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第209話

Autor: 雨の若君
司野は途中で行為を止めたが、素羽は少しも驚かなかった。すべて予想通りだったのだ。素羽は背を向け、そのまま布団に身を沈め、体を丸めた。

翌日、浴室の鏡の前で。

一夜明けても、司野が残したキス痕は薄れるどころか、むしろ色を濃くしていた。素羽はコンシーラーでそれらを丁寧に隠し、そのまま出勤した。

会社に着くやいなや、亜綺が自ら近づいてきて声をかけてきた。

「あなたもトライアンフのコンテストに申し込んだって聞いたんだけど?」

この「も」という一言が、妙に引っかかる。ということは、亜綺自身も参加しているということだろうか。

そう考えた瞬間、その推測はすぐに裏づけられた。亜綺は顎をわずかに上げ、傲慢な眼差しで言い放った。

「私がいる限り、あなたに目立つことはさせないわよ!」

素羽は落ち着いた声で返した。

「上には上がいるって、知らないの?それに、あなたのライバルは私だけじゃないでしょう。ここで私に張り合う暇があるなら、自分の作品に集中したら?」

亜綺は鼻で笑った。

「私が怖いんでしょ」

素羽は一瞬、言葉を失った。

亜綺がどうしてそんな結論に至ったのか、まるで理解できなかっ
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  • 流産の日、夫は愛人の元へ   第141話

    素羽は二秒ほど沈黙してから、背を向けて歩き出す。「素羽!」司野が立ち上がり、追おうとする。だが動いた途端、美宜が強く抱きしめてきて、興奮した声で叫ぶ。「行かないで、司野さん、お願いだから行かないで」その足音がぴたりと止まったのを耳にして、素羽の瞳にはあざけりが浮かぶ。胸が痛い。喉も痛い。目も、じんじんと痛む。いつの間にか雨が降り出し、しとしとと降る雨粒が体にあたって、ただ冷たさだけが募る。「奥様、お送りしましょうか」岩治が慌てて追いかけてくる。素羽はぽつりとつぶやく。「司野は……私に連絡しようと思ったことがあるの?」岩治は言葉を選びながら返そうとする。「社長

  • 流産の日、夫は愛人の元へ   第117話

    素羽は、彼がわざと波風を立てようとしているのは分かっている。でも、彼の言葉自体は間違っていないとも思う。たしかに事実は事実だ。しかし、素羽は彼らの間にある偽りの火種になるつもりはないし、そんな根も葉もない罪を背負うなんて、まっぴらごめんだ。素羽は彼の挑発に乗らず、そのまま足早にその場を離れる。すると翔太が、ニヤリと口角を上げる。「お義姉さん、逃げちゃったよ?追いかけなくていいの?もし面倒なら、代わりに僕が追いかけてあげてもいいけど?」司野は冷たい顔で答える。「俺、気が短いのは知ってるよな」そう言い捨てると、彼も余計なことは言わず、すぐに去っていった。翔太の顔には、二人が

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