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第103話

Author: 雨の若君
洋介の目がぎらりと光る。「何だ、お前……俺が怖いのか?」

素羽の心臓がドクンと音を立て、両手にはじっとりと汗が滲む。指先が痺れてくる。これはもう、体が勝手に反応してしまっている。

洋介は、その様子を面白がるように目を細める。

男っていうのは、根っこがどこか卑劣だ。相手が怯えれば怯えるほど、狩人の本能が刺激されるらしい。

洋介は、さらに一歩、距離を詰めてくる。

素羽は拳を握りしめ、奥歯を噛み締めて叫ぶ。「触らないで!」

「おやおや、随分と強気じゃないか」

洋介は、子供のころからずっと悪ガキだった。そのまま大人になっても変わらず、痛い目を見ても懲りない性分だ。

素羽が拒めば拒むほど、逆に火が付く。「触ったらどうするんだ?お前に俺が止められるのか?」

その手が素羽の肌に触れた瞬間、全身に鳥肌が立つ。まるでフラッシュバックのように、嫌な記憶が一気に蘇る。

屈辱と、惨めさ。

自分は、何も悪いことなんてしていないのに。どうして、みんなして自分をいじめるの?

嫌いでもいい。でも、せめて傷つけないでほしい。

何度も、何度も。もう、もう耐えられない!

素羽は、手に持っていた杖を思わず振り上げ、そのまま洋介に叩きつける。

「やめて!触らないで!!」

油断していた洋介に、杖は見事に命中する。

そんなに痛くはなかったが、洋介は何よりもプライドを傷つけられた。彼は、面子を何よりも大事にしているのだ。

「てめえ……」

洋介は反射的に素羽にビンタを食らわせる。素羽はそのまま地面に倒れ込んだ。

「何様のつもりだよ!俺がお前に手を出すのは、ありがたく思え。俺が本気出せば、お前なんか……」

洋介の手が素羽の襟元を乱暴に引き裂く。夜風が首筋から体中に沁みて、冷たさが一気に駆け抜ける。

素羽は、必死に美玲の方へ視線を向ける。美玲は最初、驚いたように足を一歩踏み出しかけた。しかし、隣にいた人に袖を引かれ、そのまま止まってしまう。

体だけでなく、心まで凍りつく。

素羽は、美玲に何も恨まれる覚えはなかった。義姉として、できる限り尽くしてきたつもりだった。

外の人間と一緒になって自分をいじめるのは、まだ我慢できる。でも、今この状況で、見て見ぬふりをするなんて!

自分はまだ彼女の義姉で、須藤家の嫁で、司野の妻なのに。もしここで何かあったら、須藤家の顔も立たないでし
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