Partager

浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された
浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された
Auteur: 鳳小安

第1話

Auteur: 鳳小安
前田奈津美(まえだ なつみ)が、前田隆(まえだ たかし)と再婚して3年が経ったある日、奈津美は超高級クラブ「エリュシオン」で、隆がNo.1ホステスである菅原千佳(すがわら ちか)と一緒にいる場面に遭遇してしまった。

シャンデリアが輝く個室で、隆は革張りのソファにゆったりと体を預けている。左手の指には葉巻を挟み、右手はスリットの深いドレスを着た千佳の肩を軽く抱いていた。

そして、千佳の前には高価そうなプレゼントの山。

隆はその中からネックレスをひとつ取り出すと、「どうかな?全部お前のために買ってきたんだ」と囁いた。

奈津美は、そのプレゼントに見覚えがあった。

それは、隆がわざわざ海外までオークションに出向き手に入れてきた品々だった。数日後には二人の結婚記念日を控えていたから、奈津美はてっきり自分へのプレゼントだとばかり思っていた。

だが、それはどうやら思い過ごしだったみたいだ。

しかし、プレゼントを贈られた張本人である千佳は、箱も開けずに淡々と言った。

「前田さん。私はあなたのこと、好きじゃないって言いましたよね?だから、いくら私に貢いでくれようとも、私の気持ちは変わりません。それより、奥さんの機嫌でもとったらどうですか?再婚したばかりなのに、また離婚になっちゃいますよ?」

隆は口の端を上げて笑った。「あいつが俺たちのことに気づく?そんなわけないさ。絶対にバレやしないよ」

周りの男たちも口々に囃し立てる。「隆はもう3年もお前に貢いでるんだぞ?でも、こいつの奥さんは全然気づいてないんだ」

「それに、男なんてみんなこんなもんだ。ましてや隆みたいな超一流の男なら、愛人の一人や二人いたって、全然おかしくない。でも、残念なことに、こいつの奥さんがそれを許さないからさ。もし、奥さんの心が広かったら、とっくにお前を家に連れ帰ってるぞ」

すると、隆は周りに冷たい視線を投げつけた。「黙れ。奈津美のことは悪くいうな」

そう言ってから、隆は千佳の方へ向き直り、今度は別人のように甘く囁く。「この後、食事でもどうかな?何もしない。ただ食事をするだけ。お前がいいって言わない限り、俺は指一本も触れないから」

隆が千佳に向ける優しい眼差しを見て、奈津美は全身が凍りつくようなショックを受けた。

再婚期間も入れれば、結婚して8年になるため、奈津美は隆の性格をよく理解していた。

彼はプライドが高く、冷たくあしらわれるのを何より嫌う。あんな態度を取られたら、とっくにキレているはずなのに、千佳に対しては、こんなにも辛抱強く接することができるなんて。

涙が頬を伝う。奈津美は黙ってその光景を写真に撮ると、自嘲的な笑みを浮かべた。

今夜は、三流タレントのゴシップでも撮ろうと思って来ただけだったのに、まさか自分の夫の浮気現場を、また目撃する羽目になるとは……

3年前もそうだった。隆が若いモデルとベッドにいるところに、奈津美は遭遇してしまった。

奈津美はモデルの女に何発か拳を見舞うと、その場で隆に離婚を迫った。

まだ若く遊び盛りであった隆だったため、その場の勢いだけで離婚届を受け入れた。

しかし、奈津美が出ていって3ヶ月もしないうちに、隆は外の女に飽きてしまったらしく、再び狂ったように奈津美へ再婚を迫ったのだった。

その時、もう二度と怪しまれることはしない、絶対に裏切らないと隆は誓った。

奈津美は冗談で、「じゃあ星が欲しい」と言った。

すると、隆は本当に星を一つ買い、「ウィステリア」と名付けた。「ウィステリア」とは、藤の花の洋名であり、奈津美の旧姓もまた「紫藤」であったため、隆はこの名に決めたそうだ。

