Share

最後の救命胴衣

Author: 6jay
last update publish date: 2026-09-16 19:16:26

最後の救命胴衣が、白石澪の手に渡ることはなかった。

鷹宮怜司が乗組員からひったくるように受け取った。澪は当然、一番近くの負傷者に渡すものと思った。

怜司はまっすぐ一ノ瀬莉香に向かった。

「腕を上げて」

「怜司、澪さんは?」

そう尋ねながらも、莉香は素直に両腕を上げた。怜司は黄色い救命胴衣を彼女に着せ、腰のベルトを二度引いて締めた。

澪の視線がゆっくり下がる。

白いシャツの左側は、血に染まっていた。息を吸うたび、肋骨の内側が裂けるように痛む。けがを知らなかったはずがない。さっきから怜司は何度も、こちらを見ていた。

「私も、けがをしてる」

怜司の手が一瞬止まった。

「わかってる」

澪は言葉を失った。見えていなかったわけではない。血を見たうえで、莉香に救命胴衣を着せたのだ。

「なら、どうして莉香さんに渡すの?」

「莉香は泳げないんだ」

「私は、血が出てるの」

その言葉を裏づけるように、シャツの下から赤いものが雨水ににじんだ。左腕を上げようとしたが、肩の高さで痛みに止められた。普段なら1キロ以上泳げる。けれど今の体では、波を一つ越えられるかさえわからない。

そばで見ていた年配の投資家が、自分の救命胴衣のバックルに手をかけた。

「白石常務、これを着なさい。私はいかだに乗れさえすればいい」

澪はすぐにその手を止めた。

「だめです。心臓のお薬を飲まれているとおっしゃいましたよね。水に落ちたら、すぐ危険な状態になります」

「じゃあ、君はどうするんだ」

「ほかの方法を探します」

怜司はそれを見ても目をそらした。むしろ、澪が自分から譲ったことを都合のいい根拠にした。

「ほら。おまえも、誰に先に着せるべきかわかってるじゃないか」

「だから聞いてるの」

澪の声が冷えた。

「今あなたが決めてるのは、誰を助けるかじゃない。誰なら捨てていいかよ」

「救助隊はすぐ来る」

澪は雨を拭いもせず、彼を見た。

「遭難信号が届いたかどうかさえ、確認できてない」

「おまえは泳げるだろ」

澪が救助の資格を取った日、怜司は濡れた彼女を抱きしめて言った。

海では、俺よりおまえのほうが頼りになるな。

6年前の褒め言葉が、今は澪を海に残す口実になっていた。彼の顔に先に浮かんだのは、心配ではなく面倒くさそうな表情だった。

怜司は莉香の肩を抱いた。

「この子は水に入るとパニックになる。おまえは救助訓練だって受けてる」

「訓練を受けていれば、血は出ないの?」

怜司の口元がこわばった。

「こんなときに感情的になるなよ」

澪は乾いた笑いをのみ込んだ。

周りの乗客は目をそらした。申し訳なさそうな人もいれば、自分の救命胴衣のベルトを握り直す人もいる。この状況で他人の正義感にまで期待はできない。それは澪もわかっていた。

それでも、婚約者だけは違ってほしかった。6年間、誰より近くにいた人なのだから。

船長がけがをした腕を抱えて上がってきた。

「二つ目のいかだは、乗客を乗せたままロープが切れて流されました! 船尾の非常用ボートが最後です!」

甲板の端につられていた小型のゴムボートが、波の上へ下ろされた。定員は11人。すでに負傷者と乗組員、合わせて7人が乗っている。

「あと4人まで乗れます!」

怜司は莉香を先にボートへ連れていった。

澪はその背中を見た。

「怜司」

彼が振り返る。

「私には待てと言って、自分は乗るの?」

「俺が莉香を支えてやらないと」

「乗組員がいるわ」

「澪、今は言い争ってる場合じゃないだろ」

そのとおりだった。言い争う時間はない。

だから澪は、もう言い争わなかった。残った乗客の数を確かめ、けがをした船長を支えてボートへ続く階段まで連れていった。船長が乗ると、空きは三人分になった。

怜司は先に莉香を乗せた。

続いて自分も手すりを越え、ボートへ下りた。

残った空きは、一人分。

澪の背後で、浸水警報が長く尾を引いて途切れた。電源が完全に落ちたのだ。

闇の中で、船がさらに深く傾いた。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   誰も置き去りにしない

