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第7話

Author: 鳳小安
会場はきらびやかなに装飾され、盛大なオークション場となっている。

すると、ステージの真ん中にいる千佳が目に入った。

彼女は淡藤色ドレスをまとい、静かに座っている。

ステージの下にいる富豪たちは、皆目の色が変わっていた。

「1億!」

「1億6千万!俺は1億6千万出すぞ!」

「2億だ!」

「俺は6億!」

次々と上がる入札の声に、主催者は笑いが止まらないようだった。

奈津美は、隣で殺気を放つ男に視線を向けた。話しかけようとした瞬間、隆が入札した。

「20億!」

「20億だと?まさか前田社長が20億も出すと」

「あの女のことが好きだって噂は本当だったんだな」

「隣の女は誰だ?もしかして嫁さんか?なんで嫁さんなんか連れてきてんだ?」

会場は騒然としたが、奈津美の心は凍りついていた。

もう一度顔を上げると、ステージの上の千佳が微笑んでいるのが見えた。

「申し訳ありません。前田さん、私、既婚者の方とは一緒になれないんです」

隆は激しく感情を揺さぶられていた。彼が自分の手を握っている力が、どんどん強くなっていくのを感じる。骨まで砕かれそうなくらいだ。

「お前に断る権利なんかない。もし、まだ落札しようってやつがいたなら、そいつは俺に逆らうってことでいいな、ん?」

その言葉を聞くや否や、先ほどまで盛り上がっていた富豪たちは一瞬で黙り込んだ。深津市で最も権力のある男、前田グループの社長に逆らえる者なんていないのだから。

「前田さん、あなたの資金が潤沢だってことは理解しています。でも私は、もう契約書にサインしてしまったんです。ここで……処女を売らなければ、そのまま殺されるという……」

千佳が言い終わるやいなや、会場は大騒ぎになった。

誰かがヤジを飛ばし始める。「前田社長!いくら金があるからってルールを破るのはなしじゃないですか?」

「俺たちだって大金を払って来てるんですよ。手ぶらで帰す気ですか?」

「彼女がダメっていうなら、他の誰かを代わりに出してくださいよ!」

隆の隣に立っていた奈津美は、次に何が起こるのか、だいたい予想がついていた。

案の定、隆は自分を前に突き出した。

「じゃあ、こいつを代わりに!処女じゃないけど、俺の妻も悪くないだろ?」

ガンッ

まるで誰かに殴られたみたいに、奈津美の頭は一瞬で真っ白になった。

今、自分の耳に入ってきた言葉が信じられなかった。

全身の血が凍りついていくようで、目の前がどんどん暗くなっていく。

奈津美は隆を見つめ、震える声で言った。「なんて言ったの?隆、もう一度言って」

隆は奈津美を見ていたけど、その瞳には温度など微塵もなかった。

「奈津美、俺を責めるな。全部お前が招いたことだろ?お前が彼女を追い詰めなければ、こんなことにだってならなかったんだからな。安心しろ、今回だけだ。たとえ、お前が他の男と寝ようとも、俺は汚いなんて思わないから」

「前田社長の奥さんだってよ。面白そうだな」

「200万出そう!」

「1000万!」

「2000万!」

彼らは狂ったように叫び、あっという間に値段は1億円まで跳ね上がった。

奈津美は隆が正気じゃないと思い、逃げ出そうとしたが、エリュシオンのボディーガードに止められてしまった。

「前田さん。1億円で、今夜あなたと過ごす権利が落札されました。さあ、どうぞ?」

「嫌に決まってるでしょ!隆にそんな権利なんてない!」

しかし、抵抗する間もなく、腕をがっちり掴まれてしまった。

「最上階のスイートルームに連れていけ。見張りを付けて、逃がすなよ」

「いや!放して!隆、もうすぐ離婚が成立するの。私はもうあなたの妻じゃなくなる。あなたにこんな権利なんてない!隆!

助けて!隆、いや!私が間違ってた!助けて……隆……」

奈津美は担ぎ上げられるようにしてエレベーターに乗せられた。一方、隆はステージに駆け上がり、千佳を強く抱きしめていた。

奈津美がどんなに叫んでも、どんなに助けを求めても、隆が奈津美の方を向くことは、一度もなかった。

エレベーターのドアが閉まった瞬間、奈津美はまるで底なしの地獄に落ちていくように感じた。

今夜はもう、逃げられない……

スイートルームに入った瞬間、相手の顔もよく見えないまま、奈津美はベッドに押し倒された。

抵抗する間もなく、酒の匂いがする男のキスが、嵐のように襲いかかってきた。

「放して――助けて――」

服が引き裂かれた瞬間、奈津美は絶望した。

涙が静かに頬を伝う。彼女は真っ暗な天井を見つめながら、次第に抵抗するのをやめた。

次に目を覚ますと、もう次の日の朝になっていた。

奈津美は服を着ておらず、ベッドにうつ伏せになっていたが、部屋には誰もいなかった。

しかし、散らかった部屋の様子が、昨夜の屈辱は現実だということを突きつけてくる。

奈津美は裸のままベッドを降り、無表情でバスルームに入ってシャワーを浴びた。

2時間もシャワーを浴び続けてから、ようやくバスルームから出る。

ベッドの足元にあるソファに、質の良さそうなスーツが置いてあった。おそらく、あの男が置いていったのだろう。

奈津美はそれを着ると、エリュシオンの裏口から外に出た。

タクシーに乗ると、ようやく優里からメッセージが届いた。

【離婚届はもう受理されたよ。受理証明書のほうも、今日中には届くようにしたから。深津テレビのことも話を通してあるから、いつでも出社してきなさい。奈津美、あなたの未来が輝かしいものであるように願っているわ】

「お客さん、どちらまで?」

「街の南の方へ」

車が走り出した瞬間、奈津美のスマホが再び鳴った。

隆からだった。

何度も何度もかかってきたが、奈津美は出なかった。

彼女は無表情でスマホの電源を落とす。それからSIMカードを取り出し、窓の外に捨てた。

隆、もうあなたとは一切関係はないから。

二度と、あなたの顔なんて見たくない。
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