二人の愛がこの星のように、天まで届くほど大きくなりますように、と彼は言った。

役所で再婚の手続きをした日、隆はまるで世界を手に入れたかのように喜んでいた。

愛車に寄りかかり、彼は自信と喜びに満ちた目で言った。「奈津美。今度こそ、もう絶対にお前の手を離さないから」

その時の奈津美は何も言わず、ただ婚姻届受理証明書をぼんやりと眺めていた。

よりを戻したのは、確かに隆への未練があったから。5年も続いた関係を、そう簡単には捨てられなかった。

それに、隆の母親の前田優里(まえだ ゆうり)が約束してくれた、経済番組のキャスターの座も諦めきれなかったのだ。

長年、芸能記者として働いてきた奈津美は、キャスターへの転身を考えていた。

前田家のコネがあれば、深津市で指折りの社長たちに直接インタビューができる。

復縁の知らせを受けた優里は、奈津美にこう言った。

「隆は落ち着きがないから、よりを戻しても、もしかしたらまた浮気するかもしれない。もし本当に耐えられなくなったら、私のところに来て。あなたが望むものは何でもあげるから。離婚の手続きから財産分与まで、隆と完全に縁を切らせてあげる」

3年間は平穏な日々が続いていた。だが、いざこの時が来ると、やはり受け入れられなかった。

隆がそんなに刺激を求めるのなら、望み通りにしてあげるべきだろう。

奈津美はスマホを手に取り、二人の人物にメッセージを送った。

一人は、会社の編集長。【大スクープが手に入りました。この記事は、私に書かせてください。そして、この記事を書き終えたら、会社を辞めさせていただきます】

もう一人は優里。【お母さん。隆との離婚することにしました。なので、離婚手続きの準備をお願いできますでしょうか。それから、約束していただいていた『深津テレビ』の経済番組のキャスターのポストもお願いしますね】

すぐに返信があった。

1通目は編集長から。【大スクープか!くれぐれも早まるなよ】

2通目は優里から。【3日もらえるかしら?あなたの望むもの、全て用意しておくから】

返信を打ち終えると、ちょうどボーイの人が飲み物を運んできた。

「前田さん。どうしてここにいらっしゃるんですか?」

その声に、個室にいた全員が奈津美の方を一斉に振り向いた。

隆も、その一人だった。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第18話

    「岡本さん!」奈津美は慌てて、信じられないという目で慎也を見た。「何してるんですか!私をかばったりなんかして!死ぬかもしれないのに……」「君も俺を助けてくれましたから……」慎也は奈津美を見つめる。その漆黒の瞳には、読み解けない感情が渦巻いていた。「岡本社長にまで色目を使ったのね!なんであなたばっかり!殺してやる!殺してやるわ!」千佳の金切り声が響き、奈津美はようやく相手が千佳だと分かった。「菅原!あなただったの!人を殺そうだなんて、狂ってる!」「そうよ、狂ってるの!エリュシオンに戻されたあの瞬間から、私はもう狂ってるのよ!」千佳はナイフを振りかざし、なおも奈津美に襲いかかろうとしたが、駆けつけたボディーガードに取り押さえられた。「岡本様!」「岡本様、ご無事ですか?すぐに病院へお連れします!」ボディーガードは慎也を車に乗せた。車は猛スピードで走り去っていく。奈津美はその場に立ち尽くし、呼吸するのも忘れていた。「離して!離してよ!この女を殺すの!あいつが私の人生をめちゃくちゃにした!殺してやる!」千佳は狂ったように、わめき続けていた。奈津美は振り返ると、千佳に駆け寄り、力いっぱい平手打ちをした。「菅原!いい加減にして!隆みたいなクズ男のために、人まで殺そうとする必要なんてある?そんなことをしたらどうなるかわかるでしょ!刑務所行きよ!あんな男のために刑務所に入る価値なんてないから!」その平手打ちで、千佳は完全に我に返った。彼女は地面に落ちた血のついたナイフを見て、ハッと息をのむ。「何が……これをやったのは、私?わざとじゃないんです。自分が何をしてるのか分からないんです。前田さんはどこですか?彼に会わせてください!」「すみませんが、彼女を警察署に連れて行ってくれますか?」奈津美はため息をつき、自分は急いでタクシーを拾って病院へと向かった。奈津美は不安げに手術室のドアを見つめ、ひたすら神に祈る。なぜ慎也が自分にここまでしてくれるのかは分からない。でも、彼に何かあったらと考えると、本当に怖かった。「奈津美、大丈夫か?ケガはないか?」知らせを聞いた隆が、すぐに駆けつけてきた。奈津美が無事な姿を見て、彼はようやくほっとしたようだ。「隆。菅原が警察署に行ったことは知って