    事故から1年後。白石澪は、セーフオーシャンの代表取締役社長に就任した。就任式は、セーフオーシャンが主導したアジア海難救助協力組織の発足式と同時に行われた。澪が求めていたのは新しい肩書よりも、複数の企業が共に守る引き返しの基準だった。その間に鷹宮怜司は、殺人未遂、安全資料の改ざん、金融機関への虚偽資料提出などで、一審で8年の実刑判決を受け、法廷で身柄を拘束された。一ノ瀬莉香も、事故直後に撮影映像の削除を指示し、虚偽資料を配布した罪で有罪判決を受けた。二人は最後まで、より重い責任を相手に押しつけ合った。澪は法務を通して判決文を受け取ったが、関連記事を探しはしなかった。法廷で自分が見たこと、されたことを話したあとは、捜査機関と裁判所に任せた。彼らの刑の重さに、自分がどれほど回復したかを決めさせたくなかった。鷹宮海運は債権団の共同管理のもと、不採算航路を整理し、鷹宮一族は経営権を失った。セーフオーシャンには、債権の回収以上の変化が残った。この1年で、澪はすべての救助船の非常装備の配置を見直した。船長には、社長の指示を拒否して独立して引き返せる権限を与えた。危険を知らせる報告が削除、または軽く書き換えられれば、役員の承認を通さず監査委員会へ転送される仕組みも導入した。マリーナで崩れた手順を、一つずつ立て直した結果だった。就任式が開かれた神戸海洋コンベンションセンターの背後には、港が広がっていた。壇の下には、事故で救助された乗客、ボートから手を伸ばした乗組員、原本の報告書を持ってきた宮田航平が座っていた。澪は鷹宮海運の名を出さなかった。「安全とは、事故がなかったという結果ではありません。誰かが危険を口にしたとき、止められる権限です。そして、一番最後に脱出する人まで確認する手順です」拍手が続いた。そのとき、黒瀬隼人の携帯が短く鳴った。メッセージを見ると、すぐ壇の脇へ近づいてきた。「社長、緊急事態です」東シナ海を航行中の大型貨物船で、機関室の爆発が起きていた。火災が広がり、船員18人のうち5人の位置が確認できない。最も近くにいる救助船は、セーフオーシャンの『ガーディアン3号』だった。役員が言った。「就任記者懇談会は、こちらで進めます。社長はお残りになっても」澪は椅子にかけていたジャケットを取った。「人が、海にいるんです」「現場には黒瀬本部長と

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   私が死んでいたら?

    事故から、7か月がたった日だった。白石澪は、海上保安庁による現場検証を終え、洲本港の桟橋を出ようとしたところで、鷹宮怜司を見つけた。彼は立入規制線の外にいた。最初の身柄拘束の請求は退けられたが、追加の証拠が見つかったあと、殺人未遂や安全資料の改ざん、金融機関への虚偽資料提出などで、在宅のまま起訴されていた。社長の地位と経営権を失って数か月。スーツはだぶつき、顎には無精ひげが伸びていた。送られてくる謝罪文は、そのたびに違った。「やむを得ない判断」「莉香のパニック」「会社のための選択」。文章が変わるたび、責任を取るべき相手も変わった。澪は一度も返信しなかった。検証用のブイは、澪が落ちた場所を示していた。夜ごと巨大に迫ってきたあの場所は、昼に見ると、ただの水面だった。人が一人消えても、何の痕跡もなく元に戻る海。怜司は、そのブイを背に待っていた。澪が先に見たのは、彼の惨めな表情ではなく、捜査官が張った規制線の前で止まった足だった。黒瀬隼人が、澪の前に出た。「車を呼びます」「少しだけでいいです」澪が足を止めると、怜司が近づいてきた。最初は何を言うつもりだったか忘れたように、唇だけを動かしていた。「澪」「弁護士を通して連絡して、と言ったはずだけど」「今日を逃したら、もう会えない気がして」彼は周りを見た。記者も、家族もいない。澪が自分だけを見ているのを確かめると、突然ひざまずいた。「あの日は、どうかしてた」澪は表情を変えずに見下ろした。「あんなに危険な状態だとは思わなかった。救助隊はすぐ来ると思ったし、おまえなら持ちこたえられると信じてた」「だから、私の指を外した?」「ボートが揺れたんだ。莉香は叫ぶし、みんな早く行けと言うし……俺だって、まともじゃなかった」「そのあとの記者会見は?」怜司がうつむいた。「怖かった。会社も、おまえも失うのが」「私はもう、海に置いてきたでしょう」彼の肩が震えた。「一度だけ、やり直す機会をくれ。望むことは何でもする。鷹宮海運の株も手放すし、公の場で謝る。一生かけて償うから」「今、あなたにどれだけ株が残ってるの?」怜司は口を閉じた。謝罪文の最後には、いつも示談の申し入れがついていた。今も、自分には差し出せないものを差し出して、取引をしようとしている。「許したら、示談書に署名してほしい。そういう話ね?」

