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第3話

作者: 朝八夜八
早奈恵は志樹の凄まじい力で平手打ちを食らい、その勢いで床にへたり込んだ。

地べたに座り込み、無様な姿を晒している。

それを見た紗也子は嘲笑うように口角を上げると、ピンヒールを鳴らして近づき、彼女の前にしゃがみ込んでそのイヤリングを奪い取ろうと手を伸ばした。

だが、早奈恵は咄嗟にその手をガシッと掴み留める。

紗也子はもう片方の手で早奈恵の髪を鷲掴みにし、無理やり手を離させようとした。

早奈恵は痛みに顔を歪めながらも、紗也子の手首を思い切り上へ捻り上げた。

手首に走った激痛にたまらず紗也子が手を離したが、後ろへよろけた拍子に足首を挫いてしまった。

早奈恵は隙を突いて彼女のもう片方の手を掴もうとしたが、横から伸びてきた大きな手にがっちりと掴み止められた。

志樹が咄嗟に早奈恵の手を締め上げたのだ。

紗也子を心配するあまり力の加減を忘れ、早奈恵の手首をあらぬ方向へ容赦なくねじ曲げた。

ポキッという乾いた音とともに、早奈恵の手首は完全にへし折られた。

不意の激痛に悲鳴を上げ、ポケットに隠していたジュエリーケースがいつの間にか床に転がり落ちていたことにも気づかなかった。

「紗也子、大丈夫か?」

志樹は優しく紗也子を抱き起こし、早奈恵には一瞥すらくれなかった。

早奈恵が激痛に耐えながら顔を上げると、目に入ったのは、彼が紗也子の乱れた髪を丁寧に直し、椅子に座らせる姿だった。

「志樹、手も足もすごく痛い。折れちゃったみたい」

「大丈夫だ、足をくじいただけだよ」

志樹は彼女を慰めながら椅子のそばに膝をつき、靴を脱がせた。

青く腫れ上がった足首を見つめる彼の瞳には、心底痛ましそうな色が浮かんでいた。

「まずはマッサージをして、すぐに病院へ行こう」

早奈恵の右手はもう全く動かず、左手で体を支えながら、全身の力を振り絞ってようやく立ち上がった。

「志樹、私のイヤリング!まだあの人の耳にあるわ!

絶対に取り返してね!」

志樹は頷き、彼女に靴を履かせた。

「紗也子が望むことは、全部叶えてやる」

彼の一言一言が、重い衝撃となって早奈恵を打ちのめした。机に手をつかなければ、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。

「早奈恵、そのイヤリングは元々お前のものじゃない。どうしてそこまで意地を張るんだ」

近づいてくる志樹を見つめ、早奈恵は惨めな笑みを浮かべた。

「このイヤリングは私が身を削って手に入れたものよ。私のものじゃないですって?」

彼は足を止め、怪訝な顔をした。

問いただそうとしたその時、紗也子が口を挟んだ。

「こいつの戯言なんて聞かないで。お父さんから騙し取ったに決まってるわ!」

志樹は疑うことなく、二人の警備員に早奈恵を取り押さえるよう目配せした。

氷のように冷たい指が耳元に触れた時、早奈恵は哀願するような瞳で男を見上げた。

その視線は彼の胸をチクリと刺した。

「笹井社長……お願い、八年間の情だと思って……やめて」

「志樹、早く外して!」

手に力が入らず、抗うことすらできない。早奈恵は、彼が近づいてくるのをただ見ていることしかできなかった。

「笹井社長」と呼ばれ、志樹の表情が微かにこわばった。

だが、紗也子の声を聞くと視線を外し、迷うことなく淡々と言い放った。

「代わりにもっと綺麗で高価なイヤリングを買ってやる」

「志樹!ありがとう!」

紗也子はイヤリングを取り戻すと、歓喜のあまり立ち上がり、志樹に抱きつこうとしたが、足の痛みのせいで彼の胸の中に崩れ落ち、頬を真っ赤に染めた。

志樹は片手で彼女を抱き止め、もう片方の手で床に落ちていた指輪のケースを拾い上げた。

「ん?なんだこれは?」

彼が手にした美しく包装されたジュエリーケースに、紗也子の視線が引き寄せられた。

早奈恵の顔色が一変し、警備員の拘束から必死に逃れようと暴れた。

「指輪だわ!すごく綺麗!」

紗也子が歓声を上げた。

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