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第17話

    雰囲気の良いレストランで、奈津美は真剣な顔つきで皿の上のステーキを切っていた。しばらくして彼女が顔を上げると、慎也がステーキにほとんど手をつけず、自分をじっと見つめていることに気づいた。あまりに熱のこもった視線に、奈津美は思わず顔を赤らめる。「岡本さん。お腹空いてるんじゃないんですか?」慎也はそこでようやく微笑んで、ステーキにナイフを入れ始めた。「ええ、ただ待っていたんです」「何を待っているんですか?」「ある人が、少しでも俺のことを思い出してくれるのを待っているんです」「思い出す?」奈津美は眉間にしわを寄せた。どこか嫌な予感がする。「もし、君の腰には蝶の形をしたあざがあるって、俺が言ったら?」そのたった一言で、奈津美の頭に血がのぼった。彼女は勢いよく立ち上がる。テーブルがガタンと音を立てた。「あの夜の男!」どうりで目の前の男の体つきや匂いに、強烈な既視感を覚えたわけだ。あの夜、無理やり自分を抱いた男!奈津美はためらうことなく手を振り上げると、慎也の頬を思いっきりひっぱたいて、その場を去ろうとした。しかし、慎也は怒る素振りも見せず、黙って彼女の後を追った。「あの夜、人に薬を盛られてしまって……ボディーガードに部屋のドアを見張らせて、誰も入れないように言いつけていたんですが、まさか君が入ってくるとは。でも、君を傷つけたのは事実です。だから償わさせてください――」「償い?何で償うっていうのよ?」奈津美は鼻で笑った。「どうしてあなたたち金持ちって、そんなに汚くて卑劣なわけ?償うの一言で、あの夜の屈辱を私が忘れられるとでも?ありえないから!一生忘れてなんかやらない!」「では、結婚という形で償うというのはどうでしょう?」慎也は彼女の行く手を阻むと、一通の書類を差し出した。「俺と結婚してください」奈津美は呆気に取られた。慎也の言う「償い」が、まさか結婚だと?「ふざけてるの?あなたたちみたいな金持ちにとって、結婚も離婚も役所に紙切れ一枚出すだけなことかもしれない。でも、私にとっては違うの。あなたのことなんて何も知らないのに、結婚なんてできるわけないでしょ?」「まずはこの書類を見ていただけませんか?」慎也の態度は真剣そのものだった。奈津美は言い争うのも面倒になり、彼の持っていた書類