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   あなたたちが選んだ海

    鷹宮海運は、結局、船を3隻売り、二つの航路を整理した。人員削減の名簿には、事故に何の関係もない社員の名前まであった。白石澪は、債権者として協議できる範囲で、船員の賃金と退職金の支払いを優先条件に入れた。債権団の合意で、差し押さえた船の売却代金の一部を別口座に分け、運航要員の3か月分の賃金を確保した。協力会社の少額債権も、優先して精算することになった。回収額は多少減るかもしれなかったが、澪は決裁を変えなかった。「復讐のために50億円を回収したと言われています」藤沢が慎重に言った。「その一方で、回収率を下げてまで社員を守れば、株主から問題にされるかもしれません」「契約違反の責任は、決定権のあった人に問うべきです。何も決められなかった人から先に切り捨てたら、鷹宮海運と同じになります」澪は今回の事故を機に、海洋安全に関する公益通報者の支援基金も設けた。宮田航平のような実務担当者が、危険を報告したあとに解雇や訴訟を恐れずに済むよう、法律費用と生活費を支援する仕組みだった。「事故を防いだ報告書は、利益を生まないという理由で、いつも過小評価されます」最初の運営会議で、澪は言った。「これからは、止めるべきだと言った人に、その判断の費用を一人で背負わせません」怜司の転落よりも、同じ事故を防ぐ仕組みを残すほうを、澪は選んだ。「なぜ、ここまで気を配るんですか?」藤沢直樹が尋ねた。「鷹宮海運が憎くても、社員たちが私を捨てたわけではありませんから」社長の座を追われた怜司は、それでも最後まで、責任を分け合う相手を探した。報道機関に、声明を出した。【事故当時、一ノ瀬莉香氏の極度のパニックと再三の催促が判断に影響した。安全報告書の修正は実務担当者による通常の文書整理であり、代表が危険の隠蔽を命じた事実はない】莉香は、すぐに反撃した。澪が生きて戻らなかった場合を想定し、報道対応案を作れと怜司が命じたメッセージ。虚偽の説明を続ければ広告契約を保証すると約束した録音。それらを公開した。「私一人だけ、破滅するなんてごめんよ」取材陣の前で、莉香は言った。鷹宮海運の元技術管理室長は、怜司の指示を伝えただけだと主張した。怜司は、現場が文言を削りすぎたのだと反論した。征一郎会長は、すべての責任を息子と実務担当者に押しつけた。役員たちは、最終決定者は自分ではなく相手だと

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   代表取締役・鷹宮怜司、解任

    映像公開から6週間で、鷹宮海運の売上見通しは半分近くに落ち込んだ。大口荷主4社が新規契約を見送り、既存契約2件は安全管理義務違反を理由に解除された。保険会社はマリーナの保険金支払いを止め、虚偽資料提出に関する求償を検討していた。担保となっていたタカミヤ・フロンティアは、ついに裁判所の管理下で売却手続きに入った。メインバンクは、ほかの船2隻についても追加担保を求めた。鷹宮海運の取締役会は、日曜の朝に緊急招集された。本社1階では、船員の家族と協力会社の社員が、未払いを心配しながら待っていた。船に燃料を供給していた業者は現金払いを求め、港の荷役会社は、未収金が片づくまで作業量を減らすと通告した。会社の危機は数字で始まった。だが真っ先に不安にさらされたのは、意思決定に関わったことのない現場の人たちだった。会議が始まる前、債権団から三つの条件が届いた。怜司の即時解任。征一郎会長の経営一線からの退任。創業家の持ち株を担保とする新規資金の投入。一つでも拒めば、共同管理の交渉を打ち切るという内容だった。征一郎は息子に、自ら辞任するよう求めた。「おまえが出ていかなければ、会社は救えない」「父さんだって、映像が出るまでは、俺に何とかしろと言っていたじゃないですか」「そのときは、ここまで壊していたとは知らなかった」怜司は笑った。父は息子の判断を一度も止めなかった。それなのに今は、すべてを怜司一人の逸脱として片づけようとしていた。裁判所は、住居が定まっており、主要な証拠もすでに確保されているとして、最初の身柄拘束の請求を退けていた。怜司はその決定のあとも、社長の席に座った。会議室の外には、記者が詰めかけていた。「私が退けば、会社はさらに揺らぎます」取締役たちを見回して言った。「今必要なのは責任者の交代ではなく、債権団との交渉です。セーフオーシャンとは、私が直接話をつけられます」社外取締役の一人が尋ねた。「白石常務は、あなたからの電話に出たことがあるんですか?」怜司の顔がこわばった。「個人的な感情が落ち着けば、話し合いに応じるでしょう」「その個人的な感情の理由が、全国に公開されたんです」別の取締役が、書類を置いた。「社長は出航禁止の報告を軽く書き換え、金融機関に虚偽の資料を出しました。事故のあとは、被害者に責任を押しつけました。そのすべてが、会社の

