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第3話 ​

작가: バブちゃん​
流れるように公生の立ち上げたばかりのベンチャー企業に入社し、一番下っ端の社員として泥臭く働き始めた。

最初は「恋愛関係を公表しないのは、君がコネで出世したと周囲に言われないためだ」と言われ、私は待った。

自分の実力でマーケティング部のトップに上り詰めた時、今度は「つむぎとの親友関係にヒビが入るかもしれないから」と言われ、私はまた待った。

いつかはきっと、妻として迎えてくれると信じて疑わなかった。

けれど、リナの投稿にあったあの婚姻届を見るまで、目を覚ますことができなかった。

彼は結婚したくなかったわけではない。

ただ、私と結婚したくなかっただけなのだ。

車を走らせ、公生と五年間同棲していたマンションへ戻った。

退職の手続きには数日かかるが、まずは自分の荷物をまとめて出ていくことにした。

スーツケースを引き出し、クローゼットを開けると、彼の服が大半を占めている。

以前、私は彼の服があまりにも地味すぎると言って、明るい色のパーカーを勧めたことがあった。その時彼は、「俺は社長なんだから、落ち着きが必要だ」と拒んだ。

それなのに今、クローゼットの最も目立つ場所には、流行りのストリートブランドの、鮮やかな色のパーカーが何着も掛けられている。

変わるのが嫌だったわけではない。

ただ、私のために変わりたくなかっただけだ。

自分の服を一枚一枚丁寧に畳んでスーツケースに詰めていると、背後で鍵の回る音がした。

公生が入ってきて、開けられたスーツケースを見るなり、不快そうに眉をひそめた。

「リナとは本当に何でもないんだ。いい加減、怒るのをやめてくれないか?」

彼は歩み寄り、私の手を握ろうとした。

「籍を入れたのはやりすぎだった。今日の午後にでも、彼女と役所に行って離婚届を出してくる。

久木山グループとの契約書さえ交わして、会社が落ち着いたら、俺たちの関係を公表するから。な?」

私は口を開き、「別れよう」と言いかけようとした。

すると彼は突然私の言葉を遮り、周囲を見回した。

「そうだ、M区のあのマンションの鍵、どこに置いた?」

「ナイトテーブルの一番下の引き出しよ」

私は一瞬ためらったが、それでも尋ねずにはいられなかった。

「資金繰りのために、あのマンションを売るの?」

彼は一瞬呆気に取られたが、すぐに他愛のないことのように笑った。

「売るわけないだろう。空けておくのももったいないし、リナの今の家の契約が切れるらしいから、あそこにしばらく住まわせることにしたんだ」

胸の奥が何かに強く塞がれたかのように、鈍い痛みが走った。

M区のあのマンションは、去年の私の誕生日に、彼が「俺たちの結婚後の新居として買おう」と言ってくれた場所だった。

それを、別の女に住まわせるという。

彼は私の青ざめた顔に気づくこともなく、さらに言葉を続けた。

「それから、久木山グループの契約だけど、書類が整ったらそのままリナに引き継いでやってくれ。彼女、もうすぐ試用期間が終わるんだ。この案件を成功させて、正社員に登用してやりたい。

心配しなくていい。ボーナスは全額君の口座に振り込ませるから」

私が返事をする間もなく、彼のスマホが鳴り響いた。

画面の表示を確認した途端、彼の声はこれ以上ないほど甘く優しくなった。

「うん、住所を送るから、引っ越し業者にそのまま向かうよう伝えていい」

彼は電話に応じながら、私に一瞥もくれず、そのまま外へ去っていった。

カチャリと静かにドアが閉まった。

私は誰もいない、がらんとしたリビングに立ち尽くし、気がつくと声を上げて笑っている。

8年間の青春を捧げた私は、彼にとって、入社してわずか3ヶ月の新人社員よりも価値のない存在なのだ。

……

スーツケースを引きずってマンションを出る時、一度も振り返らなかった。

そのまま、実家へと車を走らせた。

一弘との縁談を承諾して以来、母の顔から笑みが消えることはなかった。玄関に入るなり、母は嬉しそうに駆け寄ってきて、スーツケースを受け取ってくれた。

「やっぱり一弘くんが一番確実よ。小さい頃から見てきた子だもの、人柄も分かってるし、彩芽が彼と結婚できるなら、お父さんも私も心の底から安心できるわ」

私と一弘は、幼馴染という言葉では表せないほど、長い付き合いだった。

私の母と彼の母は親友同士で、昔は冗談半分に「お腹の中にいる時から婚約させよう」と話し合っていたほどだった。

もし大学時代に公生に出会っていなければ、私はとっくに一弘と結婚していただろう。

彼がずっと私のことを想ってくれていたことも、知っていた。

今回、公生の会社の資金繰りがショートし、万策尽きた時、プライドを捨てて一弘の元へ向かい、公生に手を差し伸べてほしいと頼み込んだのも、私だった。

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