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第16話

    「彼女があの晩の?」「はい、そうです。そして岡本様がずっとお探しになっていたあの女の子も、彼女だったんです」「そうか」資料を閉じると、男は静かにうなずいた。そして、重々しく口を開いた。「番組が終わったら、お前たちは先に帰れ」「ですが、岡本様――」ボディーガードにしてみれば、これほどの人物を一人になんてできなかった。ボディーガードはまだ何か言いたそうだったが、男に鋭く睨まれたら、黙ってうなずくしかなかった。自信に満ちた姿でインタビューをしている奈津美を見ていた男は、面白そうに口角を上げた。てっきりあの晩は、どこかのホステスかキャバ嬢と過ごしたのかと思っていたが、まさかキャスターだったとはな。男はごくりと喉を鳴らした。あの夜の、乱れた甘い時間を思い出す。彼女の低いあえぎ声……ずいぶん独り身でいたが、そろそろまともな恋愛をする頃合いかもしれない。それにしても、ずいぶん長くこの女を探し続けたものだ。もう、会っても良い頃だろう。奈津美がインタビューを終えた時にはもう夕方だった。彼女がステージを降りると、また隆が現れた。「奈津美、仕事終わったか?一緒にご飯でもどうかな?」そんな隆を、奈津美は心底嫌そうな目で見返す。「隆。さっき私が言ったこと、もう忘れの?」「奈津美……」「もう一度言うよ。二度とあなたの顔は見たくない。だから、とっとと消えて」奈津美が立ち去ろうとすると、隆が執拗に彼女の手を掴んだ。「俺が一度決めたことを、簡単に諦めないのは知ってるだろ?お前が許してくれるまで、俺はずっとこうして頼み続けるから」「前田グループの御曹司が、まさかこんなに幼稚な人だったなんてな。思いもしなかった」二人が睨み合っていた後ろから、落ち着いた低い声が聞こえた。隆は不満そうに振り返った。一体誰だ、人のことに首を突っ込んでくる奴は、と。やって来たのが岡本慎也(おかもと しんや)だと気づくと、隆は思わず眉間にしわを寄せた。「岡本社長、こんな所でお会いするとは……ですが、これは私たち夫婦の問題ですので、社長には関係ありません」「岡本社長?」奈津美は呆然と慎也を見つめる。なぜか、どきどきと心臓の鼓動が速くなっていた。彼のことはもちろん知っている。経済雑誌の表紙の常連で、深津市で最も有名な不動産王だった

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第15話

    そのことを思い出すと、奈津美の体は震えを抑えられなかった。ついに冷静でいられなくなった彼女は、立ち上がると、隆の頬を思い切りひっぱたいた。「よくもそんなこと言えるわね!隆、あなたがいなければ、私はあんな酷い目に遭わなかった!あなたを恨んでる。心の底から憎んでるのよ、わかる?」突然の一撃に、隆は完全に言葉を失った。彼は顔を上げたが、泣いている奈津美の姿が目に入り、なにも言えなかった。「奈津美……まさかお前は……あの時……」「そうよ!でも、あなたが望んだことでしょ?隆、あなたは自分の妻を他の男のベッドに送ってまで、ホステスの初めてを守りたかった。でも、その女はとっくの昔に初めてを捨ててたなんてね!笑えるわ、本当に」顔を上げた奈津美は目元の涙を拭い、冷たく言い放った。「優里さんに免じて話を聞いてあげてるだけだから。時間はあと3分。言いたいことがあるなら早くしてちょうだい。そしてこれが終わったら、二度と私の前に現れないで!」奈津美が言い終わるやいなや、隆は激しく彼女を抱きしめた。「違うんだ、こんなつもりじゃなかった!ちゃんと手配していたのに、なんでああなってしまったのか分からない!奈津美、本当にごめん。でも、俺は他の男に汚されたお前を汚いなんて思わない。これで、おあいこにしよう。だから、嫌なことは忘れてやり直さないか?もう絶対にお前を裏切ったりしないと約束するから!俺があの離婚届受理証明書を受け取った時、どれだけ辛かったかわかるか!千佳とのことを許せないなら、どうして平気だなんて言ったんだ?お前が嫌だと言ってくれさえすれば、俺はあの女と別れたのに!」「離して!隆、今更そんなことを言って、自分がどれだけ馬鹿なこと言ってるか分からないの?」奈津美は自分の耳を疑った。どうしてこの男は、こんなにも恥知らずなことが言えるのだろう?間違っていたのも、浮気したのも隆の方で、自分は彼のために離婚してあげたのに、結局は全部こっちのせいだというのか?「わかった、全部俺が悪かった。な?これでいいか?奈津美、もう二度と同じ過ちは犯さない。一生、他の女と関係を持たないと誓う。もし次があったら、その時は自分から命を断つから!」「もうやめて。あなたのそんな誓い、聞き飽きたから。本当にうんざりなの!」奈津美はありったけの力で隆を突き放した

