽衣のために寝物語を聞かせていた。

私が息を引き取る直前には、芽衣がその指輪を嫌がったというだけで、5年間つけていた結婚指輪まで外していた。

「祐介、今度こそ……ココに謝ってもらうからね」

祐介は「ああ」とうなずいた。

そして、きっぱりと言い切った。

「安心しろ。ココに謝るまで、あいつを二度と家には入れない」

その言葉に、私は呆れて首を振った。

死んでしまった人間に、どうやってペットに謝れというのだろう。

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