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   初恋相手の記憶

    一ノ瀬莉香は、取調室に入るなり泣きだした。莉香は怜司にとって、大学時代の初恋の相手だった。別れて長く連絡を絶っていたが、鷹宮海運のクルーズ事業の広報ディレクターとして戻ってきた。怜司は婚約後も、社長室への入室権限と社用車を彼女に与えていた。彼は、澪との結婚は会社のために必要な契約にすぎないと言っていた。最後の救命胴衣が自分に渡ったとき、莉香は、結局怜司は自分を選んだのだと信じた。押収された携帯からは、事故当日の夜、広報担当者にイベントの撮影映像とクラウドのバックアップを削除させるメッセージも見つかった。莉香は、怜司の指示を伝えただけだと主張した。「私は、水を見るだけで息ができなくなるんです。あの日も、何が何だかわからなくて」パニック状態で、救命胴衣を誰に着せてもらったのかさえ覚えていないと言った。澪がボートにしがみついていた姿も見ておらず、「もう行って」は、沈む船から離れようという意味だったのだと。捜査官は黙って、音声分析の結果を再生した。公開版よりもさらに雑音を取り除いた、全体の音声だった。澪がボートにしがみつく場面で、莉香の声が鮮明になった。――怜司、早く行って。――こんなことをしたら、私、死ぬ。――もう行って。莉香の泣き声が止まった。「パニック状態だったという割に、状況をかなり正確に見ていますね」「私は……怜司さんが、ちゃんと助けると思っていたんです」「白石澪さんが落ちたあとも、ロープを投げようとは言っていません」「私が決めたことじゃないでしょう。手を放したのは怜司さんです」その言葉は、ほどなく怜司の弁護人へ伝わった。怜司は別の聴取で、莉香がパニックになり、ボートを出すようせかしたと供述していた。「私は澪を引き上げようとしました。でも莉香が、ボートがひっくり返ると叫んだんです。ほかの人たちも、早く行こうと」「映像には、あなたが乗組員を止める姿が映っています」「莉香が私の腕をつかんだんです」「その力のせいで、指を一本ずつ外したと?」怜司は答えられなかった。二人は事故以来初めて、同じ取調室で向き合った。共同での対応を話し合っていた弁護士たちは、すでに別々の側についていた。莉香の弁護人は、彼女が直接指を外したわけではなく、救助の指揮権もなかったことを強調した。怜司側は、莉香が何度もせかしたため判断を誤ったと反論した。

  • 沈むヨットで、婚約者に見捨てられました   助けなかったことと、死に追いやったこと

    捜索は9時間に及んだ。捜査官たちは、鷹宮怜司の社用携帯とノートパソコン、技術管理室のサーバー、事故対応会議の録音を押収した。最初に明らかになったのは、事故直後に作られた「公式説明」だった。【白石澪常務は、装備点検のため自発的に船に残った】【鷹宮怜司社長は、乗客全員の乗艇後、最後に船を離れた】【一ノ瀬莉香ディレクターはパニック状態にあり、当時の記憶はない】草案の作成時刻は、救助隊が澪を発見する4時間前。そのとき鷹宮海運は、澪が生きているかさえ知らなかった。それでも文書には、すでに彼女が自分から残ったと書かれていた。怜司は取調室で、同じ言葉を繰り返した。「ボートがひっくり返ると思ったんです。より多くの命を守るための選択でした」捜査官が浮力分析表を差し出した。「定員11人。当時の乗艇者も11人。あなたが下りて被害者が乗れば、人数は変わらず、許容重量も超えません」「波がひどかったんです。数字どおりにいく状況ではありませんでした」「では、あなたが下りればよかったのでは?」怜司は口を閉じた。録音機は回り続けた。捜査官は、同じ質問を繰り返さなかった。「被害者はそう求めていますね。『だったら、あなたが残って』と。なぜ断ったんですか?」「私は会社の社長です。事故に対応しなければならなかった」「ボートの中で、何に対応したんですか?」怜司は目をそらした。捜査機関は、単なる救助の優先順位と、積極的に危害を加えた行為を分けていた。誰かを先に乗せたというだけで、すぐ犯罪になるわけではない。だが、すでにボートにつかまっている人の指を一本ずつ外し、救助ロープも投げなかった行為は別だった。現場の再現では、怜司が下りて入れ替わる方法と、救助ロープを使う方法の双方が検証された。どちらも危険がゼロではなかった。それでも、澪の指を外して海へ落とすことだけが、唯一の選択ではなかった。捜査官は再現映像を、一場面ずつ止めた。「被害者の手を外したあと、救助ロープはあなたの足元にありました。なぜ投げなかったんです?」「気が動転していました」「それなのに、広報室にはすぐ電話していますね」「会社の社長ですから」「被害者を捜してもらう通報より、会社の対応を優先したということですか?」何を答えても、同じ結論へ戻る。怜司はそれに気づいた。自分は社長だったという主張は、救助の

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status