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第14話

    今までの隆だったら、千佳がこんなに悲しそうに泣いていれば、とっくに許していたはずだ。しかし今の隆は、この女がただただ恐ろしく、そして吐き気がするほど気持ち悪いものにしか見えなかった。「誰か来てくれ!」隆が声を上げると、ドアの外からすぐにボディーガードが二人飛び込んできた。「社長、どうされましたか?」「今日のインタビューは中止だ。こいつをエリュシオンに送り返せ!芝居が好きらしいから、あそこで一生、男どもの相手でもさせておけ!」千佳には、もう昔の優雅さはなかった。涙でメイクは崩れ、その顔は見るも無残な状態だった。千佳は必死に抵抗していたが、その姿はただみっともないだけだった。「いやです!前田さん、結婚してくれるって言ったじゃないですか!約束を破るなんて許しません!一生守るって言ったくせに!」「なんか、みっともないね。エリュシオンの千佳っていえば、純粋無垢で有名だったのにね。それに、絶対に枕営業はしないって言われても、何人の男がその初めてを夢見てお金を貢いだか……でもまさか、そんな男たちが憧れてた『初めて』が最初っからなかったなんて」「初めてを誰にあげたか知らないけど、前田社長、結婚前に彼女の本性に気づいてよかったよね。でなきゃ大恥食らってたよ」「私が彼女だったら、恥ずかしくて今すぐにでも死にたくなるかも」……嘲笑が、潮のように千佳の耳へと流れ込んでくる。彼女はゆっくりと顔を上げ、周りを見回すと、最後は隆に視線を向けた。「本気ですか?私のこと好きだったんじゃないんですか?あれが私の初めてじゃなかったってだけで、私をエリュシオンに戻すなんて。あそこに戻ったら、もう前みたいには過ごせないんです!男たちが私をどう扱うか、分かっているくせに!あれだけ好きだって言ってたのに!3年も追いかけてきたのに!今になってこんなに冷たい仕打ちをするなんて!」隆は氷のように冷たい目で千佳を見つめた。「お前が先に俺を騙したんだろ!お前がいなければ、奈津美はあんな目に遭わなかった……俺が奈津美と離婚することもなかったんだ!お前みたいな女は、俺のそばにいる資格なんかない!」「はっ――」彼の答えに、千佳は呆れて笑うしかなかった。「全部私のせいにするつもりですか?最初に私に言い寄ってきたのはあなたですよね?奥さんがいるのに私を

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第13話

    ドンッという鈍い音が響く。奈津美が鏡に頭を叩きつけられたのだ。鏡には一瞬でひびが入り、奈津美の額からも血がにじみ出る。それまで奈津美の心の底に押し込めていた怒りが、千佳のこの行動で一気に燃え上がった。奈津美は振り向くと、憎しみを込めて千佳に飛びかかった。そして、彼女の首を両手で強く締め上げ、壁際に押しやる。「さっき言ったこと、聞こえてなかった?今のあなたの言葉、全部録音したから。これ以上、私にちょっかい出すなら、この録音を隆に送るからね?前田夫人になりたい?寝言は寝てから言え!」「録音?ふざけないで!それをよこしなさい!この最低女!」千佳に頭を揺さぶられて目眩がする。千佳が手を振り上げて叩こうとしたが、その手を奈津美は素早く掴んだ。「まだやる気?」奈津美は一切ためらわずに、右足を振り上げ、千佳の胸元に膝を叩き込む。「うっ!」千佳は顔を真っ青にしてその場に崩れ落ちた。額からは冷や汗が絶え間なく流れている。「最低、なんてことするの……」「あなたみたいな女に、上品ぶってどうするの?いい?これはあなたが自分で招いたこと。誰のせいでもないんだから」千佳のみじめな姿を見下ろし、奈津美は気持ちを落ち着けた。髪と服を整えて、部屋を出ようとする。次の瞬間、バンッと大きな音を立てて化粧室のドアが開けられた。隆が慌てた様子で入ってきた。奈津美を見つけると、すぐに駆け寄り、その手を掴んだ。「奈津美、本当にここにいたのか!今、時間ある?少し話せないか?」「時間なんてない」奈津美は無表情でその手を振り払った。そして、床にうずくまる千佳を指さして言った。「隆、あなたの婚約者をちゃんと躾けてくれるかしら。もう二度と私に関わらせないようにして。さもないと、次は何するか分かんないよ?」「前田さん!」ドアの前には人だかりができていた。千佳はもう、恥ずかしくて顔も上げられなかった。千佳は奈津美を指さして叫んだ。「この人に殴られました!警察を呼んでください!こんな女、刑務所に入れるべきです!助けてください!」隆は、苦しげな表情の千佳と奈津美を交互に見た。「奈津美、本当にお前が――」「本当に、懲りない人ね」奈津美は、これ以上事を大きくするつもりはなかったが、千佳はあまりにも反省していない。もう容赦はしない。奈津美は

