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第1104話

Author: かんもく
「とわこ、昨夜酔っ払ったあと、何をしたか覚えてるか?」

奏はふっと軽い話題に切り替えた。

とわこの頬が瞬く間に赤く染まる。

「わざわざあなたに言われなくても、もう三浦さんから全部聞いたわ」

「昨夜、子どもが三人じゃ足りない、三十人生むって言ったんだぞ」奏は彼女の赤くなった頬を見て、くすりと笑う。「年を取っても産み続けるんだって。だから俺が、それじゃ豚じゃないかって言ったら......」

あまりの荒唐無稽な話に、とわこは頭皮がぞわっとした。

「そしたら、急に豚の鳴きまねを始めて、『似てる?』って聞いてきた」そこまで言うと、奏はこらえきれず笑い声を漏らす。「次に酔ったら、最初から最後まで録画してやる」

「私が何も覚えてないのをいいことに、作り話してるだけでしょ?三十人なんて、絶対言わない!酔っててもそんな馬鹿なこと言うはずない!」とわこは断言した。

「で、新婚旅行はどうする?」奏は余裕の笑みを浮かべて尋ねる。「真からまた別の国からハガキが届いたらしいな?」

「うん。私たちからすごく遠い小さな国。ネットで調べたら、とても閉鎖的で発展してない国だった。観光地なんかじゃないのに、あの人、何しに行ってるのかしら」

「行ってみよう」奏は即決した。「もしかしたら、まだそこにいるかもしれない」

「本気で行くの?調べたけど、うちの国から直行便はないのよ。途中で二回乗り換えて、最後は船で行かなきゃならない。明日出発しても着くのに二日かかるわ」とわこは体調がまだ戻らず、今日は家で休むしかなかった。

「本気であいつを見つけたいと思わないのか?」奏の眼差しが冷たく鋭くなる。「結菜が生きていようといまいと、あいつに会って、どこに葬ったのかはっきりと確かめたい!本当に海に散骨したなんて信じない!必ずはっきり答えを聞き出す」

彼の激しい感情を感じ取り、とわこはその大きな手をぎゅっと握った。「奏、たとえ血のつながりがなくても、そんなに結菜を大事に思ってるのね」

「血縁がなくても、何十年もの情は本物だ。犬だって数年一緒に暮らせば情がわく。人間ならなおさらだ」

「わかったわ。私も一緒に真を探しに行く」

彼女の言葉に、奏は胸の奥を打ち明ける。「とわこ、俺は結菜がまだ生きてる気がしてならない。夢で何度も見た。彼女が夢に出てきて、俺に『迎えに来て』って言うんだ」

「あなたが彼女
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