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第3話

    その夜、隆は帰ってこなかった。翌朝、奈津美が徹夜で書いた記事は、深津市で最大の芸能週刊誌に載った。一番大きい記事で、写真だけでもページの半分以上を占めていた。きっと隆も見るだろうし、前田家の人たちの目にも入るはず。しかし、そんなことなどもうどうでも良かった奈津美は、朝食を終えて、職場に引き継ぎをしに行こうと鞄を手に取った時、前田家から電話がかかってきた。「奈津美様、すぐに月見ヶ丘へ来られますか?記事を見た奥様がひどくお怒りになって、隆様にお仕置きをなさると……」奈津美は仕方なくも、職場ではなく屋敷へと車を向かわせた。奈津美が前田家に駆けつけると、隆が顔を抑えて床に座

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第2話

    奈津美に気づいた隆はさっと眉をひそめ、千佳の腰から素早く手を離した。彼の友人たちは慌てふためき、口々に言い訳を始める。「奥さん!誤解しないでくださいね。今日は俺たちだけで集まってたところに、無理やり隆を呼んだだけなんで!」「そ、そうなんですよ、奥さん!この子は俺が指名した子だから、隆には一切関係ありませんから!」そう言った男が立ち上がって千佳を自分の方へ引き寄せようとしたが、千佳は微動だにしなかった。それどころか、千佳は奈津美に視線を移した。「先ほどのことは、奥様もご覧になられていたんでしょう?私は旦那さんに興味はありませんから。彼をしっかり見て、二度と私にちょっかいをかけ

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第5話

    隆は眉間にしわを寄せ、「俺が彼女を家に連れてきたこと、知ってたのか?」と尋ねた。「ええ」奈津美は頷いた。その声は自分でも驚くほど落ち着いていた。「見てたから」「怒らないのか?」今までだったら、きっと怒り狂って家中の物を壊していただろう。もしかしたら、千佳を追い出すように迫って、離婚を切り出していたかもしれない。でも今日の奈津美はとても冷静だった。「怒ってないよ。あなたが良ければそれでいいもの」奈津美は顔を上げて隆を見つめる。「ねえ、隆。3年前、私とよりを戻したこと後悔してるんじゃない?だって、菅原さんのことが大好きなの、バレバレだもん。それに、二人はとってもお似合いだしね」

  • 浮気夫を捨てたら、超大物社長に溺愛された   第4話

    「いいから、サインしなさい。そうしたら、菅原さんを受け入れてあげるから」すると、隆はためらうことなくすぐにサインした。執事は困ったような顔で優里に尋ねる。「奥様……やはり竹刀で?」目の前の離婚協議書を見て、優里は怒り狂った。「この子が自分から罰を受けるって言ってるんだから、やらないわけにはいかないでしょ?打ちなさい!思いっきり!」執事は仕方なく、竹刀を振り下ろす。「1回、2回、3回……」リビングには、竹刀が風を切る音と、肉を打つ生々しい音だけが響いていた。50回を迎えたところで、隆はとうとう耐えきれず、血を吐き出した。「やめて!もうやめてあげてください!私なんか

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status